じゅんくんとひなちゃんと塩田~これは誰かへの物語~

↑今回はこちらの「じゅんくんとひなちゃん」シリーズです。

・じゅんくん⋯ひなちゃんの彼氏。
「ごめん」の言葉の重さが物理的に軽すぎて部屋の中でプカプカ浮いてしまう。
俳優の卵。


・ひなちゃん⋯じゅんくんの彼女。
池袋のデバートの化粧品売り場の店員さん。
結構性格キツめ。
色々な言葉や物事に過敏に反応する。


じゅんくん→(じ)
ひなちゃん→(ひ)


(ひ)OKストアのカートに入れた100円忘れてくるとか有り得ない!
マジでクソすぎる!あんた頭おかしいって!!


(じ)ほんとごめん。
今日初めてOKストアに行ったし、ひなちゃんがカート取る瞬間に立ち会ってなかったからカートに100円入れる仕組み知らなくて。


(ひ)いや、知らないとかじゃなくて
鍵刺した瞬間に100円玉ポンって出てくるよ??
それに気付かない事が頭おかしいって言ってんの!


(じ)ごめん。


(ひ)あーあ。100円損した。
Evian約1本分損した〜

(じ)ほんとにごめん。

(塩田)おっ、じゅんじゃない?
久しぶり!

(じ)あっ、塩田じゃん!
久しぶりだね。


(塩)ね〜!高校の卒業式以来だから、8年ぶりぐらいだよね?
あ、彼女さんですか?


(ひ)え?あっそうです。

(じ)紹介するね!
ひなちゃん、この人は高校の演劇部で一緒だった塩田。
塩田、こちら僕の彼女のひなちゃん。


(ひ)初めまして。お世話になってます。


(塩)初めまして!
じゅんはこの辺に住んでるの?


(じ)うん。ここから10分ぐらいの所に。
塩田もこの辺?

(塩)いや、俺は東京よ!

(じ)へぇ〜、東京のどの辺?

(塩)赤羽!

(じ)へぇ〜、赤羽ね。

(ひ)じゅんくん、ちょっとこっち来て

(じ)うん。

(ひ)普通赤羽に住んでる人があんな自信満々に東京に住んでる!って言える?(小声)
赤羽って東京の端の端だよ?てかほぼ埼玉だよ?

(じ)うん。僕だったら言わないね。
でも、こういう奴なんだよ塩田は昔から。(小声)


(ひ)あと、「彼女かどうか」を聞くのって普通本人に聞かない?(小声)
彼女に直接彼女さんですか?とは聞かなくない?
違ったらどうすんのよ。

(じ)うん。僕だったら直接本人に聞くね。
でも、こういう奴なんだよ。(小声)

(塩)ん?2人で何話してるの?


(じ)いやいや、何でもないよ〜
今日は何の予定でここら辺に来たの?

(塩)今日はね、推しに会いに来たんだよ!

(じ)へぇ〜、塩田も推し活とかするんだね〜
推しってアイドルとか?

(塩)いや〜 占い師だよ〜

(ひ)じゅんくん、ちょっとこっち来て

(じ)うん。

(ひ)贔屓の占い師の事を推しって呼ぶの初めて聞いたよ?(小声)



(じ)そうだね。僕も初めて聞いた。
でも塩田は昔からこういう奴なんだよ。(小声)

(ひ)推しも、占い師に使われると思ってないからさぞビックリしてるよ?

(じ)うん。驚いてるだろうね。

(ひ)あと、ずっと思ってたんだけど贔屓の占い師って何?
占いなんて、占い師1人につき1回で良くない?なんで同じ人に何回も占って貰う必要があるの?

(じ)それは僕も思ってたけど、塩田関係無くなってるよ。

(塩)そう言えば、2人は同棲してるの?

(じ)うん。1年前位からね。

(塩)へぇ〜、彼女さんも?

(ひ)え? はい。

(塩)え?付き合ってる期間は何年位なの?

(じ)2年半ぐらいかな。

(塩)へぇ〜、彼女さんも?

(ひ)じゅんくん、ちょっと

(じ)はい。

(ひ)彼女さんも?って言う質問何?(小声)
彼女なんだから期間同じに決まってるじゃん。


(じ)そうだね。

(ひ)何で同棲の期間がじゅんくん1年で私だけ半年とかだと思ったのよ?
同棲って言葉理解してるの?あの人?
この人と話してると頭おかしくなる。

(じ)理解してると思うよ。
でも、塩田は昔からこういう奴なんだよ。

(ひ)こういう奴ってどういう奴なんだよ!
こういうの範囲が広すぎるわ!

(じ)でも、塩田はこういう奴なんだって。

(塩)俺も同棲中の彼女が居るんだよね。

(ひ)聞いてねぇよ。

(じ)ひなちゃん!心の声出ちゃってるよ!

(ひ)失敬。

(塩)え?

(じ)いやいや何でもないよ〜
へぇ〜同棲中の彼女がいるんだ〜
その子とは付き合ってどれ位なの?

(塩)一昨日付き合ったんだよね!

(じ)え!そうなんだ!おめでとう!
え?それでもう同棲してるの?

(塩)うん、昨日から。

(じ)へぇ〜、昨日から?
え?じゃあ塩田が元々彼女の住んでた家に転がり…
あっごめん。
元々彼女の住んでた家に一緒に住んでるとか、その逆とか?

(ひ)ナイス。

(じ)ひなちゃんいいから。

(塩)いや、一昨日付き合う事が決まって。
その場で住む家探して即日入居出来る物件見つけたんよ!
で、昨日からそこで同棲してるわけ!

(ひ)じゅんくん、ちょっと。

(塩)なに?

(ひ)お前じゃねぇーよ!

(じ)はい。

(ひ)気持ち悪い!
付き合ったその場で即日入居の物件探して同棲してる。
なんかめっちゃ気持ち悪い!!

(じ)うん。気持ち悪いね。

(ひ)そんな行動聞いた事ないわ!2人ともイカれてる!
よく分からないけどめっちゃ気持ち悪い!


(じ)うん。聞いたことないね。気持ち悪いね。

(ひ)言葉に上手く言い表せないけどなんかめっちゃ気持ち悪い!

(じ)うん。一杯吐き出していいよ。
気持ち悪いね。

(ひ)気持ち悪い!

(じ)うん。気持ち悪いね。
でも、昔からこういう奴なんだよ。

(ひ)だからどういう奴なんだよ!

(塩)そういや、じゅんは未だに俳優やってるんでしょ?他の演劇部の部員から聞いたよ〜
劇団とかに所属して劇やってんの?

(じ)いや、今はどこの劇団に所属しているって訳じゃないんだけど。
何人か仲良くして貰ってる演出家の人が居て舞台にはその人達に呼んで頂いたら出るって感じかな。
あとは映画とかのオーディション受けたりしているよ。全然受からないけどね。

(塩)へぇー、そういう感じで劇とかやってるんだ〜。
ん〜。あんまりこう言う事言いたくないんだけどさ。
年齢的にもさ、そろそろちゃんとしたというか違う仕事見つけた方が良いんじゃないの?

(じ)え?


(塩)ほら!彼女さんの為にもさ?
女の子は色々な事あるしさ?


(じ)それはそうだけど。

(塩)これもあんまり言いたくないけど、演劇部時代もそんなに目立った役で劇やってなかったじゃん?


(じ)まぁ。
そうだね。

(塩)卒業公演の時も、演目はじゅんがやりたいって持ってきた
ままごと?っていう劇団の〜
えっーと、あの…あれ!

(じ)劇団ままごとの「わが星」っていう戯曲だね。

(塩)そうそう!「わが星」!
その時も言っちゃ悪いけどあんまり良い役やらせて貰えて無かったじゃん?

(じ)うん。そうだね…。

(塩)こんな事あんまり言いたくないけど、ルックスとか才能とか含めてあんまり向いてなかったんじゃないかな?



(じ)え?

(塩)ほら!まだ全然色々出来る年齢だしさ!
人生やり直すなら今なんじゃない!?

(ひ)さっきからグチグチうっせぇな!!
才能とかルックスとかお前が勝手に向いてる向いてない決めんじゃねぇよ!


(塩)え?彼女さんどうしたの?落ち着いて。

(ひ)「落ち着いて。」じゃねぇよ!
お前は遊び程度の気持ちで演劇部に入ったんだろうけど、
じゅんくんは「人生捧げられるぐらい大好きな演劇」をやる為に入ってんだよ!
「わが星」という戯曲を持ってきた事に演劇が大好きって言う気持ちが凄く出てんじゃねぇかよ!
まずそっからお前とじゅんでは生きてる次元が違ぇんだよ!


(塩)だからちょっと落ち着きなよ。
じゅん!ちょっと落ち着かせてよ!

(ひ)演劇やドラマや映画が大好きで
その「大好きな世界」の住人になれる様に必死に頑張ってるんだからめちゃくちゃカッコいいじゃん!!
そこらのメンズアイドルやホストなんかより全然カッコいいんだよ!
だから「その気持ち」があるだけで向いてるんだよ!目指す資格があるんだよ!
ルックスや才能なんて一切関係ないんだよ!!

(塩)ちょっと待って。俺だって演劇本気でやってたし大好きだったよ?
こないだだって刀剣乱舞の舞台見に行ったし。

(ひ)演劇本気でやってたやつが「劇やってんの?」なんてアホな聞き方しねぇよ!タコ!
お遊戯会か!!
あと刀剣乱舞は演劇じゃねぇよ!


(じ)ひなちゃん!

(塩)いや、さっきも言ったけど俺は彼女さんの事も思って言ってるのよ?

(ひ)それについて私は一切迷惑してないし、
人生掛けて目指したい「大好きな世界」がある事を私は尊敬している。
そんなじゅんくんだから大好きなんだよ!
じゅんくんの思う存分やればいいし、私も人生を掛けて応援する。
だから大きなお世話なんだよ!タコ!
どっかいけ!!

(塩)なんなんだよ。久しぶりにじゅんと話したかっただけなのに。
じゃあな。また。

(ひ)二度と顔見せんな!タコ!


(塩)タコタコうるせぇよ!!


(ひ)行ったね。


(じ)ひなちゃんありがとう。


(ひ)ううん。全然良いよ。
そんな事よりあいつの言ってた言葉1つも気にしなくて良いからね。
あいつの汚い言葉がまだ耳に残ってたら
その言葉が反対の耳から出ていくぐらい
私がじゅんくんを褒めてあげるから。

(じ)ありがとう。でももう大丈夫だよ!


(ひ)そう?それなら良かった。
でも、私はじゅんくんの演劇やドラマに対する「大好きな気持ち」は本当に凄いと思う。
中学の頃からとんでもない数の作品を見てきているのを知っているから。
オーディションとかでも、その「大好きな気持ち」だけを見てくれて取ってくれたらいいのにね!


(じ)ありがとう。そうだね。


(ひ)あっ、そういう「大好きな気持ち」を見てくれるオーディションがあった時の為に練習しておこうか!


(じ)え?練習?


(ひ)うん!いつかあるかも知れないじゃん!


(じ)そうかな?
もう励まそうと頑張ってくれなくても大丈夫だよ?ひなちゃんのお陰で凄く元気になったから!


(ひ)いいからいいから!
はい!オーディション始めます!
お名前をお願いします!


(じ)え〜?やるの〜?
茨木じゅんです。よろしくお願い致します。

(ひ)貴方がこれまでに何本ぐらいの舞台を見てきたか。観劇遍歴を教えてください!


(じ)中学2年生の頃に大人計画さんの「まとまったお金の話」を見てから演劇が大好きになりまして、そこから1年に50~70本程見ています。
なので、750~800本くらいですかね…?


(ひ)え!そんなに!?凄いですね〜!!
それでは映画はこれまでにどれ位の本数見て来られたんですか〜?


(じ)そうですね。映画も中学入ったくらいから年に50本程見ていまして700本位ですかね…?


(ひ)映画もそんなに!?
本当に凄いですね!!
貴方は「大好きな気持ち」がとても強いのでオーディション合格です!


(じ)本当ですか!?
何もまだ演技してませんが僕で良いんですか!?

(ひ)はい!今回のオーディションでは「大好きな気持ち」が一番強い人を取ろうと決めてたんです!
なので貴方は見事合格です!

(じ)ありがとうございます!!

(ひ)これから本当にこういうオーディションがあったら良いのにね〜

(じ)そうだね笑 本当にありがとう。
凄く元気が出たし、僕にはとっても強い味方が居るなって改めて思えた。
これからもよろしく。

(ひ)いえいえ。これからも頑張ってね。
応援してるよ!

(じ)うん!

(ひ)あっ、OKストアの100円の件は許してないから。

(じ)本当にそれはごめんなさい!










僕はアオト イン ティラミスというバンドでギターボーカルをしています!
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