見出し画像

言語学版 ガリレオ ch. 10

第10章 とどまれない言葉


今回も 『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談』をとりあげる。
ちなみに、帯はこんな ↓ 感じ。

鴻上本帯

いろんな相談の中に「学校の校則」に関するものがある。

校則問題 (鴻上本)

この相談に対して、校則は「手段」であるはずなのに、校則を守ることが「目的」となってしまっていると指摘している。

その上で、「昔からある、与えられたシステムを続けよう」という「所与性」に着目しいている。

校則問題回答(鴻上本)_LI

この「所与性」は言葉にもあてはまる

たとえば、犬を「イヌ」と言うことを引き継がないと、そもそもコミュニケーションが成り立たなくなる。

つまり、「慣用的に決まっていること」をそのまま続けることが、コミュニケーションにおいては大事になる。
(『生成語彙意味論』 小野尚之 著より)

慣用性 (小野本)

しかし、一方で言葉は変わっていくものでもある

言葉の「決まり事」は誰かがトップダウン的に決めるものではなく、自然発生的に決まっていくものであ。

つまり、原則は自由に使っていいのである。

そのため、「春日語」のようなものも生まれる。

春日語

「人吉温泉郷」を「よろしく」という意味で使ってもいい。
ただ、狭い範囲でしか通じないし、定着する可能性もほとんどないだろう。

このように、「新しい」言葉は数多く生まれているが、市民権を得て残っていくものはほとんどない

実際、元SMAPの草薙くん(だけ)が使っている「冗談ハンバーグ」はまったく定着していない。

冗談ハンバーグ

定着するかどうかはおいておいて、言葉には新たな語を生み出す「創造性」があることはたしかである。

言葉は変わらないでいようとする「慣用性」と変わろうとする「創造性」の2つの顔をもっているのである。

慣用性と創造性(小野本)

言葉はとどまれない。

そして、これは英語も同じである。

たとえば、英語の進行形は基本的にrun (走る)やread (読む)などの行為を表すが、know (知っている)やlove (愛している)などの状態は表さない
(『英文法キャラ図鑑』 関正生 著より)

進行形 (キャラ図鑑)

そのため、loveを進行形にしたマックのキャッチコピーには「論争」が巻き起こった

マック i'm lovin' it

どのように説明されるにしても、進行形の用法が新たに拡大しているといえる。(『時制と相』 田中江扶, 本田謙介ほか 著より)

進行形と状態動詞

そもそも、言葉の「目的」とは何だろう。

言葉はコミュケーションのための単なる「手段」なのだろうか?

「さっぱりわからない」

それゆえ、「実に面白い」

Season 1 終了

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?