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Felix Cavaliere「Castles in the Air」(1979)

私が最初に買ったCDはラスカルズのベスト盤です。特に「Groovin’」が当時から大好きで(もちろんリアルタイムではありませんが)、その曲聴きたさにCDを買ったようなものでした。その「Groovin’」、ヴォーカルのフェリックス・キャヴァリエの名唱が光ります。ブルー・アイド・ソウル、白人がソウルミュージックを取り入れた音楽を総称してそう呼ばれるようになりましたが、ひょっとしたら、その代表格はラスカルズ=フェリックス・キャヴァリエかもしれません。

本作はフェリックスの1979年発表のソロ3作目。プロデュースはフェリックス自身。当時の時代背景を反映したような、AORやディスコサウンドに、自身のソウルフレイヴァーをうまくブレンドしたような、実に洒落た作品に仕上がってます。

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本作ではニューヨークのスタジオミュージシャンバンドの24丁目バンドが全面参加。具体的にはハイラム・ブロック(g)、ウィル・リー(b)、スティーヴ・ジョーダン(Ds)の24丁目バンドの3人を核に、盟友であるバジー・フェイトンエディ・ブリガッティマーカス・ミラースティーヴ・カーン等が参加。軽快な演奏を聞かせてくれてます。

本作からシングルカットされた②「Only a Lonely Heart Sees」は全米最高3位を記録。恐らくこの曲がフェリックスのソロ、最大のヒット曲かと思われます。なんだか不思議なんですが、後からジワジワくる曲。フェリックスのファルセットヴォイスとメロウなメロディ・演奏がミディアムテンポのナンバーながらも心に染みます。間奏の素晴らしいサックスソロは、のちにマンハッタン・ジャズ・クインテットを結成するジョージ・ヤング。

ホーンセクションがファンキーな③「All or Nothing」。当時のディスコブームも影響しているのか、実に軽快なポップン・ソウルな1曲。ここでのギター、リズムはハイラムですが、ソロはVinnie Cusanoなる人物。実はこの人、フェリックスのソロ3枚目のアルバム「Treasure」に参加していたギタリスト。但しこのアルバム、フェリックスは1アーチストとして参加したバンド形態で、そのVinnieのギターが結構目立ってました。そして彼こそ、後にキッスに加入するヴィニー・ヴィンセントなんです。この曲でもいいギターを聞かせてくれてます。またこの曲のコーラスは盟友、エディ・ブリガッティが参加してます。

アルバムタイトルトラックの④「Castles in the Air」も妙にクセになる1曲。メロウな曲調にフェリックスのファルセットヴォイスが心地いい。絶妙なフリューゲル・ホルンのソロはランディ・ブレッカー!とにかく夢心地にさせてくれるようなミディアムテンポのバラードで、素晴らしい。

前曲エンディングのシンセ音からシームレスに流れる⑤「People Got to Be Free」。でも曲調は全く正反対のロック。もちろんこの曲はラスカルズ時代の1968年のヒット曲のカバー。この曲が結局ラスカルズ最大のヒット曲となりました。マーティン・ルーサー・キングやケネディ大統領の暗殺事件をテーマとした楽曲。ラスカルズ時代の白熱した演奏があまりにも素晴らしかったので、こっちもアップしておきます。ラスカルズのバージョン、結構R&B色の濃い演奏ですが、フェリックスのソロのバージョンはかなりロック寄り。ギターソロはバジー・フェイトンです。

⑦「Love Is the First Day of Spring」はラスカルズのメンバーだった盟友エディ・ブリガッティとの共作。ポップン・ソウルといった感じの作品に仕上がってます。この後に続くちょっとダンサブルな⑧「Outside Your Window」や⑩「You Turned Me Around」。個人的には大好きな流れです。特にスティーヴ・ジョーダンのドラムが実に軽やか。「Outside Your Window」をアップしておきますが、特に彼のフィルインが素晴らしい。この曲でいえば、サビのハイハットとタムを絡ませたフィルイン、あとエンディングのソウルフルなコーラスに絡むドラミング、カッコいい!!あ、メインコーラスはルーサー・ヴァンドロスです。

本作の演奏の肝はスティーヴのドラムと思ってますが、それが証拠にイントロがドラムのフィルインで始まる曲が①③⑤⑥⑦⑧⑩と10曲中7曲もあります。しかも③⑤⑥⑦⑧⑩は同じ形態のフィルインですね(笑)。
ポップでソウルフルな楽曲、ブルーアイドソウルを代表するフェリックスのヴォーカル、24丁目バンドの素晴らしい演奏。実に聴きどころの多いアルバムです

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