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今週の【ほぼ百字小説】2021年7月19日~25日

 ということで、今週もやります。よろしくおつきあいをお願いします。【ほぼ百字小説】をひとつツイートすると、それについてひとつ書きます。100円で一週間分読めます。最後に全部を通して朗読して音声ファイルを貼ります。まあ道端でやってるライブに投げ銭でもしている感じで100円投げていただけるとなかなか励みになります。


7月19日(月)

【ほぼ百字小説】(3237) 空き地の隅が小さな畑になって、西瓜が実ったから西瓜畑だとついこのあいだわかった。夕方通りかかるとそんな西瓜のひとつが光を放っていて、見覚えのある光。東の空には真っ二つにした西瓜の断面みたいな赤い月が。

 【ほぼ百字小説】にはお馴染みの空き地もの。だから、風景ものですね。そして、西瓜もの。私はけっこう西瓜を小説に使います。『空獏』なんかは、ほとんど西瓜小説と言っていいくらいです。西瓜が好物、というわけではなくて、物体としての西瓜が好きなんですね。かなり変なものだと思います。やたらと大きい、人間の頭に似てる、まんまる、縞模様、切ったら赤くて黒い点々、しかも果物っぽいのに果物じゃない。いろいろ盛り過ぎです。生ってる様子も地面にどてっと転がっているし。ということで、そういう風景を書きました。夕方の空とそれが妙なシンクロをしてたりするのは、ちょっと稲垣足穂的シンクロニシティみたいなことをやりたかったのかな。まあふつうに夕方のまだ光の弱い満月が西瓜の切り口に見えた、というだけかもしれません。

 それから、うちの近所の空き地、つまり【ほぼ百字小説】に出てくるこの空き地では、月がよく見えるんですね。月と言えば空き地、ということになります。そういうのをひとつ。

【ほぼ百字小説】(2869) 月が住んでいる家がある。空き地の向こうにある家で、一階の窓か二階の窓のカーテン越しに月の色のぼわんとした光が見える。でも空に月があるときには見当たらないのだ。いつもそう。月が住んでいる家なのだと思う。

 これはもう完全に稲垣足穂的なあれですね。

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