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クラウドファンディングで日本最北端の凱旋LIVEーあの時、東京へ行かせてくれた父へ伝えたい音楽【奇跡だらけの稚内編②】

元・プロギタリスト、現・音楽スクール『オトノミチシルベ』代表の海老澤です。
去る9月22日。『オトノミチシルベ』ドラム講師・Tatsuya(石川達也)による、故郷・宗谷岬での凱旋LIVEが行われました。このLIVEはクラウドファンディングによって開催され、本記事は支援してくださった皆さまへの御礼の記事になります。
クラウドファンディングのはじまりから、当日のLIVEの様子まで。本当に、奇跡みたいに幸せなプロジェクトでした。このような幸せな場を、つくってくださった皆さまに向けて。その熱量と空気感を、少しでもお伝えできればと思っています!


夢のはじまり

今回のプロジェクトは、奇跡的に宗谷岬の漁師さんへのオンラインレッスンが決まったことを、facebookに投稿したことがきっかけです。(前編参照)

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「え、それなら里帰りついでに撮影とか手伝ってよ!」と頼んだところ快諾してくれたのですが、少し間を置いて、Tatsuyaが切り出しました。

「実は……僕にもずっと実現したかった夢があるんです。」

それが、今回の凱旋LIVEの話でした。

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Tasuya(Dram):中学生の時に吹奏楽部に入部しドラムと出会いバンドを始め、高校卒業後に音楽専門学校へ入学するため上京。在学中からオーディションを勝抜き、卒業後は当時所属していたバンド「QUORUM」で全国CDデビュー。2016年には世界的アンプメーカーのMarshall社が主催するイベント「Marshall GALA」の第1回目にNATALユーザーとして参加。同年さいたまスーパーアリーナで開かれた日本最大のメタルフェス「LOUD PARK」のO.Aを務める。
―過去共演者(敬称略)―
王様、Marty Friedman(ex:Megadeth)、Syu(GALNERYUS)、聖飢魔II・ルーク篁 など

Tasuyaは『オトノミチシルベ』ドラム講師を務めるプロミュージシャンでもあり、mixiで知り合った僕の古くからの友人でもあります。

夢を育んでくれた地元のバンドマンの先輩方や、何よりも複雑な想いを抱えながらも上京への背中を押してくれた父親に向けて。今の自分を作り上げてくれた方々への御礼として、自身がミュージシャンとして成長した姿を、LIVE演奏を通して伝えたいとずっと思っていたそうです。

Tatsuyaはこの頃、矢沢永吉さんのニューアルバム『魅せてくれ』の一曲で、PV出演という大きな仕事を成し遂げました。そこにやってきた、今回の宗谷岬行きの話。凱旋里帰りをするにあたり、またと無い(無かったらまずい)奇跡のタイミングでした。

Tatsuyaは確かなドラム演奏技術に加えて本当に誠実な人柄のいい奴で、どんな年代の生徒さんからも好かれるような講師、ミュージシャンです。

僕自身も今のTatsuyaを作り上げてくれた皆さんへ、東京に出て一回りもふた回りも大きくなったTatsuyaを見てもらいたいし、10年近くも助けられている御礼がしたい。僕もギタリストとしてLIVEに参戦しながら、全面的に協力することにしました。

仲間探しの旅

LIVEは決まった。次は仲間探しです。ギターは俺がやるとして、ボーカルとベースをどうするか……。Tatsuyaの昔のバンドメンバーにも声をかけてみましたが、当時のボーカルは現在は立派に寺の住職となっており、お盆シーズンは繁忙期でどうしても難しいと断られました。

これはもう、東京から誰かに来てもらうしかないです。むしろその方が東京でのTatsuyaの活躍を、ご家族にも仲間を通して感じていただけるのでは?と。
ただし渡航費もギャラも出せるほどの余裕はない……9月の三連休に、稚内まで行って一緒にLIVEしてくれる人なんて、見つかるんだろうか。

RPGの如く、途方もない、仲間集めへの長い長い旅が始まります。

【仲間1人目】TAKUROCK(Vocal)

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2分でフィックス。
いや、聞けよ、説明とか!!!!!!!

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TAKUROCK(vocal):高校からオリジナルソングでのバンド活動をはじめる。22歳でボーカル&ギターに転向。幾多のバンド活動の後、バンド編成でのソロ活動を開始!『オトノミチシルベ』音楽講師の他、CDの全国発売、FM、TV、雑誌などのメディア出演、そして、ワンマンLive、多くのフェスにも出演。
―過去共演者―
森山良子   GO!GO!7188 ET-KING 加藤ミリヤ 清水翔太 GACKT 快進の一撃 Ra:IN 山本恭二 EASY WALKERS AKIMA&NEOS Mt.デリシャス 他

絶対に失敗出来ない一夜限りの里帰りLIVEを盛り上げられる人...そう考えた時に、オトノミチシルベが誇るライブ番長である赤いスーツを纏った男が真っ先に頭に浮かびました。フロントマンとしての確かな実力といい意味での胡散臭さを兼ねそなえ、今まで数多くのLIVEを熱狂の渦に巻き込んできたTAKUROCKなら、安心して背中を預けられる。こんなに心強い味方は他にいません!

【仲間2人目】稲葉 浩太(Bass)

みなさんは覚えているだろうか……前編で、僕の遠方オンラインレッスンのモニター募集のツイートに対し、宗谷岬行きを予言したあの男のことを……

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Mona、こと1回も話したことない高校軽音部の後輩、稲葉である。稲葉のこのツイートがきっかけとなり、漁師の平松さんがオンラインレッスンを受けることになり、それを知ったTatsuyaの凱旋ライブがきまったのである。こうして書くと改めて本当に奇跡だな……
という訳で、こうなったら稲葉にも物語の行く末を見届けてもらいましょう。君キミ、ベーシストだって噂を聞いたよ、この旅の発起人として責任を取って貰わなきゃね……?などと脅したところ、「僕でよければ全然イイっすよ!」と2つ返事でOKでした。

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稲葉 浩太(Bass):学生時代、新星堂主催のバンドオーディション「CHANCE」にて全国大会で優勝。同大会でAqua timezとも共演。その後は自身のバンドで元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのウエノコウジと共演するなど、活動の幅を広げる。普段はM&Aを手がける会社の代表取締役として活躍。

ちなみに稲葉ですが、過去に4回も宗谷岬ソロキャンプを決行した猛者であり、今年にいたっては新婚にも関わらず宗谷岬に1人でテントを張って年越しをするほどの宗谷岬狂であることが後ほど発覚しました。

ていうか、えっ、これでバンドメンバー全員決定?凱旋LIVE決まってからまだ1日しか経ってないんだけど??
長い旅というよりは「仲間、最初の村の酒場に全員いました」みたいな感じですが、旅費やギャラ無しでの稚内LIVEを即断する奇跡みたいな仲間3人が今、ここに集結しました!!

仲間も集まったところで、僕はTatsuyaに1つ提案をしました。

「これ、せっかくなら、
 クラウドファンディングにしてみない?」

今回のライブの話が出る前から、僕にはずっと考えていたことがあります。それは、スキル(技術)や時間以外の何かを、お金に変えられないかということです。現在、ミュージシャンとしてのお金の稼ぎ方は「ライブ」「収録」「講師(レッスン)」の3種類がほぼ全てになってしまっています。音楽業界の縮小により、その3つの市場も加速度的に狭くなってきてしまっている。僕は常々、ここに疑問と危機感を感じていました。

Tatsuyaが上京してから築いてきたものーそれはミュージシャンとしての技術だけではなく、これまで得てきた人脈や「この人なら応援したくなる」と思ってもらえる、信頼のようなもの。そういった「信頼」をお金に変えることができないか……お金そのものに対する価値観を変えるためにも、そこに対して、何か新しい提案をしたい。その解の1つが、クラウドファンディングでした。

クラウドファンディングをやる側は、怖いです。失敗すれば恥をかくリスクもある。だけれどそれより新しい可能性を切り開いていきたいし、僕には「このプロジェクトならなんか上手くいくんじゃないかな」という、根拠のない自信もありました。

最初は少し躊躇していたTatsuyaも、最終的には「やってみたい」と踏み出してくれました。目標額は250,000円に設定。

「いけますかね…」と懸念するTatsuya。しかしクラウドファンディングが目標額に達成してもしなくても、凱旋LIVEを決行することには変えません。どうせやるなら、思い切り。失敗したって痛まないのだから、高いところを目指していこう!
バンド名も『T’s Dream』に決定し。いよいよ一夜限りのスペシャルバンド、凱旋LIVEプロジェクトのはじまりです!

クラウドファンディングへの挑戦

プロジェクトとして動き出してからの、みんなの熱量はすごかった。
募集内容やリターン品の考案、経理・広告・デザインなどなど……クラウドファンディングは企画から運営・細かい事務作業まで、何もかも自分たちでやらなければなりません。まるでバンドメンバーが、1つの会社のように動いていきます。(ちなみに運営会社のCAMPFIREの担当者さんが偶然北海道出身だったこともあり、リターンの内容やライティングなど、細部に至るまで本当に親身になってアドバイスして下さいました!)
気がつくと、自然と役割分担が決まっていました。僕がプロジェクトマネジメント(全体工程設計)や文章作成、TAKUROCKがリターン商品の企画などのアイディア出し、Tatsuyaが経理とインフラ関係。稲葉は「みんな、すごいっすね!」と励ますチアリーダー。

会社の経営者をしていると、どうしても「これは海老澤さんの判断を待とう」みたいな時間が発生します。しかし、このプロジェクトにはそれが全くない。例えば僕がちょっと目を離したすきに、LINEでバンバンやり取りがなされて、バッチのデザインが決まっている(笑)決定権は全員にあり、多数決で何かを決めたことなんて1つもありませんでした。

「これだよな」と心が震えました。その場にある、熱量が違う。熱量が違うと、スピードが違う。メンバーにたまたま経営者が2人いたというのもありますが、「クラウドファンディングを成功させて、演奏でTatsuyaの夢を叶える」という共通の終着点に向けて、それぞれのレールの上を自走している感じがとても気持ちよかった。

もともとノーギャラどころか、旅費さえも自己負担で稚内行きを決めてくれていたメンバーたち。「お金や名誉のため」という気持ちが一切なく、Tatsuyaの夢に純粋に共感しているからこそ。もっとTatsuyaのことを応援してくれる人を増やしたい……そのための方法を1人ひとりが自分の頭で考えて、判断して、自律的に動けているチームでした。

今回の『T’s Dream』は、バンドを組むのが初めてどころか、顔を合わせるのも初めてのメンバーです。TatsuyaとTAKUROCKはお互い存在は知っていたくらいですし、稲葉に至っては僕ですら初めて話しました。そしてバンド結成が決まってから1度打ち合わせて、1度飲んだだけ。

それで、この熱量とスピード感です。何ならみんなで集まる前から、もう主体的に動いていた。みんなが同じゴールに向かっていることはこんなにも強いのかと、ただただ驚きでした。

そしてその熱量は、クラウドファンディングを通して多くの人に伝わっていきます。

8月27日、いよいよをクラウドファンディングの募集がスタートします。

もちろんTatsuya、そしてTAKUROCK・稲葉もシェア。僕たちからさらに他の人、また他の人へ。またたく間に広がっていって、開始1週間で達成率40%まで到達しました。

みんなの「Tatsuyaを応援したい」という気持ちが、支援を通して伝わってきます。Tatsuyaのご親族の方や古い地元の友人たち、『オトノミチシルベ』の、それもTatsuyaには直接習ってはいない生徒さんまで、僕の投稿をみて支援してくれていました。

出張先の福岡で、オトノミチシルベ古川歩先生も「若者の夢を応援したい!」とその場で支援をしてくださいました。Tatsuyaのことを全く知らないにも関わらずです。日本全国から支援と言う名の追い風が僕たちの背中を押してくれました。

しかしそこからが、横ばいでなかなか増えていかない。
Tatsuyaが、何度も何度も、想いを込めてシェアします。

地元新聞社の掲載も2社、決まりました。

そして、ついにクラウドファンディング最終日……

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目標を大きく上回り、大成功です!!!!!いや、本当に嬉しい。
Tatsuyaは最初は無謀だと思っていたそうですが(笑)
僕はなんとなく、うまくいくんじゃないかと信じてました。

支援してくださった方は、45名。
それぞれのエールと想いを乗せて、稚内へ飛び立ちます。

いざ、最北の地へ

「親族の前で演奏するの、フェスより緊張する……」と呟くTatsuya。
9月下旬の稚内なのに半袖で登場してきたTAKUROCK。(さすがに上着着た)
合流前に単独で礼文島を探索、肝心のベースが宿に置き去りになり危うく出演が困難になった稲葉。(ギリ間に合った)

地味な紆余曲折はありましたが……
『T’s Dream』、最北の地に集結です!

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空港に着いてから、Tatsuyaのお父さんが市内を案内してくれました。
海と礼文島を背負う、雄大な宗谷岬。
宗谷丘陵の白い道を抜けると、見えてくる風力発電のタービンたち。

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稚内市は町の電力の約7割が風力で賄われているほど、風の強い町。
それが今日は、どこまでも広がる青い空と草原のなか、
タービンの白い羽たちがピタリとも動かず、すっと佇んでいました。

Tatsuyaのお父さんが言います。
「いつもは車のドアも開けられないほど風が強い町なのに……
 これだけぴたりと風が止む日は、奇跡に近いよ。海老澤さん、何か持ってるのかもしれませんね」

僕が原因で稚内が停電になってしまうのは心苦しいですが、
これまでずっと奇跡つづきの宗谷岬。
何かが起こりそうな、そんな前触れを感じました。

LIVE前日は平松さんのご自宅でBBQの後、「民宿宗谷岬」で1泊。
久々に集まったメンバーでセッションすれば、愉快に音も踊り出す。


そして、夜が明けた!

一夜限りのT’s Dream

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会場は、稚内市内のB.B.MUSIC CLUB。(恐らく)最北端のLIVEバー。
漆喰で塗られた壁にギター、テーブルの木材の風味・ソファーに至るまで、アメリカンな雰囲気でセンスよく纏められた空間。前方の巨大スクリーンには70年代の著名Rockerの映像が映し出され、オーナーのこだわりと音楽への愛が随所に感じられます。

30名ほどでいっぱいとなる会場は、Tatsuyaのプレイを一目見ようと詰めかけたお客様で満員。Tatsuyaのご親族の方も多く、こんな熱気のある保護者会は初めて見ました。

ご親族以外でも、青春時代を共にした吹奏楽部の先輩や、幼稚園のときの先生まで。東京から来てくれた人も。漁師の平松さんも、最前列で見てくださっています。

観客の皆さんとの距離も、すごく近い。ミュージシャンとして数々のLIVEをやってきましたが、これだけ家族感のある(※リアルに家族だらけの)箱は初めてだったかもしれません。かといって全くアウェイ感もなく、空間ごと受け入れられているような不思議な感覚。その熱気に煽られて、メンバーの調子も徐々に上がっていきます。

開演前のリハはばっちり。
時刻は20時。いよいよ一夜限りのスペシャルライブ、
『T’s Dream』の開幕です!!

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TAKUROCK「こんばんは!東京からやってきました!!」
「みなさんーーー!飲んでますか?!」

安定感しかないTAKUROCKのMC。
既に出来上がっている会場の皆さんは、初っ端からボルテージ最高潮!

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一曲目、支援者の方からリクエストがあったのは。
Tatsuyaが高校時代に憧れて、ずっとやりたかった80年代の曲でした。

今までずっと家で1人で練習しているだけだったのが、初めてバンドとして演奏することができた。

TAKUROCK「俺も高校の頃この曲を聴いてて、こんなん声出るかーー!!って思ったけど……まあ人間、頑張れば成長するってことですね!」

Tatsuya「自分の好きなバンドの曲を、一緒にやってくれる仲間がいるってすごく嬉しい。この歳……これだけの年月を経て、この曲をやれると思わなかった。」

曲が当時の風景や、想い出をどんどん運んでくる。
あのときあの部室で、一緒に音楽を聴きあった吹奏楽部の先輩も今日は来ていて。あのときがあったから、今のTatsuyaがある。

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といってもしんみりした雰囲気ではなく、曲はROCK、MCはTAKUROCK!
軽快なテンポとリズムで老若男女歌いながら、会場も一体となっていく。

矢沢永吉さんのPVに出たときと同じ衣装を着て来たというTatsuyaは
クラウドファンディングからの意外なリクエスト曲も、懐かしそうに叩きこんでいく。

そして最後の曲の前に。MCで改めて、Tatsuyaが話す。

Tatsuya「クラウドファンディングが成功して、東京に来てからの10年間でやってきたことって、無駄じゃなかったんだな……と。」

「いろんな人に見てもらって、応援してもらって。支援してもらって今日ここに来れたこと、嬉しく思っています。」

「この10年間、何度もめげそうになって……ドラムを趣味にしようと思ったこともあったけど……またミュージシャンとして、頑張れたらなあと思います。」

「そして海老澤さんにも……出会いは10年前。mixiで全く知らない僕にメッセージをくれて、新宿のとんかつ屋で(「婚活」と痛恨の聞き間違え)、講師としての面接をしてくれて。海老澤さんがいなかったら、今の生活もないので。本当に感謝しています。」

『オトノミチシルベ』は設立10年目。Tatsuyaは創立メンバーに近いところから、ずっとうちを支えてきてくれて。僕なんかはmixiで声かけて来た頃とと変わらず、行き当たりばったりで宗谷岬まで来てしまっているけど。Tatsuyaはここまで、応援を集められるだけの人間になった。


最後「自分は自由だ」という歌詞の曲を終えて、
アンコールの拍手が鳴り止まない中。
Tatsuyaが語り出します。

Tatsuya「本日は、ありがとうございます。
支援いただいた方はもちろんですが……
僕が一番感謝を伝えたいのは、父親なんです。」

「音楽の道に行きたくて、
東京の専門学校に行きたいと言ったときに
最初は反対されました。国立の大学の推薦もあるのに……と。」

「趣味としてやっていくしかないのかな……と就職先も視野に探していたときの、ある日の食事のあと。父が"やっぱり行って来ていいよ"って言って……なんで?!と聞いたら。」

「"行かせなかったことに後悔したくない"と、
父が言ってくれたんです。」

「稚内からプロを目指すなんて、お金を稼いでやっていけるかも分からない、複雑な想いもあったと思っている。
あの時背中を押してくれたお父さんに、ありがとう。」

「このLIVEで一番御礼を伝えたかったのは、お父さんです。」

乾杯の後のアンコールは
Tatsuyaの、それはそれは力強いドラムソロからはじまり。
拍手と応援の言葉が飛び交う中で、最後の曲を演奏しきります。


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あっという間に2時間が経ち
割れるような拍手と、会場全体の高揚感の中。
『T’s Dream』としての最初で最後のLIVEは、大成功のうちに終わりました。

奇跡の正体と、皆さまへの御礼

LIVEが終わった後、Tatsuyaのご親族が取り出したのは……

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た、タラバガニ……!!!!!ってこんなにデカいものなの??!!

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会場からは喜びの悲鳴と奇声が。いや美味しい、マジで美味しい、こんなに太い蟹はじめて食べた、塩味だけでこんなに美味しいのか。ちょっと忘れられない、蟹……いやマジでテンション上がった。もう海老澤から蟹沢に改名したいぐらい。

Tatsuyaの先輩や店のオーナー、常連さんを交えて、誰からともなくセッションがはじまる。重低音の響きが会場を包み、みんながリズムを刻んでる。

ずっと蟹をむいてくれていたTatsuyaのお父さんは、照れ臭そうでもあり、本当に嬉しそうな表情をしていました。
平松さんも「久々に生きている感覚がした」と言ってくれた。
東京から来た友人も「今日、ここに来れて本当に良かった」と言ってくれた。

ここにいる誰もが、Tatsuyaの夢と音楽で1つになった体験と余韻、心からこの場を楽しんでいた。
僕ももう楽しくて楽しくて、めちゃくちゃに酔ってしまった。

稚内中の、いや日本中の音楽への愛がこの場に集まっているんじゃないかと思える夜。こんなに、幸せな夜はないと思った。

演奏している僕らも、当日聴きにきてくださった皆さんも、会場にはいらっしゃらない支援してくださった方々も。お金とは違う次元の価値を、共有できている感覚。Tatsuyaだけでない、関わった皆さまが全員。何よりTatsuyaの応援として参加した僕自身が、あたたかな幸せに満たされていた。

思いつきに近いノリで、始まったクラウドファンディング。
やってみたら、利益なんて度外視で共感してくれて、一緒に稚内まで来てくれた人がたくさんいた。

ずっと何でだろうと、考えていたのですが。みんながみんなのためを想って、Giveだけで動いていたからこそ、循環するエネルギーが作れたんじゃないか。Give&Take……スキルの対価としてお金をもらうような双方向の閉じたやり取りだけだったら、このエネルギーは生まれなかったのだろうと思う。

はじめは小さな点だった動きが、音楽を媒介として。いろんな人や事象が繋がっていて、エネルギーが生まれて、大きなうねりとなって戻ってくる。これを奇跡と呼ぶんじゃないだろうか。

僕はこの『オトノタビビト』の活動、ひいては『オトノミチシルベ』でも、このうねりを作っていきたい。もっともっと理念を磨いて、共感してくれる人たちと、Giveから生まれる循環の輪をつくっていく。

外から見たら奇異に映ることもあるかもしれない。この稚内にこれだけの人数が集まる熱狂も、全員には理解されないかもしれない。文章でどこまで伝わるかも分からない。だけど、それがきっと僕が作りたい「音楽をはじめたい人が1秒でもはじめられる世界」の実現・音楽業界への恩返しにも繋がるし、何より僕が、僕として生きていくために、絶対に必要なことなのだ。

人が人の中で生きるということは、どこかでGiveが起点となって、そこから生まれるエネルギーの循環を感じることなんじゃないだろうか。僕にとっては音楽が媒介だけれど、音楽以外だって同じなんじゃないだろうか。
それを僕はこれからも全国にその循環を、作り続けていきたい。


そんな僕自身の決意とともに。
改めて、皆さまに御礼をお伝えさせてください。


まずは当日ちゃんと御礼が言えないままになってしまった、
Tatsuyaのお父さん。

Tatsuyaを東京に行かせてくれて、本当に本当にありがとう。
この約9年間、何度Tatsuyaに助けられたか分かりませんし
Tatsuyaがいなければ、今の『オトノミチシルベ』もなかったと思います。
これからも僕はTatsuyaと助け合いながら、お互いに成長していきたいです。


そして、支援してくださった皆さま。


皆さんのお陰で、Tatsuyaのミュージシャンとしての1つの節目を
こうして最高に幸せな形で迎えることができました。本当に本当に幸せな夜でした。
Tatsuyaにとっても僕にとっても、この先の人生にとって、今回のLIVEで得られたものが間違いなく大きな意味を持つであろうことを、あの場にいた僕が保証します。

皆さんの支援の1つ1つ、そのどれが欠けても、あの夜のあのエネルギーは生まれなかったと思っています。このご恩はこれから、音楽を介してお返ししていきます。

一夜限りの『T’s Dream』より、改めて。
本当に、本当に。ありがとうございました!!
皆さまからいただいた応援を、誰かへのGiveに変えて。
ROCKに愛を込めて。
これからも僕たちは、音楽を介して人の輪と幸せを、全国各地へ広げていきます!!!!

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【次回予告】その後も、内容を聞かずに3分で予定を抑えるTAKUROCK

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Special Thanks(クラウドファインディングにて支援して下さった皆様)

Zuzuかっちゃん
see
しまだ
安蒜有美子
松本慎也
平松進吾
田中俊光
harachan2005
The Beatnics TinyJohn
荒木佳重
工藤
Toshie まめも Kimoto
SOB代表安藤健二
今宮
seiji yamamoto
wataru
ヒカルチャン☆バック
山本桃子
桝谷周平
松下裕子
牧貴子
Hirofumi Okuda
アニキ (THE NAGAYAMA MONKEY)
takahiro…
安田令央那
tomo-ya&shiho&son
ossie
YUTA
井口不二男
Miwa Takamine

皆様、僕たちの夢の実現に温かい応援とご支援を頂き本当に有難うございました!


(聞き手・構成:岡田 菜子)

頂いたサポートはオトノタビビトの活動資金に充てさせて頂きます!