【短編】桜流し
桜がきれいな季節。
嫌いな天気は雨。
私の大好きな花を流してしまうから。
風によって舞う花はどこか儚げで、趣があるけれど
雨に打たれて散った花弁は酷さまで感じさせる。
私の嫌いな思い出もそんな雨の降る日だった。
私の下への一本の電話。
傘もささずに飛び出した。
音のない部屋で横になるあなた。
帰り道は一人。
下を向いてずぶぬれになる私の眼には雨に打たれて散った桜の花びらが流れていく景色だけが映る。
それからの毎日は色を失ったみたいで
桜すら白黒の世界に吸収されてしまった。
私の世界を色付けてくれるものは見つかるのか、見つけるものなのか
その答えを模索しているうちは
まだまだ立ち直れていないだろう。
私の嫌いな花は桜。
嫌いな天気は雨。
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