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【今でしょ!note#73】 「地域経済循環分析」から地域を学ぶ (2/3)

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

昨日からお送りしている「地域経済循環分析」から地域を学ぶシリーズの中編です。

前回は、各地域の経済統計をまとめているRESAS(リーサス、地域経済分析システム)を利用することで確認できる「地域経済循環分析」の基本的な考え方についてご紹介しました。

2020年に環境省が公表しているレポートに基づいて整理してますので、ご覧になっていない方は、ぜひこちらからご確認ください!

今回は、その続編として、地域経済がうまく循環している状態と、うまく循環できていない状態について、同レポート内容をピックアップしてご紹介していきます。


地域経済がうまく循環している状態

下図のとおり循環構造の要素は、大きく「①生産・販売」、「②分配」、「③支出」の3つです。

域内循環あるいは域外との取引活性化により、生産による所得をぐるぐる回す

地域でこれらが上手く循環している状態とは、まずは地元で一定の稼ぐ力を持ったコア産業があり、「①生産・販売」活動そのものが一定の所得を生み出せることが必要です。
ある産業が地域でまだ育ちきっていない段階では、「①生産・販売」プロセスで十分な所得を生み出すことができませんから、「③支出」のところで域外から材料を購入して自地域で生産活動をしたり、設備投資に充てることで、「①生産・販売」で一定の所得を生み出せるようになるまで育てるプロセスが必要になります。

「①生産・販売」→「②分配」のプロセスでは、自分たちの生産活動で生み出した所得が、地域外に流出することなく、地域住民の所得に還元されることが大切です。
ここでさらに外部からの財政移転や、不動産や金融資産などの財産からの所得が上乗せされると、地域住民の所得が高い状態になります。

そして「②分配」→「③支出」のプロセスでは、所得が高い住民が、域内のサービスや物を購入することで域内支出が増えるほか、地域外の人が観光でやってきて地元のサービスに対してお金を使ってくれたり、サービスを他地域に輸出することで外貨を稼ぐことができるようになることで、「③支出」が大きくなります。

これが、地域経済の好循環パターンです。

地域経済がうまく循環していない状態

逆にうまく循環していない状態とは、この3要素のサイクルの中で、どこかのバランスが悪くなってしまっている状態です。
いくつか具体的な例が紹介されているので、見ていきます。

企業誘致による先端企業を中心とした製造業特化型地域パターン

この例は、地域に強力な製造業や、石油コンビナート、発電事業、鉄鋼業などの装置産業があるにも関わらず、地域住民の所得が低いケースです。

生産で生み出した所得の大部分が、地域外の本社に流出

企業を誘致したことで大きな産業が地域内に存在するため、生産や販売活動が生み出す所得自体は大きいのですが、地域内企業との連携や取引が少ないため、生産で生み出した所得の大部分が都市圏の本社に流出しています。

地域の自治体にとっても、工場設置にかかる固定資産税は財政として入ってきますが、本社が地域外となるため、法人税などの歳入増にはつながらず、地域財政への貢献も低いです。

少し前から、大企業が地方に拠点を移すことがニュースになりますが、本社自体も一緒に地方側に移っていかないと、移転に伴う地元への貢献度は、従業員流入分の消費増といった限定的なものになるので、冷静に見る必要があります。

政府消費や公共投資に依存しているパターン

次は、補助金や交付金などの政府消費や地域外からの公共投資に依存している地域の例です。

補助金が入ってくるものの、地域で消費できる場所がなく、地域外に所得流出

このケースでは、地域の稼ぐ力が小さいため、生産活動のみで住民への十分な所得分配ができません。そのため、国や都道府県からの補助金や交付金などでそれを補っているのですが、結局自地域で消費・投資できるポイントが少なく、外から入ってきた所得の大部分が地域外に再度流出し、自地域の生産力向上につながっていません。

このパターンに陥っている地域は多いのではないでしょうか。

観光収入が地域の経済発展・活性化に寄与していないパターン

最後に、沖縄のような大きな観光産業が存在するにも関わらず、地域住民の所得は低い地域の例です。

観光消費で大きな所得流入があるものの、地域外サービスを購入しているのでそのまま流出する

このような地域では、観光産業による地域外からの大きな所得流入があります。しかし、宿泊施設は、外資チェーンのホテル、お土産は地域外の材料を使って、地域外で生産されたものを販売していたりするので、せっかく流入してきた所得が、そのまま地域外に流出してしまっています。

地元企業の稼ぐ力が弱いため、地域住民に十分に所得が分配されることもできず、結果的に所得水準が低い地域となってしまいます。

このような地域ではやはり、自地域にある資源を活用して生産から販売までを行う垂直統合型の事業や、地元資本での宿泊施設事業を発展させることで、観光による消費の対象を自地域で生み出したサービスに転換させることで、稼ぐ力を大きくしていくことが求められます。

自分の住んでいる地域のパターンは?

RESASの「地域経済循環分析」を使って、自分の住んでいる地域を検索してみると、どのパターンに該当しているか、ざっくり概況を知ることができます。

私の出身地である福井県を検索してみました。


福井県の2018年の地域経済循環図

まず、生産と分配の割合を見てみると、34,270 / 35,793 = 95.7%で、住民の所得の一部を地域外からの流入に依存している地域といえます。
「分配」の「地域外からの流入」とある部分の1,578億円がこちらに該当します。

「その他所得」は、財産所得、企業所得、交付税、社会保障給付、補助金等を指す

下図の「支出」は、地域内の住民・企業等に分配された所得がどのように使われたかを示しています。

住民の消費を示しているのが「民間消費額」、企業の投資額を示しているのが「民間投資額」、政府支出や地域内産業の移輸出入収支額を示しているのが「その他支出」です。

民間消費は地域外に流出、民間投資額とその他支出は流入が多い

民間消費額の空白の四角部分は、「地域内の住民が支出した金額より、地域内に支出された金額が少ない」ということを意味するため、支出が地域外に流出していることを示しています。

反対に、民間投資額およびその他支出の赤色部分は、「地域内の企業等が支出した金額より、地域内に支出された金額が多い」ということを意味するため、支出が地域外から流入していることを表しています。

民間消費額のほうが金額が大きいため、支出全体としては、流出超過ということになります。

このように、自分の住んでいる地域の経済循環概観は、かなり分かりやすく把握できるようになっているため、皆さんも一度検索されてみても良いかもしれません。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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