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オートマティスム(自動記述)作文/其の一

オートマティスムとは

皆様にとってあまり馴染みがないかもしれない、オートマティスム。オートマティスムとは日本語で自動記述と呼ぶように、「ただひたすら浮かび上がってきた文字を羅列すること」である。オートマティスム行為の目的は、文章的な正しさ、理性による整頓を超え、人間の無意識世界を露呈させることである。無意識へのアプローチ手段の一つと言えるオートマティスムは、この無意識を発見したフロイトの精神分析に使用される「自由連想法」を参考にしていると一般的に言われている。簡単に説明すると、連想ゲームのように、とある単語から連想する単語を答え続けてもらうものである。これを患者は寝転んでリラックスした状態で行い、連続した単語の中から患者自身も気づかない、無意識下に抑圧されたトラウマを発見する手法である。(この手法において、露出したトラウマが本当に過去に体験したものであるかはそれほど重要でなく、患者の精神状態がそのトラウマによって説明され、解消につながること自体がこの手法の目指すところである。たとえそのトラウマが患者本人によって無意識に創造された嘘であったとしても、抑圧されていた状態から意識上に押し出してやることに意味がある。)これをアンドレ・ブルトンという詩人が芸術分野に応用し、後に彼は「シュルレアリスム」という芸術群を主導する一人に至る。彼のオートマティスムのやり方は次のようなものである。まずはゆっくりとしたスピードで浮かび上がったワードを書き記していき、段々とそのスピードを上げていく。そして最終的に物凄い速さでひたすら文字を羅列していくのである。この作業を彼は詩人の仲間と何時間も続け、人間の理性を抜け出した無意識の表出による創作を完成させようとしたのである。彼の書いたオートマティスム作品として有名なものに、『溶ける魚』がある。岩波文庫に『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』という題で販売されているので、気になる方はぜひ読んだ頂きたい。

このnoteの目的

そんな概要を持つオートマティスムを、芸術素人である私が挑戦してみようというのが、今回のnoteの目的である。まずはルールを決める。私は今のところブルトンのように何時間も続ける事ができるようなタフな精神性を持ち合わせていなので、無印良品に売っている「上質紙 スリムノート・無地A5スリム・ベージュ・40枚」の片側1ページを描き切るまでとする。書き直しを行わないため、筆記にはボールペンを使用する。漢字はアルファベットのように簡単に筆記できないので、ひらがな、カタカナで書いた文字を私自身の判断で後から漢字に直すことは良しとする。それ以外で、文中の文字を改変することは厳禁であり、基本的にひらがな・カタカナ→漢字への変換も最小限にする。書き間違いもそのままとする。

実際に書いてみた

それでは実際に書いてみたので、まずはその写真と、noteに清書したものをお見せする。

上、右にある文字ではない文字は手を動かす練習なので、特に意味はない。

あたまから足にかけて脾臓の向こう側からエイリアンが現れる。不奇未な物体の正体は最後の方にたくさんあって君が愛してくれた君がそっちがわに行ってしまっても君も最後に会ったことがないかもしれない。たとえとんびのように支離滅裂でグロテスクであってもそのようになれば良いと思うし、その方がきっと僕にとっても良いことなのだと思うのだ。実際に空を飛んでみて、たしかに体は重かったし、その方が私はいつもどおりでいられると思う。サイコパスはたとえ地味なことがあっても最後の言葉は出てこないのである。ひまわりのような気持ちを胸の扉の中に生えていて、これからどうしようかと僕の僕を見ている。カキツバタはたくさん足に生えていて少なくともその一体に影は落ちていないのである。彼らはどこまでもすなわち、期待していたり期待していなかったりしているのである。いつもどおりの日常をラストに向けて向かえうつその姿勢に感動して、いつも通り遊んでいるのである。

かなり特徴的な部分が現れる結果となった

所感

出来上がったものを読んでみると、中々面白かった。そして、初めてにしてはオートマティスムの目指すところに近づけたのではないかとも思う。しかしこの文章は「オートマティスム的文章」を目指そうとする私の理性が全体に蔓延っている可能性が限りなく高い。この文章が出来上がって、「無意識は目指すことしかできないもの」と実感した。
この文章の解釈は、このnoteを読んでくれた皆様にお任せする。この文章自体、私が工夫を凝らした積み木のような文章ではないから、私の解釈が答えになることはないが、しかしながらこの文章の制作者は私であって、読み手の解釈を制作者の解釈が侵食することを私は望まない。タブラ・ラサ状態での皆様の感想を、ぜひシェアしてもらえたら嬉しい。まあ、本質的にタブラ・ラサ状態の人間などこの世の中に存在しないと思いながら、今回の文章を終える。またオートマティスムはやるつもりなので、お楽しみに。


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