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よしよしする

リョウコは
いつも大学に行くとき以外は
家と私の職場にいることになった

職場についたら
べっどがあって
そこですぐに横になっていた
つねに、倦怠感があったようだった

そしてときどき
「どん、どん」という鈍い
何かに
打ち付けるような音が聞こえてくる
何度も何度もそれは続く

リョウコが自分の太ももを
自分のこぶしでたたいている音だった

リョウコの白い太ももには
薄青いあざがいくつもできている

いたいから、やめようね

というと
しばらくすると今度は
また違う音が同じように
「どん、どん」としてくる

今度は寝ているベッドをたたいていた

「イライラする、自分に腹が立つ」

イライラをどこにもっていくか
わからない
リョウコは
周囲にまき散らすのではなく
自分を痛めつけることしかできなかった

刃物がないから
自分を実際に傷つけることはもう
しなかった

私はリョウコが何をしようとしても
とにかく
受け止めることをすると
心のどっかで決めた

適当でもいい
時々腹が立ってもいい
時々泣いてもいい

それでも
次の日にはまた
受け止めることに
もどる
それを繰り返すことにした

いままでずっと
受け止める
とりあえず聞く
とりあえず一緒にいる

リョウコに
小さい時からしてやれなかった
そんな些細な事を
することにした

それは
私がリョウコにする
「よしよし」だった

そんなことをやってみるときめた

心の中が
どれほど嫌だっておもっていても

もう私にはそれしかない
そして
それはリョウコがどうのこうのじゃなくて

私自身のことだって
わかった

というか
私から目を背けていた
わたしを認めてなかった
私が私を大嫌いだった
ということに
はっきりと
気づいたってこと

リョウコは
それを私に
目いっぱい著してくれたんだ
ってこと
わかったんだ


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