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地獄の写真撮影

 虐待サバイバーのゆうかです。
 
 父は二面性を持っていましたので、私達を年に1回以上、楽しい楽しい(?)家族旅行に連れて行ってくれました。

 その度に、父は写真やビデオを撮影していました。
 そして、その写真はいつも父の思い通りじゃないと気が済まないのです。

 私達4人姉妹と母を並べて、並び方や顔の向き、手の場所、立ち方などなど…
 細かく細かく指定するのです。
 太陽が眩しくて目を細めたら怒られます。
 笑ってなければなりません。無理に、楽しそうな笑顔を作らなければならないのです。

 だから、撮影にはとてもとても時間がかかります。 
 父が満足するまで終わらないのです。
 
 私は、いつのまに写真撮影が大嫌いになりました。私にとって、カメラを向けられることは恐怖でしかありませんでした。当時の写真の中の私は、ほとんど顔が硬直しています。

 笑いたくても、目を釣り上げて怒る父が目の前にいて色々怒鳴っているのに、笑顔を作れるはずがありません。

 だから、私は、自分の子供の写真を撮る時には、カメラに気づいていない瞬間もさり気なく撮影して、笑顔だけではない自然な表情もたくさん撮影するようにしていました。

 横顔も後ろ姿も、泣き顔も寝起きの顔も、ふとした変顔も、なにかに集中してあごが出ちゃった顔も、全部かわいいのに。

 正面を向いて立って顔をこわばらせた娘たちの顔を、怒鳴りながら撮影して、父は楽しかったのかなと、不思議でたまりません。



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