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退院

その日は何気なく決まった
とうとう退院の日が来た

あっさりしたお別れと共に
大きな病棟から出られた

小さな閉鎖空間から
大きな広い世界に戻ってきたリョウコ

入院45日だった

退院後
リョウコはすぐに
大学に戻るという

「そんなにがんばらなくてもいいよ」
とドクターが言う

ふつうは、しんどくてあまり行きたくないっていうんだけど
君は、ほんとに頑張り屋さんだね

あまり、頑張りすぎないようにね

私はリョウコが家でじっとしていられないという
昔からの性格をしっていたから
そうなんだと思っていたけれど

先生は

「じっとしていて、お家にいても
あなたはあなた。
そんなあなたでいいんです
頑張りすぎないように」

先生はそんなことを言ってくれた
けれど
それができれば
そんなに苦しまないよ、先生

簡単なようで
それがいちばんリョウコには難しいんだよ

って思ったか思ってないかわからんけれど
それができれば
おそらくもう病気になってない

それでも
退院できることは
本当に喜んでいた

もう戻りたくない
絶対に入院したくない
と言う

全部覚えてるよ
苦しかったこと
看護師さんとしゃべったこと
食べたごはんとか
お話しした人とか
発祥したときのことも覚えてるよ
変な夢見てたこととか
全部覚えてるよ

っていう

おそらく全部じゃないっていうことが
私にはわかるけれど
そこまではっきりと言えるリョウコは
それなりに良くなっているんだろうと
思った

そして
すぐに大学に復帰すると言って
翌日から大学に行ったんだ

そして
そんな簡単じゃなかったんだ

入院中よりつらい日々が始まったことを
私もリョウコも
予測していなかった


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