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【初心者向け】山歩きで気をつけること・六甲山編

コロナ禍で遠出できないということで、近場の山に行こうという人が増えているようで、それに伴って山での遭難が増えています。神戸在住の方であれば六甲山が一番身近な山になると思います。街からも近いし、標高も1000mいかない931m(六甲最高峰地点)で、摩耶山でも702mと、分類としては「低山(標高1000m前後の低めの山)」で、十分日帰りできて気軽にチャレンジ出来そうな山なんですが、その気軽さが逆にトラブルを引き起こす元になっています。今回は私が見聞きした、あるいは体験したことから起きうる状況とトラブルを書いて見ましたので、もし山歩きをこれから始めようとしている方はざっと目を通していただいて危険回避の役に立てて頂ければなと思います。

◆六甲山とは 

まず六甲山について地図でその全体図を確認してみましょう。

Google MAPにおける六甲山系の全体になります。

水色の線で囲った部分が六甲山系で、南西から北東に斜めに傾斜するように鎮座しております。その山域は大部分が神戸市にあり、東の一部分を芦屋市、西宮市、宝塚市に跨っている、長さがおよそ50km、奥行きおよそ14kmほどの横長な山です。「六甲山系」と言ったのは、厳密には「六甲山」という名前の山はなくて、この横長の山の塊を「六甲山」とまとめて呼んでいるためです。この山域の最も高いポイント(頂上)が「六甲山最高峰」と呼ばれています。

その最もポピュラーなコースで黄色い線で示したあたりの、芦屋ロックガーデンから六甲最高峰を通り有馬温泉に抜けるコースを歩くとおおよそ12km〜14kmほどあり、通る道によって距離は変わります。 

画像で見てもらうとすごく街と山の距離が近いのがわかると思うのですが、「街から近い」という特性がトラブルを起こしやすいポイントになります。

◆そんな装備で大丈夫? 

六甲山は街と山が近いということで、街歩きの格好でふらっと山に入ってしまう人が多いです。私が見たケースでは、バックパックもライトも持たずに普通に18時くらいに六甲最高峰付近で途方に暮れている3人組を見つけたことがありました。下山できるなら有馬温泉でもいいということで、3人連れて降りましたが、深い山ではないことでろくに装備を整えないで入ってしまい、道迷いや怪我に遭ってしまうケースがあります。

近くの山だからと言って油断しないで、必要な服装、持ち物はちゃんと用意して山に入りましょう。

◆すぐに帰れるから大丈夫?

これも「街からも近い」ということに起因することで、何かあっても「すぐに帰れる」と思ってしまいがちです。実際に筆者も芦屋駅からスタートして六甲最高峰を通り有馬温泉に降りるコースを取っても、大体4〜5時間ほどあれば抜けてしまえるくらいで、よっぽどゆっくり歩かなければ一日中山の中ということはありません。とは言っても、山歩きは基本的に「午前中に行動しはじめて15時16時頃には下山完了している」くらいの動き方がベストと言われています。慣れていない人で「すぐに帰れる」という油断でお昼過ぎてから行動しはじめて、思いの外ゆっくりしすぎて下山時にあたりが暗くなってしまって、暗いせいで道がわからなくなる、ということが起きやすいのです。

あまり山歩きをしない人は、自分がどのくらいの距離をどのくらいのペースで歩けるかの感覚を持っていないので、時間が読めないというトラブルを起こしやすい状態にあります。山と高原地図などの登山地図にはおよそ何分で歩けるかの目安タイムが書いていますので、それプラス30分〜1時間くらいはかかると考えた方がいいと思います。

山の中は基本的に街灯はありません。遅くなる可能性を見越してちゃんとヘッドランプの持参が必要です。 

◆本当にこの道で合ってるの?  

六甲山は東西に広い山塊(さんかい・山の塊)なので、道が無数に存在します。
「山と高原地図49・2021 六甲摩耶 須磨アルプス」の一部を抜粋して見てみましょう。

芦屋ロックガーデンの付近ですけども、ご覧のようにたくさんの道が赤い実線で記されているのがわかります。実はこれだけコースが書いてあっても全ての道が書いてあるわけではなくて、地元の人や玄人しか知らない別れ道などが、地図に書かれている以上に存在します。そういう道というのは初心者では難易度が高かったり、あるいは人があまり通らないが故に道が不明瞭で迷いやすい可能性があります。

道迷いに遭う人は、自分がどの道を通るかを事前に確認しない、歩いている最中も地図を確認しないなど、現在地の把握を疎かにする傾向があるので、常に自分のいる位置、通っている道を確かめるようにするのが重要です。 

◆帰り道には御用心。。。 

2項目目の「すぐに帰れるから大丈夫?」でも触れましたが、山に慣れていない人だと、街と山が近いが故に、時間を読み誤って下山が遅くなってしまうことが起きがちです。遅くなるとどうなるかというと、街灯がないために暗くて道が判別しづらくなってしまうということになります。そうなるとどうなるかというと、入ってはいけない道に迷い込みやすくなる、すなわち「道迷い」が起きやすくなります。ヘッドランプかそれに類する道具を用意しておくことと、あらかじめ通る道を把握しておくことで回避できるトラブルですが、勢いで入ってしまうとそういう準備も乏しいので、道に迷ってしまう危険性が高まります。 
 
また上りで体力を消耗している分、降りる時はその分の疲れが出てくるので、とても怪我しやすいです。登山で起きる怪我はおおよそ下山時に起きると言われます。時間の配分を読めなくて、下山時は日暮れになってしまうと、早く下山したくて焦りが生まれます。また、暗くなると自分の進行方向の目についた道に入り込んでしまいやすく、本来通るべき道を見落とします。そうやって「暗さ・焦り・疲れ」が道迷いや怪我を引き起こします。

登り始める前の時点で自分の体力・時間的余裕を見たコース選びをしておくことが重要です。

◆最後に。 

山の道というのは頂上に向かって道がついている性質上、登れば登るほど道が収束して枝分かれが少なくなっていきますが、逆に頂上から麓に降りていくに従って、上りとは逆にどんどん枝分かれして増えていきます。下山時に道に迷いやすい理由の一つですが、防ぐにはやっぱり事前に地図で道の確認、歩いている最中でも現在位置の確認がとても重要です。また今回「六甲山編」として書きましたが、六甲山だけではなくて、六甲山含む「低山」であればどこでも起きやすい油断ですので、山歩きにこれからチャレンジする方は、近くの山だから、低い山だからと油断せずに、何卒下準備をしっかりして楽しい山歩きを❗️


参考文献
昭文社「2021 山と高原地図 49 六甲・摩耶 須磨アルプス」 調査執筆 浅野晴良

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