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【経済書】「イノベーションのジレンマ」

イノベーションのジレンマとは、優良企業の経営におけるリスクの一つです。新しい価値観でもって既存事業を侵食する破壊的イノベーションが出てきたとき、しばしば優良企業は対応が後手に回り、その力を失ってしまいます。優良企業は、自身が正解だと思える行動をとったにも関わらず、逆にそれが原因で後手に回ってしまうのです。

投資家が「イノベーションのジレンマ」について知っておくことには価値があります。

投資においては守る側よりも攻める側に投資しないといけません。ネットフィリックスが登場したときに、レンタルビデオ店の株を持っていたら大変なことになりました。アマゾンなどのオンラインショップ台頭によって実店舗の企業は破綻に追い込まれる事例もありました(2015年米家電量販専業2位のラジオシャック破綻)。

この問題の構造を知っておくことで、往々にして守る側、つまり攻められる側に投資していることを認識できないでいるリスクを回避することができます。自分が優良企業と考えていた企業が、破壊的イノベーションの登場に対応できず業績を落とす、というリスクについて気を配ることができます。

自分が投資している企業はどういう状況になれば危ないのか、ビジネスを脅かすライバルはどういった存在なのか、について考える助けになります。それは、株の逃げ時と次の投資先を考えるヒントになり、自身が行なっている投資への理解度を上げることができます。

では、「イノベーションのジレンマ」とは何なのか。この問題の構造について、クレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』を参考に解説していきます。

この問題の焦点は優良企業の経営者にとって正しいと思える対応が破壊的イノベーションへの対応の足枷になってしまうことです。

著書ではイノベーションには二種類存在するといいます。

●持続的イノベーション(Sustaining Innovation): 既存の製品やサービスを改良・改善するイノベーションであり、既存顧客のニーズに応え続ける技術革新です。優良企業が主に取り組みます。昨今のスマホはカメラ機能の向上にフォーカスされていますが、これが持続的イノベーションです。

●破壊的イノベーション(Disruptive Innovation): 初めは性能が低く少ない市場向けですが、急速に性能が改善されることで既存の市場を根底から変えるイノベーションです。

優良企業は既存顧客のニーズに応えるため、そして収益性が高いために、持続的イノベーションにリソースを集中させることが正しい選択肢だと思えます。破壊的イノベーションは当初はニッチな市場であり、既存顧客のニーズに合致しません。収益性も低いために、魅力的な選択肢に映りません。ゆえに軽視されます。

大企業になるほど、会社の業績の額が大きくなります。売上高成長率を出すためには、小さな市場では満足のいく売上を出すことへの期待は起こりません。また、このような小さな市場へリソースを投下することは投資家も承服しません。売上高成長率に短期的に寄与するとは考えられないからです。

以上のようなメカニズムから、優良企業の目が持続的イノベーションばかりに向いていしまうのです。

しかし、そうこうしている内に、破壊的イノベーションはニッチ市場で流行します。その後、急速に性能が向上し、次第に主流市場に進出します。最終的には従来の大手企業はシェアを奪われ淘汰されるのです。シェアが脅かされる頃にはすでに後手に回っているのです。

ゆえに優良企業における脅威とは、同じ評価軸で競い合う既存の同業他社ではなく、まったく別の価値観でもって市場を侵食する破壊的イノベーションをもった企業なのです。

簡易で、安く、低性能な特徴を持った製品で市場に挑んでくる企業に投資家は注意を払わねばならないということです。

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