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140字では語りつくせぬ映画愛 番外編  映画の悪役40選~愛すべきワルども~前編

悪役ー。それは映画において無限に重要な要素であり、圧倒的な魅力を有する存在。悪役の力はすなわち主人公の動機に直結する。という持論を持っています。

悪役がカッコイイ映画ってそれだけで面白く感じるものです。小さい頃から悪役大好きなんです。「賢者の石」観て一番憧れたのはスネイプ、欲しいライトセーバーの色は赤、ごっこ遊びもウルトラセブンより宇宙人役。みんなそうだと思います。

↑ハリウッドで一番悪人面をしていると思う俳優、ウィレム・デフォー氏


というわけでここでいかに悪役が重要か、どんな因子が悪役を魅力的にするかなどを滔々と語ってもよいのですがさすがにそれは退屈なのでいっそ沖津にとって印象的な悪役をリストアップし、具体例と共に悪役の魅力に迫ろうと思います。(厳選した結果40人居た)ランキング形式じゃないよ。

それでは早速、「個人的に印象に残った悪役40選」スタートです。



No.1 オクタヴィアス博士『スパイダーマン2』

いわゆるマッドサイエンティスト枠の人。

画像だけで、特に説明いらないと思うこの人。見て見てこの背中から生える4本のアーム。どう見てもカッコイイでしょうよ。コイツを使って立ち上がった時のシルエットが最高

背景としても「本来は善人」「研究のために悪事」「序盤で奥さんが死ぬ」「ロングコート着用」「丸サングラス着用」など悪役にとって大切な要素をたくさん持っています。

なにより「終盤で我に返って主人公の代わりに死ぬ」という悪役としては非常に美味しい最期を迎えるどこまでも基本に忠実な悪役。

「悪」ではなく「悪役」。

↑アメリカの電車って椅子そうなってるんだって教えてくれたシーン



No.2 ラブレス博士『ワイルドワイルドウエスト』

評論家による映画の評価は地獄のように低い本作。沖津は大好きなんだけど「思い出補正」なのかな。19世紀、南北戦争直後のアメリカを舞台に国家の転覆を目論む南軍の残党をぶっ倒す爽快な一本。

マジメな話、悪役というのは「欠損」がひとつのキーになっている。片腕が義手であるとか片目を失って眼帯しているとか。フック船長の腕ヴォルデモートの鼻などを思い浮かべてもらうとわかりやすい。おそらく「本来あるはずのものが無い」という恐怖「人間性の欠如のメタファー」などの機能を果たしているのだろうと思う。

本作の悪役ラブレスはなんと下半身が丸ごと存在しない。車いすに上半身だけで行動する。これが何とも気味が悪く名優ケネス・ブラナーのいっやらしい表情と相まって一種のカリスマ性を持った悪役になっている。

行動の動機も「南北戦争で半身を失った復讐」という悪役として外れのないもの。一方頭のネジは外れ気味。なんかギルデロイロックハート先生に似ている



No.3 ジョン・ハモンド『ジュラシックパーク』

幾人もの人間を恐竜の胃袋にぶち込んだ悪夢のテーマパーク「ジュラシックパーク」を創り上げた諸悪の根源。

なーにが厄介って本人に悪気はなく、「JP」の建設を子供たちに夢と希望を与える正しい行動と信じて疑っていない点。

その無邪気さがどこまでも怖い、と分かったのは自分が大人になってからでした。そもそもこの人がいつまでも5歳児の様で、後から考えると冒頭から人が大切に取っておいたシャンパン勝手に飲んだり発掘現場にヘリで乗りつけたり身勝手さが目立つ。

「悪」と「悪役」は似て非なるもの。この人の、物語に置ける機能は「自然を、生命を自由にコントロールできると考える人類の傲慢」の象徴です。これはランチのシーンで見て取れます。ハモンド氏と対立するマルコム博士の「生命は人の予想を越えて進化し、生き延びようとする力を止めることはできない」という主張こそ原作者の主張そのもの、という構図です。

映画でも悪役としての描かれ方はしないものの、役割は悪役という形が印象的だったのでエントリー。物語後半で「またやり直せる」と発言し、一切反省しないのも人類の愚かさを表しているんでしょうか。



No.4 銀河皇帝パルパティーン『スターウォーズ シリーズ』

SF界の徳川家康

この人は共和国の一議員として大して目立った行動を取ることなく徐々に権力を強め、数十年にも渡る計画を見事完遂し「正当な」手順で銀河全体を掌握しました。その銀河規模の権力への執着は数居る悪役の中でもトップクラスでしょう。

この人は長きに渡って銀河で繰り広げられた共和国軍と分離主義者との「銀河内乱」において実は両軍のトップを務めていた、とんだ自作自演マン。とてつもない政治手腕とカリスマで戦争のすべてをコントロールした彼は彼の理想の帝国を築く野望の邪魔になるグループを、戦争を利用して排除し、国民が異変に気づいた時にはすでに銀河を統べていたのです。

何故そこまで権力にこだわるのか、人々に恐怖を与えるのか、その動機の根源は一切見えません。しかし壮大すぎる悪事と動機の不明瞭さは神話やおとぎ話、ファンタジーにおいて基本になる構図と言えます。悪人はさらなる独裁の高みを目指すのが当たり前と教えてくれるキャラクターです。

帝国を築いた後は・・・何かしたかな。部下をバンバン切り捨てることで有名で絶対部下から信用されないタイプ。最後はその辺があだとなった死に際のあっけなさも含めて非常にシンプルで王道の悪役って感じ。




No.5 佐藤浩史『ブラックレイン』

ハリウッド映画の悪役が日本人ってだけですごいわけだけど、本作の松田優作はどう考えても、主役のマイケル・ダグラスアンディ・ガルシアなどのスターを押さえて圧倒的な存在感を残しました。

高倉健マイケル・ダグラス主演、アンディ・ガルシア松田優作共演で監督はリドリー・スコットといういかにも話題になりそうな本作において、「日本のヤクザ」を演じきった松田優作の迫力は一番の見どころ

静的で知性のある空気感から一転、憎悪を全身から吹き出し暴力の限りを尽くすその狂気は圧巻ですよ。

松田優作がスタント一切使わずにバイクシーンやってのけたとか、監督が「佐藤は死ぬにはあまりに魅力的」という理由で死なない脚本に変えたとか、この映画の評判で松田優作にハリウッドからのオファーが殺到したとか、松田優作のあまりの迫力にアンディ・ガルシアが本気で殺されると錯覚したマイケル・ダグラスがセリフ間違えたとか、そのマイケル・ダグラスが「自分がハリウッドへの窓口になる」と言ったとか、この映画は優作逸話が尽きません。

しかし何より伝説的なのは撮影時点ですでに末期ガンに侵されていた松田優作がこの映画公開の直後に亡くなり、これが遺作になったことでしょうか。

もし生きていたら、世界的な俳優になったりしたんだろうか、という空想を禁じ得ません。




No.6 ヘンリー・エヴァンス『危険な遊び』

あれ、コイツ・・・?と思った方、大正解。そうだね。『ホームアローン』だね。あの『ホームアローン』で人気を博したマコーレ・カルキンが悪役を演じるのです。

正直『ホームアローン』よりいい味だしてるよキミ。その可愛らしい笑顔逆に怖ぇ!!

ママを失い親戚家族に預けられた主人公マーク君。従兄弟のヘンリーと仲良くなるもどうやら様子のおかしいヘンリー弟を殺したと嘯いたり、犬を殺したり、わざと人形を落として交通事故を起こしたり。挙句に妹を氷の張った池に沈めて殺そうとする

マーク君はヘンリーの母親をはじめとする周囲の大人たちに警告するが、逆に頭がおかしいと思われてしまう・・・。というお話。

幼い子供が生まれながらのサイコパスという設定が面白く、マコーレ・カルキンくんの無邪気な笑顔があまりに恐ろしい、非常に印象に残った「悪」でした。

ちなみに主人公はコイツ。

あれ、コイツ・・・?と思った方、大正解。そうだね。『ロードオブザリング』だね




No.7 ムスカ大佐『天空の城 ラピュタ』

お待たせ致しました!!!!ヨッ!!!ムスカ!!!

言わずと知れた稀代の悪役、ロムスカ・パロ・ウル・ラ○○タ氏の登場です(ネタバレ防止のため本名を一部伏せました)。

沖津が好きなムスカの台詞は「流行りの服は嫌いですか」「跪け、命乞いをしろ」です。ちなみに沖津はムスカの台詞の6割ほどをそらで言えるという特技を持っています。

ジブリファンの間で安定した人気を誇るのこの人、実は宮崎作品では相当珍しい存在なんです。

宮崎作品には「心底悪人」というキャラクターはほとんど出てこないことにお気づきでしょうか。

湯婆婆は性格は悪いですが言ってしまえばただの経営者ですし、『もののけ姫』のエボシ御前も高慢ではあるものの、そもそも迫害された人たちを受け入れ仕事を与える立派な人です。『ナウシカ』のクシャナ殿下も原作であの後味方になりますし、『紅の豚』の空賊の皆さんを「悪人」と思った人は「お洒落」について家で考た方がいいでしょう。『トトロ』と『魔女の宅急便』には悪役が出てきません。強いて言うならキキの依頼人であるおばあさんの「にしんのパイ」を「嫌い」と言ったクソ生意気な孫娘くらいのものです。

↑「にしんのパイの女の子」いっぺんひっぱたいてやろうか。

このように宮崎作品には主人公に敵対する存在はいるものの、終始一貫した「悪人」は滅多に出てこないのです。

そんな中ムスカ大佐はというと登場からお亡くなりになるまで「悪」そのもの。ついには「人がゴミ」発言まで飛び出すのです。そうした意味でも非常に印象深く、貴重な存在といえるワケです。

ちなみに宮崎駿の作品で一貫してワルいやつだったのは沖津の知る限りではムスカ大佐カリオストロ公爵神聖皇帝ナムリスのお三方くらいです。





No.8 アンジェリーク・ブシャール『ダークシャドウ』

いやもう、ほんとゴメンナサイ。映画自体はたいして面白くないんですが、エヴァ・グリーン演じる悪役ブシャールがメチャクチャ綺麗だったんで入れてしまったんです。なので細かい説明とか解説することが特にないんです。ただただその美しさが魅力というだけの悪役です。

ジョニー・デップなんちゅう髪型やねん・・・

動いてるとより綺麗だよねエヴァ・グリーン。

以上、ただただ綺麗な女優さんの紹介でした、すみませんでした。



No.9 T-1000『ターミネーター2』


主人公であるジョン・コナーの命をを執拗に付け狙う、未来のコンピュータによって現代に送り込まれた殺戮マシンT-1000型ターミネーターがエントリー。

画像で分かるように演じたロバート・パトリックの顔面があまりに殺人ロボットヅラで、ハマり役もいいところ。この無感情さ冷たさ無機物の様な雰囲気が見事に表れているいい悪役でした。

また、設定も斬新。こいつはただのロボットではなく「液体金属」で体が構成されており、いくら鉛玉をぶち込んでも粉々に吹き飛ばしてもあっという間に液状化し、寄り集まり再生してしまうのです。ワンピースの自然(ロギア)系悪魔の実みたいなもんですよ。

↑いくら弾が当たっても表面がグニャってなるだけ。わかってて撃ち続けるシュワちゃんの人工知能のスペックの低さが窺える。


つまり無敵。そこから来るしつこさ。終わったと見せかけて終わらない。ずっと怖い。逃げることを諦めたくなる恐怖がそこにあります。

ターミネーター1と2のすごい所は設定というか背景は壮大なのに、画面上に現れる「脅威」は常に一体のロボットだけで、なおかつその一体で十分に恐ろしく映画一本分話も画も持つという所でしょう。



No.10 キャプテン・アメリカ『シビルウォー キャプテン・アメリカ』

アメリカ至上主義、白人至上主義の権化。世界の平和はアメリカによって守られていると本気で信じてるタイプ

これまで幾度となく、戦うたびに人命にせよ建造物にせよ経済にせよ甚大な被害をもたらしてきた迷惑ヒーローチーム「アベンジャーズ」は国連から指揮下に入れと命令され、世界の何百という国がそれに調印。アイアンマンはチームを安全に運営するためにもこれを受け入れるしかないと肚を決める。

うん、とても合理的だし、いいことだ。ところがどっこいキャプテン・アメリカは「自由に戦えなくなる。初動が遅れる。」から調印しないそうですよ。おいおいおい。大体「世界中の危機」なのになんでお前の一存で勝手に戦ってるんだよ。しかも外国で。それがおかしな話だから国連の指揮下に入れって言ってんのに・・・。

そんなこんなで世界と足並みをそろえようとするアイアンマンVS独自路線のキャプテン・アメリカの戦争になるのですが、さすがハリウッド映画。終始キャプテン・アメリカが正しいという形で話が進む。みんなキャプテン・アメリカ側につくわけですよ最終的に。

もーー納得がいかん。映画自体は面白いのに観てる間ずっと「アイアンマンが正しいやろ・・・」と思ってしまってモヤモヤ。民間に被害が出たら誰が補償すんだよ、アイアンマンだろ、とか。世界中がお前の活動がおかしいって言ってんだろ、お前は世界の為に戦ってんじゃねえのかよ、とか。

ヒーロー同士が闘う映画には珍しく、きちんとケンカ別れするからそれはスッキリしたけど。

とにかくエゴむき出しのキャプテン・アメリカがどう考えても悪い、そんな映画だった。

聞くところによるとヨーロッパではタイトルから「キャプテン・アメリカ」の部分がカットされて宣伝&公開されたとか・・・。



とりあえず10人紹介してみました。いかがだったでしょうか。実はこの記事は3回に分けて書こうと思っています(長い)。しかし全部で40人も紹介したいのに一回目で10人しか書けてないって・・・。なんか「水曜どうでしょう」の旅みたいですね。

というわけで次回お楽しみに。








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