T H I R D W A V E R vol.1
最近気になった新しいアーティストを紹介する連載をnoteで始めます。基本的には現時点でメディアではあまり取り上げられていなかったりするような海外のインディーアーティストを紹介していく予定です。
今迄もそういった記事は多かったんですが、タイトルを固定し、連載という形で、月に1度くらいは書けるように頑張りたいです(頑張れなかったらすみません)。
Robocobra Quartet
北アイルランドのベルファストを拠点として活動するRobocobra Quartet。
私のツイートで恐縮ですが、発見した時の印象がまさに貼り付けた楽曲の『Heaven』なので聴いてみて欲しいです。
ドラムがヴォーカルを兼任しているのはSquidと同じですが、音楽的には更にジャズに寄っていて、楽器隊にはギターメンバーがいない。Squidもインタビューで「自分たちはギターバンドにカテゴリーされるかもしれないが、ギターの音が抜けても楽曲自体に穴が空かない」というようなことを言っていた気がするけど、Robocobra Quartetにはそもそもギターがいない。
近年のUKのインディーシーンでは特にその傾向が顕著ですが、ジャズとロックの境界線はもはや無くなってきているし、クロスオーバーしまくっている現在において、それを最も体現しているバンドであるかと。なんならジャズのフェスにも出演しているし。
https://www.youtube.com/watch?v=DhIEntQOKF4&t=1531s
リズム隊のただただ気持ち良いグルーヴを奇妙に彩るサックスとキーボード。シリアスな方向に振り切れそうなところを、何故かスポークンワードなスタイルでニコニコと歌うドラム・ヴォーカルもこのバンドの良い感じ。
実際のところ私も今回の作品から知ったところではあったんですが、キャリアとしては意外と長く、既に2枚のアルバムをリリースしています。こちらのツイート印象的に感じたので、紹介しておきます。
ニューアルバムの『Living Isn't Easy』は6月17日にリリース予定。是非とも今から注目してみてください。
Park
Parkはフランスの新しいアーティスト。
3月25日にセルフタイトルのデビューアルバムをリリースしました。
個人的にフランスのインディーギターロックのシーンが面白そうという実感がここ数年あって、それはMNNQNSやUnschooling、La Colonie de Vacancesといったアーティストの発見から思っていることで…この辺りのシーンをしっかりと追える記事があったらいいなと思いつつも(あったら教えてください)、その中で最近の個人的な大ヒットだったのがPark。
ParkはFrànçois & The Atlas MountainsとLysistrataというフランスで活動するバンドメンバーによる複合チームということみたいですが、片やFrànçois & The Atlas Mountainsは15年に渡る活動期間のある中堅バンド。Dominoからもリリースしていました。もう一方のLysistrataは20歳前後の若者による新しいバンド。
どちらも知らなかったので聴いてみると、Frànçois & The Atlas MountainsはKevin MorbyやSpoonを彷彿とさせるような円熟味のあるインディーポップマジシャンという印象だったのに対し、LysistrataはUSのエモパンク勢にも通じるようなメロディアスで真っ直ぐなバンドといったところ。
Parkの音楽はLysistrataのメロディアスで初々しいサウンドラインを引き継ぎつつも、Frànçois & The Atlas Mountainsの渋みがグッと混ざってきて、そのどちらの風味は確かに残しつつ、全く別の新しいバンドとして面白い音楽になっていると感じました。世代もジャンルも接点がイメージしにくい両者のコラボレーションで生まれたParkは不思議なケミストリー、それはバンドの醍醐味というものも感じます。
最初に挙げたフランスのインディーアーティストもそうですが、バンドメンバーが他のバンドを掛け持ちしたり、異なるバンドメンバーのコラボレーションによる新しいプロジェクトである傾向を感じています。私が面白そうだな…と感じ取っている背景にはもしかしたらそう新たなコラボレーションが起きやすい風通しの良さみたいなものが地盤にはあるのかもしれません。
Jonah Roy
USの中西部に位置するミズリー州セントルイス出身のJonah Roy。
6歳の頃から楽曲制作をスタートし、高校生の頃からSoundCloudに楽曲をアップロードしては小さなファンベースを築いていき、2020年の5月頃にクリエイティブな環境を求めてロサンゼルスに移住したという。
上の『Fuck That』は今年の1月にリリースされた楽曲ですが、近年のUSインディを賑わすベッドルームポップのカテゴリの中でも、とびきりのアンセム感を持った楽曲ではないでしょうか。シンセ音でリードする癖になりそうなヘナヘナでキャッチーなメロディーラインはRoy BlairとMGMTとboy pabloがアッパーなテンションで混ざったような遊び心が爆発って感じで超Good。
4月に出た新曲の『Pressure』では軽快ながらも寂寥感と高揚感が高まりながら交差していく感じが夜風のように気持ち良く沁みる作品でした。
Black Polish
4月にも新曲の『Tears Are Falling』をリリースしているんですが、先ずは昨年末にリリースしたEP『Out of Place』からの1曲目『Baby Tonight』を。
2010年前後のインディアンセムの一つでもあるThe Drumsの大名曲『Let's Go Surfing』を彷彿…というかそのまんまのベースラインから、サビに向かって一気に爆発していく高揚感がエネルギッシュで気持ちの良い楽曲。
13歳から楽曲を制作し、16歳にして早くもこの『Out of Place』をリリースしたとのことですが、力強い声量が光る一方で、girl in redに対抗し得る繊細で尖った危うさも感じます。
アフロアメリカン系アーティストのインディロックへの接近は近年の一つのムーヴメントでもあると思うんですが、Z世代よりも更に下の世代である彼女の才能がこのようなサウンドに向かっていったことは、一つ特筆しておきたい事象な気もします。
Beige Banquet
滅茶苦茶にキノコが飛び交うこのビデオを見ているだけでマジックマッシュルームと同じ効能が得られそうですが、カナダのCrack Cloudをサイケデリック漬けにしたようなこのバンドの正体はロンドンを拠点とするBeige Banquet。
Fred Perryは本当にすごい。知ったばかりのUKの新人アーティストでもほとんど既にFred Perryで既に記事が出来ている。担当している人、カルチャー好き過ぎで本当に感服します。
さて、この記事の中で「どのようなサブカルチャーに影響を受けましたか?」という質問があったのですが、それに対する回答を紹介しておきます
これまでのリリースを確認すると2021年1月に1stフルアルバム『Bata』、8月にセルフタイトルのEPをリリース。今年の4月28日にはライブアルバムの『LIVE! LIVE LIVE!』をリリースしています。
近年のUKやアイルランドを中心としたポストパンク音楽の盛り上がりを大いに楽しんでいる反面で少し食傷気味な気分も正直あったんですが、それでも突き抜けてくる新しいアーティストもまだまだ出現します。それが現行シーンの層の厚さや面白さを証明しいて、その一つとしてBeige Banquetの存在はいつかもっと大きくなっていく予感。彼らも型にハマることを拒否するクリエイティブな音楽の創り手で在り続けて欲しいですね。
ありがとうございました!
村田タケル
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