抜け落ちている記憶

　虐待サバイバーのゆうかです。

　虐待サバイバーには多いことかもしれませんが、私は子供の頃の記憶が、ところどころ抜け落ちています。

　自分では全部覚えているつもりでしたが、姉や妹に言われて、忘れていることが判明することがたくさんありました。

　虐待父でしたが、良い父という面も持っていましたので、年に一度は家族旅行に行っていましたし、夏は必ず海水浴に連れて行ってくれました。

　もちろん、旅行中も、父の機嫌次第で、楽しくも地獄にもなります。常に父の機嫌を伺い、ビクビクしながら旅行を楽しんでいたのだと思います。

　全部が楽しい記憶ではありませんでしたが、楽しかった記憶もあるはずなんです。
　少なくとも、姉妹たちは、楽しい思い出を語っているので。
　
　母も、私が大人になってから「ゆうかはね、非日常をとても楽しむ子供だったわよ」言っていましたので、楽しんでいたのだと思います。

　けれど、私はその楽しかったはずの思い出の記憶がほぼないのです。
　海水浴に行ったこと、家族旅行に行ったこと自体は覚えています。

　けれど、内容を覚えてないのです。
　妹によく「○○温泉に行ったの覚えてないの〜？」「あそこで○○したこと覚えてないの？」と聞かれます。
　行き先などの情報や、何をしたかなどの詳細は、自分でも驚くほど覚えていません。
　
　
　それから、私は成績の良い子供でした。そのことについて、私は全く褒められた記憶がないのです。100点でもオール5でも、父は褒めてもらえなかったと、自分では記憶しているのです。

　ところが、姉には「お父さんはいつも、ゆうかちゃんが勉強頑張ってること、褒めてたじゃない！覚えてないの？」と言われます。　
　けれど、私は全く覚えていないのです。
　父に勉強について褒めてもらったことは、いくら記憶をたどってみても、一度も思い出せないのです。
　当時はいくら頑張っても認めてもらえない、と思っていたので。

　偏差値75を叩き出しても、父は最高は100点満点だと思っていたので、いくら説明しても不満気な顔をされたことはハッキリ覚えているのです。

　優しかった父もいたことは覚えていますが、具体的にどんなことをしてもらったとか、どんな顔で笑いかけてくれたとか、そういう記憶を、私は消してしまったようです。

　ネガティブな記憶を消せたら良かったのですが、ポジティブな記憶の具体的な部分のみをスッポリ消してしまったようです。

　今更、思い出そうとは思っていません。
　余計な感情で自分が混乱しそうなので。

　被虐待児の脳は萎縮すると言われていますが、私の脳も確実に普通ではないのだろうと思います。