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大切な絵をゴミに出された

 虐待サバイバーのゆうかです。
 
 私は絵を書くのが大好きでした。

 今はあまり見ませんが、昔は広告の裏は白かったので、私は新しいノートを使わずに、広告の裏にたくさん絵を描いていました。

 よく描いていたのが、当時大好きだったキャンディキャンディとの登場人物でした。
 主人公のキャンディをはじめ、親友のアニー、初恋のアンソニー、恋人のテリィなどを描いていました。

 丁寧に丁寧に、大切に絵を描き、そして大切に保管していました。

 褒めてもらいたくて、その絵を母に見せたりしていました。
 だから、私がこの絵を大切にしていたことは母も知っていたと思います。
 
 小学2年生のある日、学校から帰ってきて、絵の続きを描こうと思いました。ところが、その広告がないのです!
 
 「またか!」と思いました。
 何度か勝手におもちゃを捨てられたことがあったからです。
 
 すぐに母のところに行きました。
 絵がないことを伝えると、母は
 「捨てたわよ、ゴミでしょ」
 と言ったのです。

 私は絶句しました。
 返す言葉が私には見つかりませんでした。

 ゴミ置き場まで走りました。
 私が住んでいた地域では、大人でもすっぽり入れるくらい大きなゴミ収集ボックスがありました。
 私がその蓋を開けると、中に入るには飛び降りなければならない高さでした。
 
 しかもゴミがたくさん入っているのです。
 私は、恥ずかしさもありましたが、ゴミ箱に入り、自分の我が家のゴミ袋を探しました。

 すぐに見つかりました。
 急いで袋を開けました。
 私の描いた絵も見つかりました。

 ところが生ゴミと一緒に入れられていたために、紙は湿っていて、生ゴミの匂いもついていました。

 私は、しばらくその紙を眺めていました。持って帰りたかったのですが、なんだかもうゴミにしか見えなくなってしまい……もうどうでもよくなってしまったのです。

 結局、私はその紙を、持って帰りませんでした。
 その紙の湿った感じや、生ゴミにまみれてついてしまった匂いが、自分のみじめな気持ちそのもののような気がしたのです。

 悔しさと、みじめさと、恥ずかしさを感じながら、泣きました。私は、なんとかゴミ箱から出ることにしました。

 人通りのあるところでしたので、大人に見られたと思います。けれど、私は恥ずかしすぎて、見られていることに気づいてないふりをしました。

 家に帰っても、母に文句ひとつ言えずにいました。

 私は、母からは暴力や暴言を受けてはいませんでしたが、母は父からひどい暴力や暴言を受けていましたので、母は全て父の言いなりで、母に伝えたことは全て父に筒ぬけていました。

 だから、母には自分の気持ちを伝えられませんでした。
 その紙を捨てたのが母のみの意思なのか、父と母の共通の意思なのか、わかりませんでしたが、もし私が母に文句でも言い、父に伝わったらとんでもないことになると思っていました。

 けれど、その時の私の複雑で、やりきれない気持ちは今でもハッキリと覚えています。

 私は、一番上手く描けた絵を大切に保管していたのです。
 母が知らなかったわけはないと、とてもとても、失望しました。

 大人になった今でさえ、その時の心境をどんな言葉で表現すればいいかわかりません。

 そして、今でもあの時、母になんと言いたかったのかわからずにいます。

 これも心理的虐待だと思っています。
 力でねじ伏せ、力で支配して発言権をうばい、何も言えない状況をつくる、暴力をふるう人の典型的なやり方です。


 

 



 

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