おかんが学生時代モテてたとかいう、クソどうでもいい話
久しぶりに実家に帰ったときのこと。
「ただいま~久しぶり」
玄関をあけると、愛犬のタロがしっぽを振って出迎えてくれた。一通りなでまくり、リビングへと向かった。
台所のカウンターから、おかんが顔を出した。
「あら、お帰り!」
俺はカウンターの椅子に腰を掛け、一息つきながら、コーヒーを飲んだ。
すると洗い物をしているおかんが、
「すーきよ~きょお~まで、あ~ただーれよーり、あいうぃるふぉろーゆーあなーたの生き方が~す~き~」
と、赤いスイートピーを熱唱し始めた……
寡黙なおとんは奥でタバコを吸いながら、眉間にシワを寄せている。
「お母さんねぇ、学生時代モテたのよねぇ」
俺も眉間にシワを寄せてコーヒーをすすった。
「お母さんが高校生のころ、すごくモテてねぇ、柔道部のたくやと、バスケ部のひできがケンカをしたことがあったのよ~、私をめぐって……」
おかんは遠い目をして語り始めた。
俺とおとんは、眉間にシワを寄せたまま、どうでもいい話が始まることを覚悟した。
おかんは語る……
「私はどっちとも仲が良かったのよねぇ…でも、男は女を欲する生き物……2人は校庭で殴り合いのケンカを始めたの……」
なんでこんなババァのために……
俺はコーヒーをすすった。
「それを親友のめぐみが教室まで走って教えにきてくれたの、お母さんびっくりよ……慌てて校庭まで行ったわ!」
まだ続くのか……おとんは眉間にシワを寄せたまま新聞を読み始めた……
「校庭にはギャラリーがたくさんいたわ。その中心で2人はボロボロの破れた雑巾のようになって、ケンカしてたわ」
なんてひどい例えしとんねん……
「見てられなかった……雑巾になっていく2人を……私は自分にできることを必死に考えたわ……」
例え酷いけど、何を考えたんだろう……?
おとんもチラッとこっちを見ている。
俺もおとんも眉間のシワが少し弱まった。
するとおかんは急に
「ケンカをやめて~2人をとめて~わたしの~ため~に~あらそわ~ないで~も~こ~れ~いーーじょケンカをやめて~ふたりを~」
と歌い始めた。
俺とおとんの眉間に一瞬でシワが寄った。
おかんは言う
「二人のために歌ったの、校庭で。」
なっ!!俺はビビった。
おとんもビックリして「はぁっ!?」って顔をしている。
「お母さんモテてたからアンコールされたわ………だからまた、ケンカを~やめて~ふた………」
俺は舌打ちをして、実家をあとにした。
終わり
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