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【SS】ふりかえるとよみがえる/#毎週ショートショートnote

私の後を、彼女は本当についてきているのだろうか。

ある時、黄泉の国に妻は連れ去られた。

私は狂ったように泣き、憔悴し、妻が戻ってくるのであれば、何でもすると、古今東西全ての神に祈りを捧げた。

気がつくと私は見渡す限りの闇の中にいて、どこからともなく声が響いた。

「お前が決して振り返らずに、真っ直ぐ帰れたら、よみがえるだろう。」

神話か何かで聞いたことがある。
本当にそんな奇跡があるというのか。

しかし帰ると言ってもどこに?
ああ、遠くに針の先ほどの光が見える。
あの光だけを見ていけばいい。
容易いことだ。

そう思って歩き出す。

どれくらい経っただろう。
確かに後ろから何かが付いてくる気配はする。
本当に妻なのだろうか。

確かめたい。
振り返りたい。

ああ、無理だ、耐えきれない。

振り返った僕の目に、虚ろな目をした妻が映る。
彼女の細い首に、僕の手が食い込んでいる。

ああ、そうだ、浮気をしていたことを知って僕は彼女を…。

よみがえったのは罪だった。


(408字)


今回も参加させていただきました。
ありがとうございます。


ちょっと夏向き、ホラー仕立てになったでしょうか。

ご覧下さり、ありがとうございました。

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