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コロナの濃厚接触認定者になった話④

コロナの濃厚接触認定者になった話③ の続き

登場人物
コロナ感染者 Aさん
濃厚接触認定者 私
その他のみなさん

ホテル療養の話

 前の投稿で、Aさんが療養しているホテルで出るお弁当の量がとても少ないのに脂っこいおかずが多いと書いた。Aさんと話していて、これはもしかしたら味覚を確かめるためかもしれないという結論に至った。

 勝手に私たちが思っただけなので実際どうなのかはわからないが、Aさんはトンカツを食べたときに味が限りなく薄いと感じたらしい。そこで初めて自分の味覚異常を認識し、さらに舌の上にからしを乗せてみて、まったくからさを感じなかったことで確信に至ったという。味の濃いものでなければ、味覚の異常にも気づきにくいので、必ず濃いものがひとつ入っているのかもしれないと予想した。

 味覚、そして嗅覚の異常も2日くらい続いたようだが、徐々に戻っていったそうだ。味覚と嗅覚さえちゃんとしていれば、お弁当の味自体は美味しかったらしい。

 その他、ときどき頭痛や腹痛、鼻のつまりなどはあったが、ずっと熱もないまま、Aさんは療養期間を終えた。読みたかった本を読んだり、昼寝をしたりとゆっくり過ごしたらしい。もともと、病気にでもならない限りゆっくり休むこともできない毎日を送っていたAさん。朝方4時に家に帰って7時にはもう起きなければならないという時期もある仕事で、見ているこちらはいつも心配している。

 新型コロナウイルスに限らずどんな病気にもなりたくはないと思うが、今回症状が軽いまま強制的に長く休めたことは、Aさんの体にとって別の意味で良かったのではないかと思ってしまった。

ネットで買ったもの

 ネットスーパーで買ったものが、次の日に届いた。

 インターホンが鳴ったので、玄関前に置いておいて欲しいと伝え、少し待ってから取りに行った。昨年からずっと、家に届くものを対面で受け取ることはなくなり、マンションの部屋の前の床に直接置いてもらっている。

 私の住んでいるマンションは、エントランスから一度屋内に入るが各階の廊下の部分には窓がないタイプの造りだ。もちろん屋根はついているが、窓がないので外からの雨風は直接廊下に吹き込んでくる。そのため、床も屋内用のものではなく屋外用の素材でできているし、それなりに汚れる。

 それでも、段ボールに入っている荷物は中身が汚れるわけでもないので、置き配指定したりインターホンを押してくれた業者さんに置いていってもらい、自分で回収する。

 今回、ネットスーパーで買ったものは段ボールに入って届くものだとばかり思っていた。でも、実際ドアを開けてみると、いくつものビニール袋に分けて商品が入れられていた。ビニール袋の下には透明のビニールシートが敷かれていた。私はそこまで気にならないが、食べ物が入ったビニール袋を直接地面に置かれると嫌な人も多いだろう。とても丁寧な対応だなと思った。

 一度、ケンタッキーをネット注文したのだが、宅配のときの希望を書く欄に「インターホンを押して床に置いておいてください」と書いた。すると、チキンなどが入っているあの薄い紙箱がそのまま床に置かれていてびっくりした。過去に何度も注文していたけどいつも袋に入っていたので、今回宅配したスタッフさんがたまたまそういう人だっただけだが、足元に薄い紙箱に入っただけの食べ物を置く人というのはなかなかだなと思った。

 そういうことがあったあとだったので、ネットスーパーの宅配の方の配慮なのか、会社自体の方針なのかはわからないが、ビニールシートを敷いて商品を置いてくれていたという配慮がとてもありがたく感じた。

 Amazonで頼んだものやLOHACOで頼んだものも少しずつ届いたが、AmazonでもLOHACOでもグリーンカレーのレトルトを頼んでいたみたいで、私はどれだけグリーンカレーを食べたかったんだろうと思った。

 家の中にいても、欲しいものは全部揃った。自分で商品を直接見て選べる自由はなくても、生活に必要なものは何でも揃えることができる時代なのだなと改めて思った。

 そして、物を宅配するという仕事ひとつにも、いろいろと考えることがあるのだなとも思った。

ありがたい言葉とありがたくない言葉

 しばらく動けないということで、念のためSNSで「濃厚接触者になったために14日間家から出られないこと」について投稿した。人前に出る仕事でなければいちいちそんなことを世間に知らせる必要もないが、今回のことで出演できなくなった番組などもあったので、憶測でいろいろ言われるよりは先に自分で言っておいた方がいいと思った。

 新しいお仕事をいただいても断らなければならないし、依頼してくださる方もあらかじめ外出できない期間を知っていると依頼する手間が省けるだろう。

 私の投稿に対し、SNS上でたくさんの方が優しいコメントをくださり、友達は直接LINEをくれたりもした。何かできることがあったらいつでも頼って、と言ってくれた友達もいて本当にありがたかった。結果、友達の手を借りずになんとか生活はできたが、何かあったときに頼れる人がいるというだけで気持ちは全然違う。

 それから、新型コロナウイルスの予防法などを教えてくれる人もいた。実は、これがやっかいなんだな。

 何かを教えたい、アドバイスしたいという気持ち自体は、ありがたいことだと思う。教えるだけならいいのだが「〇〇を食べてください」「××はしないでくださいね」などの強要のコメントをしてくるのは、本当にやめて欲しい。「~してください」という言い方をする人は丁寧な言い方でも全般的に危険だ。

    もちろん「お大事にしてください」「ゆっくり休んでください」のような、気遣いの「~してください」のことを言っているわけではない。「この際、一切仕事を忘れて過ごしてください」とか「体に優しいものを食べてください」みたいな一見気遣ってそうで、強要するような言い方をする人のことを言っている。

本人は強要しているつもりはないかもしれない。でも「〇〇は新型コロナウイルスの予防になるらしいですよ」という言い方と「〇〇を食べてください」はまったく違うということに気づいて欲しい。前者は相手のプラスになればつという優しい気持ち、後者はあなたの考えを押しつけているんです。

 そういう人は、普段からそうだ。本が好きと言えば「〇〇という本を読んでください」「本当の読書好きは××という本を読みますよ」みたいな言い方だし、「今日は〇〇というチームの取材に行ってきました」と投稿すればそれに対する感想は一切なく「〇〇と私の関係は…」と自分の話を延々と。そう、自分の思想、自分の思い出など、一方的に自分を押しつけてくる人がこの世には存在する。

 こんな情報もありますよ、こんな作品もありますよ、こんなエピソードもありますよ、というもしかしたら相手のためにもなるかもしれないことを教えてくれる気持ちならありがたいけど、自己の押しつけはご遠慮願いたい。

 病気、災害など、不測の事態のときは、本当に人との付き合い方を考え直すいい機会だと思う。優しく手を差し伸べてくれた友達のことは、ずっと大切にしていきたい。そして、私もそういう存在になりたいと思う。

自宅待機が終わった

 陽性で無症状だった可能性もゼロではないが、無事感染を感じることなく自宅待機期間が終わった。保健所の方たちは、基礎疾患のある私に対して毎日電話をくださり、優しく対応をしてくださった。本当に感謝しています。

 新型コロナウイルスに対して、どのような考えを持つかはその人次第だ。どんな説を唱えようとも構わないが、冷静さだけは失わないで欲しいと思う。

 たとえば、死亡率を交通事故と比べる人。他の病気と比べるならわかるけど、事故は事故だ。事故で死ぬ確率がこれくらい、それに比べてコロナは…なんて冷静に考えて比べる対象がおかしいと思わないのだろうか。

 比べるならせめて
①今、新型コロナウイルスと同じくらい流行しているもの
②ウイルス性のもの
でお願いしたい。

 それから「新型コロナウイルスはただの風邪」と言う人。風邪にもいろいろ種類があるので一概には言えないが、明らかに一般的な風邪と違う症状があるのになぜそれを無視する発言をするのか不思議だ。「コロナをそんなに怖がる必要はない」ということが言いたいのなら、わざわざ事実と異なる言葉を使わずに、怖がる必要はないという根拠を示せばいいだけだ。

 「マスクをして外に出ると免疫力が弱くなるからしてはいけない」と言う人もいた。確かにマスクをすることで、呼吸の仕方は変わるしウイルス以外の普段吸い込んでいるものも吸い込まなくなるので、本来の生き方とは違ってくる。何らかの影響はあるとは思うが、免疫力という点だけピンポイントで考えたとき、絶対に弱くなるというのは本当に医学的に言われていることなのだろうか。逆に、家の中でマスクをするのはいいのだろうか。

    私は、中学生のときから家の外に出るときは絶対にマスクを外さない人を知っているが、その人は健康そのものだ。 

 さっきも書いたように、新型コロナウイルスについてどんな考えを持っていてもいいし、行政の対応に不満を持つのも自由だと思う。ただ、自分の発言を俯瞰で見られるようにした方がいいとは思う。特に言い切りの形で自分の意見を言う人を私は信用していないのだが、そういう人はデマだろうがなんだろうが自信満々で言い切る。

 テレビで発言している専門家の言葉を鵜呑みにしている人も多い。その専門家と紹介されている人が本当に業界で信頼されている専門家かどうか、ちゃんと調べてから発言を信じた方が良い。特にFACEBOOKは年齢層が高いからか、専門家からは専門家と認められていない人を盲目的に信じている人がいたりする。ちゃんと調べれば、誰が業界から信頼されているかわかるので、どうしてもSNSで強い口調で発信したいなら、そういう専門家の話を参考に言い切ればいいと思う。

 私自身は、今の時点では生活が成り立っているので、労力をかけて行政を批判したりもしない。誰かのために世の中を変える運動も、特にする予定もない。まあ、誰かのためになんてだいたい自分のエゴなので、自分が動きたいときがあれば動くだろうけど。

 人それぞれ立場や状況が違うので、今本当に苦しい状況にある人もいると思う。見ず知らずのその人を助けるほど私はできた人間ではないが、自分の手の届く範囲の大切な人たちは守っていきたい。今回の経験で新しく覚えたことや感じたことを今後の人生に生かしていきたいと思う。

 この2週間お世話になったみなさん、本当にありがとうございました!

コロナの濃厚接触認定者になった話① から読む

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