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学びのシェアNo.5~クロスカリキュラムラーニング~

Moi!

先週は木・金・土・日と学校が秋休みで4連休だったため、シェアの間が空いてしまいました!すみません!

また今週からシェア再開です!

(なお、4連休のLapland旅については、また後日、、、お楽しみに!)

(↓↓↓ 10/24追記:Lapland旅アップしましたので、よければ!! ↓↓↓)



ということで、さかのぼること1週間前、

実は、先週は自分のお世話になっている学校では、秋休み前の月・火・水が特別時間割だったんです。

何をしたのかというと、この三日間は全校生徒が縦割り(つまりいろいろな学年ミックス)でグループになり、あるテーマにそった特別授業を受けていたのです。

これがまあ面白いこと。笑

今回はこの三日間、子どもたちがどんな授業を受けていたのかを述べつつ、その中の場面場面で自分が感じたことを、事象ベースに・演繹的にシェアしてみます!




クロスカリキュラムラーニング

今回のような3日間は

monialainen oppimiskokonaisuus(モニアライネンオッピミスココナイスース。長い。笑)

略してMOK

と呼ばれており、英訳するとcross-curricular learningとなるそうです。日本でいえば、教科横断型学習が一番近いと思います。つまり、何か一つ具体的なモノやシチュエーションなどをベースに各教科の学習を横断的・総合的に行おうという取り組みです。

フィンランドの公立基礎学校では、3年前から、少なくとも年に1回はこのようなcross-curricular learningを実施することが義務付けられています。

ただ、具体的にどのように実施するのかは各学校に任されているそうです。


自分の学校では、秋と春の年に2回、数日間にわたって実施しています。その期間の間、子どもたちは前述したとおり学年ごちゃまぜでグループになって授業にのぞみます。各グループ、生徒は25名前後、1~3年生がミックス、4~9年生がミックスです。



そして、気になる今回のテーマは 


”エンターテインメントとメディア” 


もう、名前からして、面白そう。笑



ではでは、どんな授業があるのか、のぞいてみましょう。




●はじまりはこどもから。

1つ目の教室。このクラスでは、子どもたちは広告について学んでいます。

先生は「広告はどこにあるのか?」「広告に使われている色にはどんな意味があるのか?」「良い広告とは何なのか?」といった疑問を投げかけつつ、広告についての考え方の素地を子供たちの中に作ります。そしてここから、色画用紙やペン、雑誌の切り抜きなどを利用して、自分たちで広告を作っていきます。


2つ目の教室。ここでは、子どもたちは映画の裏側について学んでいます。

映画ではいつも俳優が脚光をあびるけど、実はその裏側にはもっとたくさんのスタッフがいる。彼らがどんな仕事をしているのか、さまざまな映像を見ながら学んでいきます。

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3つ目の教室。こちらはパソコンがずらりと並んだ教室です。子供たちはmicro:bitをいじっています。

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micro:bitとは、英国放送協会BBCが開発したプログラミング教育用のミニコンピュータで、インターネット上のソフトウェアを使って簡単にプログラミングができるというもの。

日本でも、プログラミングについて学ぶことが新学習指導要領に明記された関係で広がりを見せています。子どもたちはこれを使って電子音で音楽を作成しています。


4つ目の教室。と、おもいきや、先生が1人、生徒が4人いるだけ。先生いわく、今、他の子どもたちは、校内のあちこちに散らばり、movieを撮影しているのだとか。

ここでは、子どもたちが i movie をつかって短い映像を作成しています。内容は何でもよし。ただし、条件があります。①会話などはすべて英語で行うこと。②先生の用意したワードバンクから最低10個の単語を選び、内容に盛り込むこと。

あるグループはホラー映画の予告編のような動画を、またあるグループはトゥルクの見どころ紹介ムービーを作成しています。


5つ目の教室。ここでは喜劇王チャップリンの映画を鑑賞しています。

途中で先生が映画を止め、その内容に沿った非言語エンターテインメントについて説明します。そして子供たちは、ボディランゲージのみで状況を伝えたり、マシュマロとフォークでタップダンスをしてみたり。言葉を使わずに人を楽しませることに挑戦しています。

(Youtubeより)

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6つ目の教室、と、おもいきや、こちらは大きな映画館。学校から歩いていける距離にある、文化センターのシアターをお借りしています。これから子どもたちは丸まる2時間、映画を鑑賞します。

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今回鑑賞するのは、Simonという映画。ゲイであることを隠して生活していた大学生が、同じようにゲイであることを隠している他の大学生とネット上でつながったことから事件が起こる、という物語です。

子どもたちは鑑賞前にジェンダーについて学んだ上で鑑賞にのぞみます。映画の最後には子どもたちから大きな拍手が上がりました。



このように、とにかくたくさんのアプローチからメディアとエンターテインメントにつ触れると同時に、そのプロセスの中で美術や社会・技術・英語・人権・倫理などについても学んでいます。

本当に面白いものばかりです。

これらの授業を用意しているのは、もちろん先生方です。それぞれの先生が自分の専門性を活用して、テーマである ”エンターテインメントとメディア” に沿った授業を考案しています。


では、そもそも、どのように今年のテーマがエンターテインメントとメディアに決まったのか。

なんと、テーマは ”子どもたちが決めた” というのです。


この学校には生徒会役員・学級委員会のような組織があり、そこに所属する代表の子どもたちを通して、子どもたちから意見を募り、子どもたちの投票によって、今回のテーマ ”エンターテインメントとメディア” が決まったのです。


ここに自分はすごく驚きました。


授業の方向性を子どもたちが決めているんです。

そりゃあ授業を作る先生たちも、「子どもたちがやりたいって言うなら!」と気合が入りますし、

授業を受ける子どもたちも、「自分で決めたことだから!」とやる気になります。


はじまりは子どもたちが自分自身で決めていたのです。




●正しく”遊ぶ”

7つ目の教室。ここではグリーンスクリーンについて学んでいます。

今やグリーンスクリーンを使ったCG合成映像は、映画やドラマだけでなく、普段のニュースでもなくてはならないもの。エンターテインメントの裏側です。

ここでは実際に、子どもたちはグリーンスクリーンを使って動画と画像の合成にチャレンジしています。

図2

以前もシェアしたとおり、こちらの学校でのICTの導入具合はさすがです。


子どもたちはあーしようこうしようと、いろんなアイデアを出しながら、動画の撮影、編集をしていきます。


あるグループは、「宇宙ステーションがニュース番組の生中継中に爆発してしまう事件」の映像を作っています。

始めはただのニュース番組を作成しようとしていた彼らですが、実際に撮影をしたり演技をしたりするなかで、どんどんアイデアが膨らんでいき、気づけばこんなテーマになってしまったようです。笑

おもしろい笑

このようなテーマに変わっていった要因の一つが ”彼らが教室の中で消化器を見つけたこと” です。


消化器見つけた彼らは、それを持ち出し、どうにか使えないかといじり始めます。

個人的には、消化器をどこかにぶつけたり、はたまた火事でもないのに噴射してしまったりしたら大変だと、ひやひやしていたのですが、そこに担当の先生が登場。

消火器で遊ぶ彼らを見て、先生は

「それ、使うなら、持つときはこうやって黒いグリップのところを持つんだよ。それから、このピンを抜いちゃうとほんとに噴射しちゃうから、ここは触らないようにね。」

と、消化器の ”正しい遊び方” をレクチャーして去っていきました。


おかげで彼らは消化器を”正しく”使って、無事、爆発する寸前の宇宙ステーションと中継をつなぎ、消火に躍起になる少年の姿を報道したのでした。笑

素敵なコメディー映像が完成し、彼らはずいぶん満足そうな表情です。笑


自分はこの先生の行動に感動を覚えました。

子どもたちを危ないものやことからただ遠ざけるのではなく、どうすれば安全に使えるのかということを先生が近くで見ていてあげられるうちに教えるのです。

ひやひやとしていた自分が急に恥ずかしくなりました笑


ちなみに、これこそまさに自分がひらしんさんから聞いた話です。




●見えてきた課題

ここまで、7つの素敵な事例を挙げてきました。どれもすごく魅力的で楽しいものばかりです。


しかし、もちろんそこにはいくつもの課題もうかがうことができます。

今回は、2つほど書いてみます。


まず1つ目は、先生たちの負担です。

今回のような授業は前述したとおり、先生方が自分たちで用意しています。どれも素敵な内容ばかりですが、当然、慣れない授業を準備することになるので、先生たちにとってはかなり負担。

「ごめん、授業の準備で昨日全然寝れてないから疲れてるの。ははは笑」

とか言ってる先生もいます。

普段から、時間にも心にも余裕のあるフィンランドの先生にしては珍しい笑。



そして2つ目は、子ども間の取り組み具合の差です。

子どもたちが自ら決めたテーマとはいえ、100%全員の子どもが積極的に取り組むわけではありません。なんなら、普段にも増して自由度の高い授業が多いので、積極的な子はより積極的になる半面、興味を持てない子はなおさらサボれます。そしてそういった子供たちの間には、より大きな差が生まれます。

”差がある” というのは悪いことでは決してないんだけど、教育を考えるときにボトムアップ的指向が強く出る自分としては、そういった”興味を持てない子”たちにがいかに学びに向かうことができるか、がすごく大事だと思うんです。

今回のような実践もふくめ、”より自由な教育” への遷移が加速する今の時代において、ここで生まれる差をどのようにしてフォローアップしていくのか、ということも1つの課題といえると思います。




ということで、今回はここまで!

引き続き、学びのシェア・先生インタビュー・(時々旅行記)挙げていきますので、お楽しみに!


ここまで、ながーーーい文章を読んでくださり、ありがとうございました!

Näkemiin! See you!!

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