見出し画像

【書評】三行で撃つ:書くを探求する

日常の一瞬の言葉を書き留めるようになった。言葉は、すぐにメモしないと消えてしまう。頭に浮かぶ言葉は、たいてい起きがけの時間に閃くこともあれば、水に手をくぐらせて皿洗いをしているときにも降ってくる。あれはなんだろう。そんなことを考えていた。

忙しい読者は、あなたに興味などない
読者の心を射止めるには、冒頭つかみの三行が勝負だ。三行で撃つは、第1発から第25発の言葉の銃弾に、文章の技術、企画、時間、自己管理、読書術、思考法を余すところなく詰め込んでいる。第1発から第20発は基礎と応用編、第21発から第25発は、プロのライターに向けての展開編で構成される。

これから表現したい初心者やプロライター、新聞記者まで。文章術の実用書ではあるが、この本は生きること、人生そのものを書いている。「書く」に携わる人には必携の書だ。

著者は、狩猟とライター業は似ていると語る。著者の言葉には、生きることに背を向けずに死をも受け入れる覚悟がある。プロとして生きる厳しさを感じさせる。

一瞬で獲物をしとめるための間あい、結論まで一気に流れるリズム感やスピード感。文学作品や新聞記事など豊富な例示を取り上げ、著者の読む人を飽きさせない工夫が随所にみられる。

”書くとは、考えること。書きたく、なる。私に<なる>ために。”

常套句や比喩表現など安易に使わずに、自分の言葉で考える力、話を展開させる力がライターには必要だ。起承転結の転が上手いライターが生き残ると著者は語る。

五感を研ぎ澄ませて、私の中にある言葉、一瞬閃いた言葉を記憶につなぎとめるには、「書く」と向き合っていく覚悟が必要だ。日々の蓄積が、頭の中で繋がり、自分だけの言葉を生み出す力になる。書きたい欲求にしたがって、長く書き続けられる私になるために。

本の情報:三行で撃つ(近藤康太郎/CCCメディアハウス)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?