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軽度知的障害者の犯罪のことがわかる本1選

★はじめに

軽度知的障害者で思春期過ぎたあたりから問題行動が目立ち始めて、何度も補導や逮捕されて困ってるというご家族の方がいらっしゃると思います。

「なんでこんなこともわからないんだろう」とか「何回注意しても叱っても無駄だな」とか「そんなことも理解できないのか…」などと、振り回され、失望してこられたと思います。

で、以前、軽度知的障害者が窃盗を止められないという相談を受けて記事を書きましたが、相変わらず似た相談が尽きません。

(過去の記事⇩)

なので、今回は「犯罪を繰り返す軽度知的障害者の支援に役立つ1冊」を紹介し、本著の中で、僕がこれまでの経験に照らし合わせて大切だと思ったことを感想を含めてお伝えしようと思います。

★軽度知的障害者の犯罪のことがわかる本

過去の記事でも紹介していますが、改めて紹介します。⇩

宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)

実際に犯罪を犯した後に鑑別所で障害が発覚し、医療少年院に送られた後に、どうやって更生へ向けてアプローチしているのかが書かれていたりして、ご家庭でも参考になる部分が多いと思います。

なぜ犯罪を繰り返すのか?彼らは実はこんなことすらできないんだ!など、この本を読めば色んな発見と気づきが得られます。

読書が苦手という方は、著者のお兄さんが本著をわかりやすく解説した動画があったので、そちらをご覧ください。【超オススメ!】

https://www.youtube.com/watch?v=DXR1fkJI7zQ&t=1291s

★感想&大事なこと

彼らは、これをやったらどうなるんだろう?と後先を考えるのが苦手です。

そんな彼らの更生にとって必要なのは、2つ。「自己への気づき」と「自己評価の向上」だそうです。長いですが、大事なところ抜粋します。

人が不適切なところを何とか直したいと考えるときは、「適切な自己評価」がスタートとなります。行動変容には、まず悪いことをしてしまう現実の自分に気づくこと、そして自己洞察や葛藤を持つことが必要です。適切な自己評価ができるからこそ、“悪いことをする自分”に気づき、“また悪いことをしやってしまった。自分って何てダメな奴なんだろう”いつまでもこんなことをしていられない。もっといい人になりたい”などと自己洞察・自己内省が行えるのです。そして、理想と現実の間で揺れ動きながらも、自分の中に「正しい規範」を作り、それを参照しながら“今度から頑張ろう”と努力し、理想の自分に近づいていくのです。そのためにはやはり、自己を適切に評価できる力、つまり“自分はどんな人間なのか”を理解できることが大前提なのです。

『ケーキの切れない非行少年たち』p150より

要するに、自分で気づいて自分で立ち上がっていくことが大事で、気づけるようなサポートをするのが、周りにいる人間に必要なことなんだと、僕は解釈しました。

で、賢い先生や現場の人たちが日々研究や検証を重ねて下さっていて、いろんなところで成果も出ているという事実があります。

だから、この子には何を言ってもどうやっても無駄だと諦めてはいけない。

つまり、“希望を捨ててはいけない”ということです。これが僕が一番伝えたいことです。

そして支援者としては、ただ褒めたり叱ったりするのではなく、普段から本人としっかり向き合って信頼関係を築き、それをベースに褒めたり叱ったりがあれば、「この人が言うんだからそうなんだろうなあ」と彼らが腑に落としやすくなると思います。

★あとがきに変えて

余談ですが、この本を読んで思い出す利用さんがいます。

Aさんという40代男性です。彼は窃盗容疑で捕まった後に軽度知的障害がわかり釈放後にそのままグループホームに入所してこられました。

ほんとにボーダーという感じで、普通に会話していても障害者だとはまずわからないし、建築関係の現場仕事やトラック運転手の仕事をしてきていて、ある程度社会性もありました。

とてもきれい好きで暇さえあれば掃除をして隅々までピカピカにし、そして、かわいいものが昔から好きで、動物のぬいぐるみやキティちゃんの置物などで部屋中が満たされキラキラしていました。

Aさんが逮捕されたきっかけは、川原に女の子用の手提げカバンが置いてあったのを盗んだことです。

ただ、ここで一般的な窃盗とは違う点があります。

彼は、カバンの中に入っていた財布とかゲーム機など高価なものには一切目もくれず、中身を全て捨ててしまい、かわいいキャラクターがデザインされたカバンだけを持ち去りました。で、以前にも似たようなことがあったため、指紋から彼の犯行が発覚しました。

グループホームでの様子を思い出すと、他の利用者さんとふざけ合ってるときに、頭を叩いたりするんですが、その時かなり強く叩いていて、力加減がわからない人なんだなぁと思ってましたが、その辺もこの本で腑に落ちました。


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