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本のこと|演じることとコミュニケーションの深い関係を知る2冊

演劇とコミュニケーションが繋がった瞬間

突然ですが、みなさん、「演じて」いますか?

私はというと、
幼稚園や小学校で全員参加の劇みたいなのはあったような気もするけど、
ドラマや映画を見たりすることはあってもほぼ記憶にないし、
そのあとは演劇部に入ろうと考えたこともなかったし…

自分自身が「演じる」ということには縁のない人生を送ってきました

…と思っていました

が…!たまたま手に取った2冊の本で、
演劇とコミュニケーションが深いかかわりがあることを知り
本当に本当に目からウロコだったとともに、
私の中で一気に「演じる」ということが存在感を増し、私にとってとても身近な、そしてとても重要なことになりました

わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

1冊は、平田オリザさん・著「わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か」
以前書いたnote「働くこと|「女だから扱いづらい」と言われて気がついたこと」でも少し取り上げました

平田オリザさんは、劇団「青年団」を率いる劇作家・演出家です
そして、大阪大学コミュニケーションデザインセンター特任教授を務められ、日本のコミュニケーション教育に大きく貢献されている方だそう

この本の中で平田オリザさんは、コミュニケーション教育にとって、演劇、あるいは演劇的な授業が重要な役割を持っているということ言っています

演劇は、常に他者を演じることができる。
実際の体験教育ほどの効果はないかもしれないが、異文化、他社への接触をフィクションの力を借りてシミュレート(疑似体験)することができる。
欧米において、異文化コミュニケーション教育の中核の一つに演劇が位置してきたのも、多くはこの点に依拠すると私は考えている。
科学哲学が専門の村上陽一郎先生は、人間をタマネギに例えている。タマネギは、どこからが皮でどこからがタマネギ本体ということはない。皮の総体がタマネギだ。
人間もまた、同じようなものではないか。本当の自分なんてない。私たちは、社会における様々な役割を演じ、その演じている役割の総体が自己を形成している。


ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

そしてもう一冊は、ブレイディみかこ さん・著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

この本は、英国で暮らすブレイディみかこさんのノンフィクション
息子さんが「元・底辺」とされる中学校に通い始めたことから物語が始まります
様々な人種の集まる中学校生活で日々勃発する事件を通して
ともに考え悩み乗り越えていく「親子の成長物語」です

この中でも、コミュニケーション教育における演劇の位置づけがこのように書かれています

英国の中学校教育には「ドラマ(演劇)」というれっきとした教科がある。(中略)日常的な生活の中での言葉を使った自己表現力、創造性、コミュニケーション能力を高めるための強化なのである。
英国政府が定めた幼児教育カリキュラムEYFSも「コミュニケーション&ランゲージ」という指導要領の中で、4歳の就学時までに到達すべき発育目標の一つに「言葉をつかって役柄や経験を再現できるようになる」というゴールを掲げていた。


自分も演じていたし、演じていいんだ

本当にたまたま手に取った、まったく別のジャンルの2冊の本から演劇とコミュニケーションということを考えさせられたと同時に、
自分自身がいかに演じて生きてきたか、ということを感じました

そこで、ふと思い当たったのが、「これは本当の自分ではない」という感覚について

例えば、営業という仕事をしていると、「極度の人見知り」という性格を発揮する間もなく、初めて会ったお客様とも話をする必要があります
そして実際、普通に話せてしまう
でも、「これは私の『本来の姿』ではない」、という感覚をどこかで持っていました

もっとさかのぼると、反抗期真っ盛りだったあのころ…笑
学校で友達とは楽しく話すのに、家に帰った瞬間に、ツンツンしなければならない(本当は「しなければならない」わけでは無いんだけど…そういう時代)

その切り替えがうまくいかなかったり、楽しく過ごす自分と不機嫌を通す自分のはざまで悩んだり

「様々な役割を演じること」を肯定できると、いろんな自分が居ていいと思えるし、むしろうまく「それぞれの役割を果たそうとしている」ととらえることができます

平田オリザさん、村上陽一郎さんの言葉をお借りすると、
初めて会った人とそれなりに話す自分も、人見知りの自分も、
友達と楽しく話していた自分も、不機嫌だった自分も含めた
すべての総体が「私」を形成しているということになります

そして『心理学の世界では一つの役割だけが重すぎるとバランスを欠いて精神に支障をきたす』ということも「わかりあえないことから」には書かれていました

これを知ると、ますます「いろんな自分を演じていこう」という気持ちになります

このnoteを書くのもまた、ひとつの自分

ぜひ、あわせて読んでいただきたい2冊です

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