現代サッカーの縦に早い理由

 馬目裕也です。
 今回は「現代サッカーの縦に早い理由」というテーマで書いていきたいと思います。

1.現代サッカーの特徴とは

 現代サッカーとは何でしょうか。ブンデスリーガやプレミアリーグなどヨーロッパのトップリーグを指すのか、日本のチームを指すのか、はたまた違う国を指すのかで変わってくると思います。どの国のサッカーであれ現代には変わりありません。

 ですが個人的にいえることは、現代サッカー=早い ということです。私はどの国のサッカーも見ているというわけではないですが、間違いなく数年前よりもあらゆる場面において高速化されていると感じます。

 あらゆる場面とは、
・ビルドアップから中盤、ゴール前へ前進する早さ、パスの少なさ
・ボールを奪った後のカウンターの早さ
・ボールを失った後の守備の早さ
・プレッシングに行くときのアプローチの早さ

などがあると思っています。

2.なぜ高速化されていったのか

 なぜ高速化されていったかを考えていきたいと思います。
 個人的には以下の要因があると思っています。

・ポゼッションでゆっくり攻めると、相手がいる状態でゴール前の局面を迎えるためゴールになりにくい
・中盤でのボールロストは一番失点に直結する
・引いて守るだけでは守りきれないため、ボールを奪いにくるのでゆっくりとつないでいられない

 ポゼッションでゆっくり攻めると、相手がいる状態でゴール前の局面を迎えるためゴールになりにくい
 ボールを保持しながら、意図的に相手を外してスペースを使うことで、着実に前進することができますし、ゲームをコントロールするためにも有効です。ただひたすら前に、縦に早いばかりだと、ボールを失う可能性が高くなり自分達の攻撃の時間が減りますし、相手も対応しやすくなると思います。
 ですが、ボールを保持する分相手も守備を構えることができ、そこから前進されたとしても、全体が下がることができます。なのでボール保持しながら攻撃していくと相手を押し込むことができますが、押し込むということはほとんどがゴール前に相手がいる状況でフィニッシュの局面を迎えることになるので点にはつながりにくいです。
 縦に早い攻撃であれば、中盤を飛ばして前線に入れたり、一気に背後に通すことができるかもしれません。そうすれば相手の中盤の選手が戻りきれないため、、ゴール前に相手がいない状況を作れます。

 中盤でのボールロストは一番失点に直結する
 これはイメージしやすいのではないかと思いますが、ビルドアップでDFラインや中盤につけた時に奪われると一気にカウンターを打たれてしまいます。敵陣の深くで奪われたといてもゴールまでの距離がありますが、中盤でとられると、1、2本のパスでカウンターにつながってしまいます。
 となると上記しましたが、相手が戻りきれないため、ゴール前に相手が少ない状況を迎えることができます。これが一番失点につながると個人的には思っています。

 引いて守るだけでは守りきれないため、ボールを奪いにくるのでゆっくりとつないでいられない
 これも現代サッカーの特徴といってもいいかもしれませんが、引いて守るだけではもう守りきれないです。なぜならCBやボランチからいくらでも効果的、決定的なパスが出てきてしまうからです。
 昔であれば自陣深くでブロックを引くことで守りきれたかもしれません。ですが今はそうはいかないので、多くのチームがボールを奪いにいく守備を持っています。ボールを奪いに行くということは、いつ、どこから、誰が、どのようにでるかを整理しているということです。
 ですので奪いにくるため、DFラインでつないでいるだけだと、奪われる可能性が高くなります。なので縦に入れることは(中盤で受けたり、前線の選手に競らせたり、背後を狙うこと)逆説的に考えると、攻撃のためでなく、プレスを回避するためにやっているといえるかもしれません。

3.攻撃における「早さ」について考えられること

 現代サッカーの早さの中でも、今回は攻撃について考えていきたいと思います。  個人的に思うことは、確かに「DFラインの背後」への狙いはあるものの、「縦(背後へ)に早くするため」に縦に早くしているのではなく選択肢を前(縦、ゴール方向)にするためになるべく後ろに人数をかけずに前に人を集めているということです。なのでDFラインで数的優位を作ることは必ずしも必要というわけではないと思っています。これは以前に「ビルドアップで重要なことは数的優位を作ることではない」という記事に書いた内容と同じことになります。


 ですが数的同数であれば、CBは相手に対しズレた立ち位置を取らないといけません。縦パスのコースがなくなると、プレスをはめやすくなるからです。

 ズレた立ち位置をとるためには、CBは基本的に幅をとらないといけません。幅をとった方がパスの角度も増えて選択肢も多くなります。ですが幅を取るということは、選手間の距離が開くため、パスをつなぎにくくなりますし、奪われた際に選手間のスペースを使われてしまいます。
 あとはGKを含めてビルドアップもできます。そうすれば前に選手は残せるので数的優位になりやすいですが、今度はゴール前を開けることになります。ですのでメリットもあればリスクもあります。必ずしも数的同数がいいというわけではないです。

 現代サッカーを象徴する早さというのは、選択肢を前(縦)にすることによって縦への早さという現象(結果)につながっていると思います。
 そしてDFラインで数的優位を作らないかわりに、前に人数を残せるため、中盤での数的優位を作ることができます。そうすればDFの背後やFWを競らせるような縦のボールに頼らなくても、中盤の空いたスペースを使うこともできます。そうすれば相手に奪われる可能性も下がるでしょう。
 逆に「縦に早くない」ゆったりとしているのはポゼッションです。要するにDFラインで数的優位を作った方が、1枚空くことで近くの選択肢が生まれるからつなぐことができるため、結果ポゼッションしているといえるようになると思います。確かにこれであれば縦に行かなくてもいい分、攻撃の時間は増えるしゲームコントロールすることはできます

 ですので何を良しとするかは、結局監督の好みになってきます。
 「縦に早い」と簡単にいわれていますが、縦に早いのはただDFラインの背後を狙っているだけなのでしょうか。狙いや意識だけの問題ではなく、結果的に縦に早くなるような構造、配置になっていることにも目を向けてみてもいいのではないかと思っています。

まとめ

・「縦に早い」とは簡単にいわれるが、DFラインの背後を狙っていることに加えて、前(縦)への選択肢を作るための構造になっている
・DFラインで数的優位を作ることで、1枚空き近くの選択肢ができるからポゼッションにつながる。攻撃の時間を長くしゲームコントロールするには適している。
・DFラインで数的同数でも相手からズレた立ち位置を取れれば前進はできる。そうすれば前に人数がかけられる。
・前に人数をかけられれば、中盤で数的優位を作れ、そのため前がなくても手前(中盤)で受けることができる。


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