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リストカット

恐れていた日が
来た

リョウコが私に手首を見せてきたんだ

「ほら、切った」

私はいままで感じたことのない
現実的な
恐怖の谷に突き落とされた

手首には数か所の切り傷があった
薄く赤くなった傷
私の娘がリストカットした

そして「なんでこんなことしたん?」
と聞くと
「なんとなく」

そういえばリョウコは
良く自分の身体をこぶしでたたいている
太ももを良くたたいている
時にはベッドの柵を強くたたいている
病院にいたときも自分で自分の身体を傷つけていた

「怒りを身体にぶつける」
人に対してはできないから
自分を傷つける

理由はわかる
理屈も理解できた

しかしどうすればいい
私はリョウコのこのリストカットを
非常に恐れた
リョウコの気持ちではなくて
私自身が恐怖に包まれていることをわかっていた

リョウコに対する恐れ
何をするのかわからない恐れ
底知れぬ恐怖
が襲ってきた

現実に戻らなければ
リョウコに対して
「そんなことしたらお母さん怖い」と言った
そして
家にある刃物を隠した

それからリョウコを昼間も一人にできないと
感じたので
学校に行っている以外は
職場に一緒に連れて行って
寝かせておくことに決めた

それでも
リョウコをどうすればいいのか
私に「再入院」という文字が浮かんだ
こんな状態は私には手に負えない

そして入院先のドクターに電話をした
「入院させてほしい」と伝えるために

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