小話:まどろみ
ふと気がつくと私の意識は夢と現の狭間をさまよっていた。隣の学生がペンを走らせる音、パソコンのキーを叩く音、クーラーが空気を吐く音と様々な音が遠いようにも近いようにも響く。
頭がとんでもなく重い。図書館は寝る場所ではないと思い直し、姿勢を正す。それでも瞼は床に近づこうと落ちていく。
頭の奥で「眠ってしまえ」と何者かがささやく。なお抗い続けるために手のひらをむにむにと揉んでみる。外部からの刺激に少し目が覚めるものの害意がないからなのか、すぐまた眠りへと誘われる。
つん、と唐突に腕を突かれた。完全なる外部からの攻撃にびくっと頭が飛び起きた。
「眠そうだね」
友人が揶揄うように私の顔を覗き込む。友人であったことに体は安心してまた眠ろうとする。
「あ、また寝る。次の授業何時からだっけ?」
「さんじ……」
夢が私の意識を引きずり込もうとしているのを感じながら呟くように言う。
「起こすから寝てなさい」
友人が起こしてくれるならまだまどろめる。窓から指す日の光が温かい。昼時の幸せなまどろみをしばらく堪能しよう。私はついに眠気に敗北した。
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