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山歩き、何を持っていく❓六甲山編

コロナ禍であまり遠出できない昨今、地元にある手頃な山に登るというアクティビティが注目されていますが、前回の「【初心者向け】山歩きで気をつけること・六甲山編 (https://note.com/yousko_2nd/n/nf4a8afc4112d)」で山歩き初めての人が陥りやすい危険を解説してみました。今回はそういうことにならないように、ということも含めて、「山歩き・何を持っていく❓・六甲編」と題して、六甲山に限らず、低山の山歩きで最低限、どんな服装で何を持っていくといいのかをご説明しようと思います。 


◆服装 

山歩きは基本的に「運動・スポーツ」です。 

ですので、汗をかいてもすぐに乾く生地の服であるのが重要です。 

具体的には綿ではなく化学繊維(ナイロン、ポリエステルなど)の生地で作られた衣服が良いでしょう。 綿(コットン)の生地のものは選んではいけません。
 

ナイロン・ポリウレタンの生地


ポリエステルの生地

 
綿がなぜダメかというと、汗を吸って保水してしまいなかなか乾かないからです。汗を吸ってなかなか乾かないと、ずっと服が水で湿って冷たいことになり、不快であると同時に身体がずっと冷えます。冷えると体力が徐々に奪われて、、、という悪循環の元になります。化学繊維系の生地なら汗で濡れてもすぐに乾き、不快感を低減してくれます。

そしてまさかと思われるでしょうが、夏でも上は半袖ではなくロングスリーブ、下はハーフパンツではなくて丈の長いパンツを選んでください。理由は「紫外線を防ぐため」「虫除け」「怪我防止」のためです。登り始めは涼しい森の中でも、登っていくうちに森が開けて日差しが強くあたる状態になったりします。帽子も被り、可能な限り肌を隠しておいた方が良いでしょう。

それから山の中は、都会にはいない虫がいます。なかでもマダニなどは噛まれると病気をもらってしまう可能性があり、なるべく肌を露出しないこと、なるべく服の中に入られないよう隙間をなくすことが重要になってきます。半袖などで肌が出ていると、突き出した枝・登る際の岩肌などで擦りむいたりします。長い袖の服は防御の役割を果たしてくれます。 

そして靴。山の中は場所によっては沢と言って、水が流れる場所を渡る事があります。普通の靴だと濡れて湿ってとても歩きづらくなってしまいますし、濡れると滑って危険です。「GORE-TEX」と呼ばれ透湿防水素材が使われた、山歩きに向いた靴底がつけられたハイキングシューズが適しています。

◆地図・コンパス

迷わないための最低限の持ち物といえばやはり地図・コンパスです。 
 

山と高原地図・コンパス

 

地図は移動している最中に逐一見るのも重要ですが、行く前に自分が通る道をあらかじめチェックして、どこをどう通るのかをイメージしておくべきです。 

昭文社「山と高原地図」などの登山地図であれば、あるポイントからあるポイントまで、上りと下りのおよその所要時間が書いてあります。自分が通る予定の道の所要時間を全部足してみて、行動時間の総数を確認しておけば、何時ごろに出発すればいいかがわかります。

コンパスは自分が今どっちを向いているのかがハッキリわかるので、地図と合わせるとより確実に自分が今いるだろう場所を調べる事ができます。

そして、地図・コンパスを持った上で絶対持っておいてほしいのがスマートフォンです。

スマートフォンにはGPSがついていて、そのGPSと連動した登山用のアプリ(YAMAP・ヤマレコなど)を動かしておけば、自分の現在位置をかなり正確に知る事ができます。遭難することはかなり高い確率で減らせます。

ちなみにアプリがあれば「地図とコンパス要らないよね」と思わないでください。アナログな道具はスマートフォンのバッテリーが切れたとしても使えるという最大の利点があります。

◆ヘッドランプ 

思いつきでスッと山に入ってしまう人がまず持っていないかないだろうアイテムだと思います。実は結構重要なアイテムで、山の中は基本的に街灯がありません。日が暮れると何か照明を持っていないと道が全く見えません。
 

ヘッドランプ


点灯状態

 

山の中は高い樹に覆われているため、都会よりも日暮れによる影響で暗くなるのがとても早いです。

夏なら16時~17時の時点でその暗さが体感できると思います。 

「別にライトなんかなくても、スマートフォンのライトがあればいいじゃないか」と思うかもしれません。明るさを示す単位に「lm(ルーメン)」というのがありますが、スマートフォンのライトは50lm程度(正確な数字が出てきませんでしたが、山の中で使うにはかなり暗い)です。その明るさで真っ暗な山道を歩くのは困難です。 
そしてスマートフォンはいざというときの連絡手段でもあるので、ライトでいたずらにバッテリーを消耗してしまうと電話として使えなくなってしまいます。できるだけ温存するためにもライトの持参は欠かせません。大体登山で使われるライトは100lm〜400lm程度の明るさのランプがあれば事足りると思います。ぜひ用意しておきましょう。

◆携行食

携行食とは要するに、飲み物食べ物含む「食料」のことです。 
 

ナルゲンボトル 1L

 
 
これもフラっと山に入る人はあまり意識しない持ち物なのですが、山歩きは平地を歩くのに比べて想像以上に体力を消耗し、お腹が空きます。そして歩いていれば汗もかき、のども乾きます。ですが残念ながら、山の中は自動販売機もコンビニもありません。六甲山は例外的に、ドライブウェイに近い位置にまだ自販機は点在していますが、上る場所によってあったりなかったりします。

山の中では、自分で用意して持っていかない限りは欲しいものは手に入りません。 

食べ物はどのくらい歩いてどこまで登るかによりますが、菓子パン2〜3個、バナナ2本とか、最低そのくらいがいいでしょう。
おにぎりも良さそうですが、夏ならいいかもしれないですが、冬だと寒くて固くなってしまって、食べても冷えのもとになり得るので、用心が必要です。

飲み物なんですが、水、お茶、スポーツドリンクがいいでしょう。コーヒー紅茶(お茶も?)はカフェインが含まれていて利尿作用があるために、補給した水分が汗以外で出ていってしまいやすいので、水分としてはカウントしないでください。どうしても飲みたければ、水分とは別に持っていきましょう。(そのかわり重くなりますが。。。)


詳しい説明は省きますが、


持っていく水の量(ml)=5g × 自分の体重(kg) × 時間(行動予定時間) - 20 × 自分の体重

とざっくり覚えておいてください。   

詳しい説明が知りたい方は「登山の運動生理学百科(山本正嘉 著 東京新聞出版局)(※1)」という書籍をご参照ください。

ちなみに私なら、今の時期でしたら、汗っかきで喉の乾きやすいため、最低でも1L(湯を沸かすなど調理をするなら1.5L)の水と、それとは別に氷だけ入れた水筒を持参します。一度山の中に入ると、5〜6時間は山歩きする方です。自分の身体に合わせた量を持参してください。

◆最後に

これから山に入る人のどれくらいがちゃんと調べて入ってくれるかはなかなか難しいところですが、触りとして読んでもらうために詳しく書きすぎないことを目指しました。

いくつか項目を書いたんですが一番持っていて欲しいのは

このまま行ったら危ないかもしれないって感じられる「危機感」「センサー」

だと思います。 

今まで書いた持っていって欲しいものは、「どうやったらちゃんと帰って来れるか」を考えれば思いつくものばかりなんですね。 

散歩がてらふらっと入ってしまうと、何かあった特にちゃんと帰って来れないかもしれない準備状態で、ものすごく危険なんです。

それは用意にとどまらず、「ほんとうにこの道いっても大丈夫か」とか、「今持ってる装備品でこの道は行けるのかどうか」を現地でも考えて「安全な方を行こう」とか、「時間が遅くなったから、計画より簡単で安全な道を選ぼう」という判断ができるようになります。

そうすると計画の段階で、「この道行くならこのくらいの時間、これくらいの水分、携行食があれば大丈夫かな」っていうのが見えてきます。

山歩きは「ちゃんと安全に帰って来れる」ゴールなので、それを覚えておいて欲しいなと思います。


一番いいのは山歩きの経験がある人が、そうでない人と一緒に行ってちゃんと教えてあげるのが一番いいんですが、自分にはなかなかそういう機会もなく、説明しやすいようにこちらに記しておきます。 

今後画像つけたり文を整理したりと、もう少し整えようかと思います。


(※1) 現在こちらの本は、「登山の運動生理学とトレーニング学 (著者 出版社同じ)」というタイトルで増補版が出ておりますが、筆者の方が綿密な調査をもとになされた記述であることから、改訂前のものも現在でも参考文献として問題ないと考えて、引用させていただきました。

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