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James Taylor「James Taylor」(1968)

24日のビリー・ジョエルの来日公演、盛り上がったみたいですね。そういった意味では、2月、4月に来日するボズ・スギャックスやジェームス・テイラーのステージが楽しみです。

ということで今回はJTことジェームス・テイラーのデビューアルバムをご紹介致します。

今更デビューアルバムを…と思われるかと思いますが、正直、このアップルから発表された本作は、以降のJTのアルバムとは味付けが違うことから、長年スルーしておりました。でもよく聴くと、もう既にこの時点でJTサウンドが確立されており、逆に以降には見られない弦楽奏やホーンアレンジが新鮮にも感じられました。多分、数年前に聴いていたら、60年代風のサイケな感じに違和感を感じていたと思うのですが。

当時、アップル・レコードのA&Rマンだったピーター・アッシャーはJTの才能を見抜き、ポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンに曲を聞かせます。多忙な2人が参加した曲が、本作には1曲だけですが収録されてますね。

幸運なデビューを果たしたJTですが、JT自身が薬物中毒で入院してしまい、うまくプロモーションが出来なかったこともあり、結果的には本作では商業的な成功を収めることが出来ませんでした。

本作は商業的に失敗に終わったからといって駄作だったかというと、全くそんなことはなく、随所にJTらしさが溢れる素晴らしい内容になっております。プロデュースはもちろんピーター・アッシャー。
グリーンスリーブスをイントロに持ってきたセンスが光る②「Something's Wrong」。
如何にもJTらしいメロディの佳曲です。途中、なんとなくビートルズの「I Will」っぽいメロディラインも…。やっぱりJTって美しいメロディを紡ぐポール・マッカートニーの後継者のような気がしますね。
セカンド以降には全く見られない弦楽奏のアレンジ、途中でペットサウンズのようにパーカッションのように入ってくるドラム…、本作ならではです。ちなみにドラムはキャロル・キングの「タペストリー」にも参加することとなるビショップ・オブライエンです。

後のJTからは全く考えられないような楽曲&アレンジの③「Knocking 'Round the Zoo」。
何やら不穏な雰囲気の弦楽奏から、かなりR&B色の濃いファンクナンバーに。JTの声はそれほどソウル色を感じさせないので分かりづらいですが、この曲はかなりファンキーですね。しかも異色なのは間奏のサイケなコーラス、いや叫び声(苦笑)。このアレンジは時代背景を感じさせます。

こちらもあまりにも有名なタイトルの⑥「Something in the Way She Moves」。
もうお気づきですよね。タイトルはジョージ・ハリスンが作った名曲「Something」の最初のフレーズですね。本当にジョージはこの曲のタイトルからインスパイアされたということらしいです。ただ、この曲自体は「Something」と似ているわけではありません。JTらしいフォーキーなナンバーで、後の彼のステージでもよく演奏されております。
エンディングはビートルズの「I Feel Fine」からインスパイアされたようなことをJTは語っておりました。

故郷への想いを綴った名曲⑦「Carolina in My Mind」。
この曲はJT自身もいくつかのバージョンが存在しますが、やはりここは本作での弦楽奏を交えたアレンジを堪能したい。
コーラスにはピーター・アッシャーやジョージ・ハリスンが参加。このアルバムの特徴でもある少し仰々しいくらいな弦楽奏が美しいですね。またメロディもやっぱりJT節全開で実に素晴らしい。本作中、最も親しみやすいメロディの名曲。そしてちょっと目立つベースはポール・マッカートニーのプレイです。

ちなみにピーター・アッシャーはその後アップルを辞めて独立。その際にJTもピーターと共にアップルを辞めようとしたところ、同社より多額の罰金を請求されそうになったところを、穏便に退社させるように口添えしたのがポールなんですよね。ポールは既にアップルの問題点がアラン・クラインにあり、JTはピーターと一種に居るべきだと理解していたんですね。
その後のJTとピーターの活躍は皆さん、ご存じの通りですが、ワーナー移籍直後の簡素なフォーキー路線の当時の演奏の「Carolina in My Mind」もアップしておきます。よりメロディの素晴らしさが味わえます。

こちらも以降のJT作品には見られないホーンアレンジからのスタートの⑨「Night Owl 」。
一瞬、ブラスロックかと思っちゃいますよね(笑)。こちらも軽快なR&Bナンバー。フォーキーな曲だけがJTの持ち味ではありません。こうしたジャンプナンバーも得意だったりします。ギターのリフが「Day Tripper」を連想させますね。あとリズム隊だけのエンディングも本作ならではです。

如何だったでしょうか。私は変な先入観からこの作品はじっくり聴いて来なかったのですが、やっぱりJTらしい素晴らしい作品だったと感じます。

ところでこのファースト、そしてセカンドまでの一連の流れから、ついついピーター・アッシャーって凄い人だなあと感じます。ピーター&ゴードンとしてデビューして、妹のジェーンが偶然にもポール・マッカートニーの彼女だったという縁からアップルに就職し、そこでジェームス・テイラーを発掘し、そのJTから慕われ、結果的に一緒に米国へ渡り、そこで人脈をまた築き上げる。幸運の人でもあり、その運を確実に自分のモノにしていった凄い人…。そんな人になりたいものです。


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