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その境界線が示すもの

仕事柄、というほどでもないけれど、
多くもなく少なくもない頻度で新幹線に乗る。
新大阪から東京は約2時間半と、決して短くはない時間を高速で移動するハコに閉じ込められる。

主に乗車するのはのぞみで、座席の配列は2列と3列の計5列の構成となっている。ここで重要なのが、この150分をどこで過ごすのかになるが、僕は大概3列シートの通路側を選択する。お手洗いに立つときも気を遣わなくていいし、降りる際もスムーズ。かつ、大概満席になるようなタイミングでなければ、3列の真ん中は空席の可能性が高い。ゆえに「隣の人ガチャ」を引かずに済むことが多い。

しかし、だ。コロナ規制もどこ吹く風となり、インバウンドはやや過剰気味な昨今。出張で東京へ行くことになり、のぞみを予約しようとするも空いているのは2列通路側か3列中央。3列中央はのぞみの中でも最弱なので2列通路側しか選択肢はなく、「隣の人ガチャ」を引くことになった。






肘掛け独占足広げPCパチパチビジネスマンだ!!




いや、まあ、PCパチパチは別にいいんだけど。その気になれば情報死ぬほど抜けそうなので、自分は横に人がいるときは仕事しないでおこうと心に決めたくらいで。搬入用重機の納品は上手くいったかな。

問題は境界線をまあまあ越えてるってことで。
真ん中の肘置きの使用権については、双方のなんとなくの気遣いと雰囲気で移り変わるものだと思っているし、まあ先に乗っていたら既得権益的に使われているのも仕方ないかと思える。が、そのはみ出た肘は何なん?それは何なん?その肘は何なん?

かくして150分の列車旅はブルーな気持ちで出発することとなる。文句を垂れるくらいなら、前もってお望みの席を確保しなさいよ、というのはごもっともなんだけど。もしかしたら、こんなことばかり気にする自分が変で、他人との境界線に妙に拘るやっかいなヤツで…なんてどんどん思考は泥沼化し、いつの間にか眠りについていた。

目を覚ますころには列車は新横浜に到着する頃合いで、彼は変わらずPCを叩いていた。きっと仕事に追われて、横の席のヤツなんて気にする余裕もないんだろうな。お疲れ様。なんて一瞬思ったが、その境界線を大幅にはみ出す肘を、やはり僕は許せないまま列車は煌めくコンクリートジャングルに吸い込まれていく。

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