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いまさらですが、『いだてん~東京オリンピック噺~』を振り返る リレーしていたものとは?

大河ドラマ見ています?

記憶にある初大河は『秀吉』。調べたら1996年(マジか・・)
視聴者歴が、いつのまにやら結構長い。

低視聴率とか色々言われていたが、個人的に断トツNo1は『いだてん』。

『いだてん』は主人公が二人。
一人目は1912年のストックホルムオリンピックに日本人として初めて出場した、マラソン選手の金栗四三(中村勘九郎)。二人目は1964年のオリンピックを東京に呼び込んだ男、田畑政治(阿部サダヲ)。2人がリレー方式でオリンピックとスポーツを主軸に明治、大正、昭和の激動の時代を描く。

噺家・古今亭志ん生(1964年前後をビートたけし、若かりし頃を森山未来)が、ドラマの語りもする。人生の前半からスタートする物語と後半の戦後復興の物語を行き来する構成だ。登場人物同士が人生のどこかで絶妙に絡まりあい、影響し合い、最後に張り巡らされた伏線がきちんと回収される。絶妙!!

この時代をスポーツだけで語ることはできない。

当時の優秀な人たちは留学して、日本の後進性を目の当たりにする。Far EASTと馬鹿にされていた日本。体格的にも、国力的にも西欧諸国に圧倒的に劣っていた日本。それをなんとか追いつけ追いこせと奮闘する。

国内でも、女性に対する偏見だらけ。「女子スポーツってなんですか?」、「足を出すな、みっともない」とか。女子は結婚して子供を産むのが幸せという価値観。押し付けられているのではなく、それが当然というもはや空気のような浸透ぶり。

そして、ロサンゼルスオリンピックが行われた1932年。水泳では400メートル自由形以外日本が金メダルを独占する。この時代、ようやく関東大震災から復興してきたと思ったら、満州事変、五・一五事件、戦争の足音が聞こえる。そして現地では在日日本人が白人から迫害されている様を目の当たりにする。

そしてそして、物語は国際連盟脱退、二・二六事件、第二次世界大戦へと突き進み、学徒出陣、東京大空襲、終戦、満州からの撤退・・と庶民の暮らしぶりと新聞記者・田畑の目線と志ん生の語りで淡々と事実を見せつけられる。

最後に、ようやく過去の物語が戦後復興の後半に繋がり、一気に東京オリンピック招致へと展開する。

大河ドラマの素晴らしいところは、大物役者を惜しげもなく起用するところ。関東大震災の傷が癒えないときでも、日本が国際社会から孤立しているときも「こんなときこそオリンピック!!!」と言い続ける柔道家の嘉納治五郎に役所広司。金栗四三が養子となった熊本の大地主に大竹しのぶ。

1話ごと見るだけでも十分楽しめる。当然ながら1話ごとにテーマがあるが、そのテーマ同士が多層構造になって、つながり続けている。

『いだてん』の主人公は二人とも「わかりやすい」成功は手にしていない。むしろ、残酷なほどに、わざと「敗者」として描かれていた気がする。

彼らがいなければ、全く違ったスポーツの世界観になっていただろうし、勝つだけが成功ではないので、「わかりやすい」という言葉を使ったのだが、補足すると、

金栗四三は、マラソンで世界記録を何度も更新し、日本には当然敵なし。金メダルを期待されていたが、熱中症のため棄権。絶頂期のベルリンオリンピックは中止。

田畑政治は、水泳で日本を世界レベルに引き上げる。そのために、政治家と次々に直談判する。しかし、悲願の東京オリンピックが決まり、着実に準備を遂行している最中、利用してきたはずの政治に足元を引っ張られ、責任を取らされる形で事務総長を辞任する。オリンピックの立役者が最後の最後に残酷にもオリンピックを取り上げられてしまう。

『いだてん』は全編通して陰と陽のコントラストがすごい。

男性と女性
貧しい志ん生と裕福な金栗(当時お金がないとスポーツできない)
政治とスポーツ
戦争と平和
抑圧と自由

どれをテーマにとってもいいが、「負け」があり、世代が変わる度に少しずつコントラストが遷り変わっていく。価値観が変わっていく。

そういうところもリレーしていたのかなと思いながら、また再放送を見る。

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