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文学の落下点┊ novel

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創作小説
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#短編

『人と月に蓋をして』

『人と月に蓋をして』

「“よる”や」
____強く強く願っている。私達は、永遠だと。

世界が眠りについた27時、未だギラギラと陽射しがやまない。私は急いで自転車で十字路への坂道を勢い良く駆け下りた。
「邑!」
「あ、那津」
邑は私を見るなり嬉しそうに自転車のカゴから黒い布を出して旗のように振る。準備は万全みたいだ。私達にとって睡眠すら削った秘密の時間は、普通を忘れてしまったこの世界に唯一相反していて特別だった。
「暑

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