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SFプロトタイピングのリバースエンジニアリング: wired vol.37 Brave New World

SFがプロトタイプする未来。ディストピア小説の古典、オルダス・ハクスリー「すばらしき新世界」から取られたタイトルを冠して、いくつものSFプロトタイピングが実演された。クリエーションされたものを足元の実装に転換していくためにはリバースエンジニアリング、バックキャスティングして、手の届く未来まで内挿する必要があるはずだ。提示された視点を抽出してみたい。

自然(非人間)とのディスタンシング

自然を遠ざける:病気の過度な抑え込み
ロックダウンの常態化、徹底した衛生管理(食、自然、)、移動手段の極端な制限

人間が遠ざかる-1:ウイルスをはじめとする病気全般の克服
クイックなワクチン提供体制、マイクロマシン

人間が遠ざかる-2:新たな機能を獲得した新人類の出現
遺伝子編集、意図しない副作用、新人類間でのみ交配可能

ヴァーチャルに溶け込む人類

リアルとヴァーチャルの溶解
リアルを捨ててヴァーチャルに映る、ヴァーチャルが主でリアルが新鮮になる、リアル・ヴァーチャルが等価、リアルで生体機能を維持できるポッド、五感のエンベッド

結果として:対人関係数の飛躍的拡大
ヴァーチャル上での人間間の接続とそれを感知できる新世代(コネクトーム)

新たな価値基準

新たな国家単位の形成、社会の価値軸の変化
監視社会・スコア化、信用ルールの共有単位、差別、コミュニティへの信頼・参与の貨幣化、免疫力の価値化、環境・他人への迷惑の価値化、マイノリティを解決する社会システムの淘汰が連鎖する、ベーシックインカム、最低スコアがルールを決める

経済的なパワーバランスの変化
日本の後進国化、他国の情報が入らない情報鎖国、

 と、書き出してはみたものの、全体を俯瞰してもよく言われているような視点にしかならず、まとめることにはあまり意味がなさそう。まとめるのではなく、個々に描かれたナラティブを丁寧に、ディテールを大事にして今に引き寄せてくることが大事なんだろうと感じました。
 思い返せば、自分が仕事で取り扱っている顧客のナラティブでも同じことが起こる。安易にまとめあげようとすると、とたんに陳腐なものになる。(めちゃくちゃ面倒だけど)個々のディテールを保ったままうまく構造化しないと、大事なインサイトはその過程でぽろぽろとこぼれ落ちてしまう。

 サイファイプロトタイピング研究所の今後の活動には注目していきたいです。プロトタイピングで飛ばしたものを、既存の顧客、ブランドとの連続性とどう接続していくのか、そこのバックキャストをうまくやるのは作家の能力とはまた違う力が必要だと思う。企業に任せても、慣れてない人にはどう取り扱っていいのかわからないだろうし、たぶん簡単にはできないはずだ。手法として魅力的なだけに、課題も大きい気がする。どんなモノが、サービスが出てくるか楽しみにしていたいです。


表題写真。未来をつくる柵の向こうのブロックに手をかけるには鍵が必要。

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