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解放

その日は突然きた
閉鎖病棟からでましょう
といわれた

突然であっけなかった

普通の個室

なんて明るい
これが普通の部屋の明るさなんだ

りょうこは
喜んでいるような
そうでないような

大きく違うのは

大勢の人と交われること
時間が決まってはいるが
他の入院患者さんと交流できる

入院中の人たちは
普通と違う雰囲気を醸し出している

視線が固定されている
動きが緩慢で
良く食べる

みんな会話はほとんどすることがない
集まってくる時は
食事の時
テレビを見ている人もいる
かならず見る人は同じテレビを見る
静かだけれど
空気の流れがない
人がいるのに
流れていない

おたがいのコミュニケーションのエネルギーが
無いとこうなるのかもしれない

でも
その止まった空間が
閉鎖空間から出てきた
りょうこには
程よくいいのかもしれない

それは
無意識の闇から
出てきた
りょうこにとって
十分まぶしい
新しい世界だった

意識と無意識の境の穴に
薄く皮が貼り始めたばかりの
りょうこの
新しい人生のスタートだった


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