【感想】「流浪の月」を読んで~ふたりの関係~

 すごくお久しぶりです。ゆうなです。
 ただいま休職中でございます。適応障害と、発達障害という診断が下りました。
 まだまだ不安定な毎日ですが、久しぶりに読んだ「流浪の月」が良すぎたので、感想を書いていきたいと思います。
 ネタバレありなので、お気を付けください。


 

 更紗さらさふみの関係をなんと呼ぶのかと言われれば、きっと、名前はないのだろう。
 恋仲でもなければ愛し合っているわけでもない。そこに性は介入せず、ただ純粋に「一緒にいたい」という気持ちのみが存在する。
 生まれ変わっても引かれあう相手のことをソウルメイトと呼ぶこともあるが、もしそうだとしたら、ふたりは、前世でどんな大罪を犯したのだろうか。
 加害者と被害者。
 世間から見たふたりは、この立場に立たされる。未成年に声をかけて誘拐した犯人と、誘拐された被害者。
 しかし、真実は違う。実際、加害者に声をかけられて誘われたものの、被害者が自ら選択してついていったし、一緒に暮らしていた間も、加害者は何もしていない。ただ居場所のない被害者に居場所を与え、常識という重たい枷を外してあげて、自由な生活を送らせてあげただけだ。
 なのに、どうして世間は勝手に可哀想な被害者と卑劣な加害者という構図を作り出し、そこに当てはめようとするのか。
 きっとそこには、事件はこうであるべきというパターンがあって、世間はそこに当てはまらないものはないと思っている節があるのだろう。加害者と被害者が、事件後、一緒に生活するなんてありえない。許されないことであると。
 また、ストックホルム症候群だという人もいるだろう。加害者と被害者が長時間一緒にいたことで、被害者が加害者に好意を持つというものだ。
 だからなんだというのだ。生活に支障がなければ、好きでいいじゃないか。
 それは間違った好意だという人もいるだろうが、私は幸せならば良いと思っている。それが歪んだものであっても、歪みを抱えたまま生きていく人もいていいじゃないか。
 ただ、更紗は文と一緒にいたいだけなのだ。

「事実なんてどこにもない。みんな自分の好き勝手に解釈してるだけでしょう」

「流浪の月」創元文芸文庫

 

「ロリコンじゃなくても、生きるのはつらいことだらけだよ」

「流浪の月」創元文芸文庫

 世間の思い通りのシナリオに組み込まれた更紗と文。
 ふたりが迫害されず、ただ幸せに暮らせる日がくることを願う。


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