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手放せば手に入る

就職活動は想像以上に苦労した

こんなに苦労するなら
今のバイトのままでもいいんじゃないか
と思ったくらいだ
しかし
リョウコは今のバイトはもう嫌気がさしていたようだった

なぜかというと
飲食あるあるで
お客さんが横柄な態度で嫌だったようだ

リョウコがちゃんと働きたい
というのなら仕方がない

あきらめずに就活し続けるしかない

先生の言っていた通り
ストレスがかかると状態は悪くなる
ストレスとはなれない就職活動に伴うもの
生き慣れない場所へ下調べしていく
普段慣れない服装
面接では緊張しないはずがなく
エントリーシートを書いては不採用通知が届く
ストレスの連続だ

頑張るストレス
我慢するストレス
両方が怒涛の様に押し寄せてくる

まず眠れなくなる
そして不安定になる
余計にストレスに弱くなる

だからしばらくは薬の力を借りる

そんな状態を続けていたら
ある日、リョウコにもってこいの
それも飲食だが見つかった
アッという間に就職が決まり
無事正社員になれた

正社員になれたことによる
安心感は
減薬にはもってこいだった
睡眠導入剤だけしか飲まなくてよくなってきた

仕事しながらいろいろな困難にぶつかるが
それも慣れてきた

心の持ちようでいかにもなる
ということが腑に落ちたところが出てきた

自分は不安でも相手はなんともなかったり
ものすごい思い違いのすれ違いの連続で
勝手に自分が落ち込んでいることがほとんどだということも分かったようだ

皿を割ったり、お客さんへの対応が悪かったり、
友達との付き合いが下手だったり
それは何とでもなる事だ
皿を割らないように工夫する方法はいくらでもある
客への対応は丁寧で笑顔であればほとんど許される
友達との付き合いなどは本当にいいように思っていれば良いだけ
他人はどう思っているかなどは考えても害になるだけだ

ということがリョウコにはわかってきたようだった

こんなことは薬を飲み続けていたら
きっとわからなかっただろう

なぜかというと
薬は客観的に自分を見る視点がなくなる
自分の感情の中にどっぷりと入ったままで
他人との距離感など取れない

リョウコは薬から徐々に抜けることでができた
これはもしかしたら
奇跡かもしれないと思う
そうでない人はたくさんいる

本当のリョウコに戻ったということは
当たり前じゃなくて
奇跡なんだと思う

薬を飲まなくてもよくなったこと
そして
普通の社会人として生活している事
好きな人もできたこと
お付き合いでもできている事

奇跡だと思う

リョウコに対する私の思い
リョウコが私にとってどんな存在なのか
それに私は向き合うことができたように思う

もし薬から逃れられなくて
困っている人がいて

何とかしたいと思うひとがいて
それが本人であれ
家族であれ

そう思う人に対して

それは誰のせいでもなく
自分は何者だということに向き合う
サインかもしれないと
私は思う

誰かのせいにしていたら
それは
泥沼にはまっていく罠だ

リョウコの発症
リョウコのリストカット
は私にとって
私への明らかな気づきへの導きだった

そして
執着を手放すことを知った

自分で何とかしないといけない
と思っている限り
死ぬまで他人は変えられないから
もつれていくんだとわかった
自分も子供も苦しい

子どもの人生は子どもが自分で切り開く
家族誰もがそう
誰一人としてそうでない人はいない

執着というエゴを手ばなすこと
手放せば
その瞬間から欲しいものが手に入ってくる

子どもを何とかしないと
リョウコを何とかしないと
と思う気持ちを私は手放したことで
私と向き合うことができたし
リョウコに対して
素直になれた

手放せば手に入る
宇宙の真理だと思う





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