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KEEP OUT

KEEP OUT   作:高木優至
 
 
(体育倉庫の中にポツンと一人。)
 
ヤダよ。どうしてこんな所に入らなきゃいけないの? 放課後に体育倉庫に居たら僕が怒られるじゃない…ごめん! わかったよ。わかったからぶたないで。
 
僕じゃない。僕のせいじゃない。なのにどうして? どうして僕がこんな目に…誰? 何のためにこんなことするの? 僕が何をしたって言うの?
 
君達が…君達がやったんじゃないか。あの日君たちが彼女の事を…なのにどうして? わかんないよ。…誰か。誰かが僕の事を…そうだ! そうに違いない! 誰だ? 誰が僕の事を売ったんだ?
 
佐々木? いや、佐藤か? もしかして引っ込み思案の山本? 誰だ! 誰だ僕を裏切ったのは! クソッ、こんなはずじゃなかったのに! こんな学校生活じゃ…無かったはずなのに。どうしてこんな事に。もう、誰も信じられない。
 
深く深く。もっと深く。奥へ奥へ。もっと奥へ。
 
誰にも入って来られないように。
 
深く深く。もっと深く。奥へ奥へ。もっと奥へ。
 
誰も傷つけない。誰にも傷つけられない。
 
深い闇の、奥の奥へ
 
立ち入り禁止? 何でこんなものが。僕は部外者じゃない! 当事者だ。この奥へ行けば、もう誰も入って来られないのかな? 僕だけの楽園。安住の地。
 
(立ち入り禁止の先へ行く)
 
静かだな。とっても静かだ。何もない、何も考えたくない。ただただ無でいられる場所。
 
(遠くに人影を見る。)誰? 君は誰? 誰だっけ? 同じクラスの…清水さん。清水さん? 清水さんなのか?
 
どうしてここに? そうだ。居るはずがない。居る訳がない! だって、君はあの時…自殺したはずじゃないか。
 
どうしてここに? 何でそんな目で見る。何でそんな目で見るんだ。見るな! 見るんじゃない僕を! 僕じゃない! 僕は悪くない! しょうがなかったんだ。だってまだ子供だったから! 僕が悪いんじゃない! あれはみんなが勝手に!
 
わかってた。君が違うと言えない子だってことは…わかってた。君だけが悪い訳じゃないってこと。君が悪い訳じゃないってことを…知ってたのに。知ってたけど僕は…全部君に押し付けた。
 
みんなが清水さんを責めている時に、僕はずっと押し黙っていた。怖くて声が出なかった。喉の奥が締め付けられるようにキューッと…声が出せなかったんだ。実は僕のせいなんですって。僕がウサギに会いたくて、その日掃除当番の清水さんにお願いしたのに。よく見てなくて僕がウサギを踏んじゃったから死んじゃったのに。全部僕のせいなのに…僕が悪かったのに。清水さんは何も言わずにずっと下を向いていた。僕を見る事すらなくただただずっと下を。
 
僕は逃げた。逃げたんだあの時に僕は! そのまま黙っていてくれ。ごめん、黙っていてくれって。僕は、逃げたんだ。そこから清水さんへのいじめが始まって…君は自殺した。そう、自殺したんだよ君は。僕のせいで。
 
ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 謝ってももう君は居ないし、もう取り返しがつかない。わかってる、わかってるよそんなことは。ははは…そうか。なーんだ。そうだったんだ。
 
僕の方じゃないか…先に裏切ったのは。

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