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Kenny Rankin「Like a Seed」(1972)

朝方は寒くなってきましたが、日中は心地よい日が続いてますね。
そういった心地いい日はこのアルバムを聴きたくなります。それは3曲目の「Peaceful」を聴くためなんですが…。
題名の通り、穏やかな気持ちにさせる曲。このPeacefulなムードが全体を貫いてます。本作はケニー・ランキンの3枚目のアルバムです。名盤!!!

実はケニー・ランキンは相当長いキャリアを持つアーチストです。
レコードデビューはなんと1957年!
当時はデッカに所属するも全くヒットに恵まれず、不遇の時代を過ごします。その後、ジョアン・ジルベルトの虜となり、ギターを独学でマスター、1964年にCBSと契約。この頃、前回ご紹介したラヴィン・スプーンフルのジョン・セバスチャンと活動を共にしていたようです。
1967年にマーキュリーへ移籍して、実質的なファーストアルバム「マインド・ダスターズ」、1969年には「ファミリー」を制作。そして本作へと繋がっていきます。

ケニーの特徴はボサノバ、フォーク、ジャズ等をミックスした独自の音楽観が漂っていることです。殆どのアルバムにはカバー曲がありますが、原曲が分からないほどアレンジが凝ってます。
そして本作には実はカバー曲が収録されてません(多分カバー曲が収録されていない唯一の作品ではないでしょうか)。ケニーのシンガーソングライターとしての意気込みが伝わってくる作品なのです。

まずはオープニング、アルバム・タイトル曲の①「Like A Seed」では冒頭、ケニーの子供たちの歌声がフィーチャーされてます。その歌声に導かれて、ヴィクター・フェルドマンのヴァイブラフォンがいい感じに曲を引っ張っていきます。この曲も幸福感溢れてますね。

続く②「Yesterday’s Lies」もフォーキーで味わい深い、ケニー・ランキンらしいメロディが堪能出来ます。ケニーのボサノバ・タッチのアコギをベース、ジム・ホーンのフルートが曲に深みをもたらしてます。この曲もヴィクターのヴァイブラフォンが効果的に使われてます。

そして本作の代表曲の③「Peaceful」。実はデビューアルバムにも収録されていたのですが、本作で再演。ハープが隠し味となり、この曲の幸福感を際立たせてます。フルートなどの使い方もいいですね~。

⑥「Stringman」もフォーキーでメロディアスなケニーならではの至福のサウンド。サウンドはJTと似ておりますが、ケニーの方が愁いを感じます。
この曲も大好きですね~。「弦をつま弾く男」、自らを歌った曲でしょうか?

このアルバムのファースト・シングルは⑤「Comin' Down」。
なぜでしょう。この曲、全くケニーらしくないですね。ワウワウをかけたギター、激しいブラス。う~ん、なぜこの曲をシングルにしたのか、理解に苦しみます。

このアルバムは楽器の使い方にもセンスを感じさせます。ハープ、フルート、ヴァイヴラフォン等。
ベースはリー・スクラー、ドラムはジム・ケルトナー、キーボードはラリー・ネクテル。演奏者もつわものばかりですね。
ちょっとした心地いい日にこんなアルバムも流すのもいいものです。

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