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夜間小児救急が抱える問題について。

北海道もすっかり緑が豊かになってきましたよ。
わが子も張り切って飛行犬しています。

最近ご縁があって、ママ向けの子供の救急について講義をすることになりました。まあ、救急って言っても広すぎるし、単発ならばなおさらテーマ選択も難しい。せっかくだからためになるものをと思い、参考に文献をパラパラ読んでいましたが・・・

改めて考えてみるとすごく難しい問題だなと思う「夜間救急」のジレンマ。

お母さんはお子さんを思う必死な気持ち、不安、仕事の関係で日中に病院に行けないって理由から夜間救急にかかる人がダントツに多い。
今職場にママが多くいのですが、よく耳に入ってくる言葉があって
「わざわざ夜に行ったのに何もしてくれなかった」
「抗生剤もだしてくれなかった」がすごく多い。
お母さんの気持ちもわかるし、それには理由があるんだけどうまく伝わっていないから、こっちの説明も悪いのはわかっているけど医療側が悪く言われることに毎度心が痛む(笑)

そもそも夜間救急は緊急性がある症例に備えた準備しかしていないので、人員やできる検査も限られてしまう。
例えば発熱を例に挙げると、

診断がつかない場合もしくは自然治癒力で問題なく治る場合はむやみに抗生剤や解熱剤を使うべきではないし(理由根拠の説明は今回は省略)
有効な治療薬を選択するためには正確な検査と診断が必要だけど、夜間ではそれができる専門医や検査の体制が整っていない。発熱に潜む重症化の種を見つける程度しかできないのだ。なので、深部感染や疾患を思わせる所見があればちゃんと入院になるし、帰宅例では安静にしてれば治るよーってなるか、発熱の原因を探したいからこの辺に気を付けてみててね~ってなる。

「帰されたのに結局肺炎で入院になった」って昨日グチを聞いたけど、本当になんかジレンマ!と思った(笑)

医療者側の問題としては、お母さんの不安な気持ちを汲んで必要な説明ができればいいって思う。
けど、そんなレベルじゃなく人数がくるんだよね。
・昼間用事があっていけなかったから
・時間外のほうが病院がすいているから
そういう理由での受診もあるけど、それは救急ではありません。

夜間救急が軽症患者さんであふれてしまうことで、本当に重症で救急医療が必要な患者さんがたらい回しになってしまうということも起こりうる。
自分の不安の解消のための受診が間接的に人の命を奪っているかもしれないという事実を伝えたいけど、それでもお母さんにとっては本当にわが子の命の危険を感じているのかもしれないからデリケートな問題だよね。

なので、お母さんが自信を持って朝まで待てるような判断基準のポイントを伝えたり、昼間にしっかりと専門治療を受けられる世の中にしていきたいし、それが広がっていけばもちろん自分達医療者側の負担も減ってしっかりと必要な医療に打ち込めるようになる。

まあ、そんな理由から、根本的になるべく病院に行かなくてもいいように病院の前でアプローチしていくのが一番たくさんの人が助かる方法かなって思ったわけですよ。
医療もビジネス色を強めてきているし、私は病院にいれば安心な時代はもう終わったんじゃないかと思っている。
ちゃんと向上心があるスタッフが多くて、その中で適切な人員配置が可能な病院を探していかないと危ない世の中になってきた気がする。

とりあえず、
「お母さんが自信をもって経過観察をして朝を待ち、安心して適切な専門治療を受けることができる」
を目標に講義内容を考えたいと思います(笑)