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The Flying Burrito Brothers「The Flying Burrito Brothers」(1971)

来週、香港へ出張に行ってきます~。1年3か月前にも行っているので、さすがに大きな変化はないと思いますが、あの当時はコロナ明けで中国人も少なかったので、恐らく今は相当な熱気なんだろうなあと推測しております。

さてさて、今回はフライング・ブリトー・ブラザーズを採り上げます。
バーズを脱退したグラム・パーソンズとクリス・ヒルマンが結成したバンドとして知られてますが、カントリーロックという日本では今一つ人気のないジャンルが故に、その知名度も一般的にはあまり高くはないように思われます。私自身は名盤と称されるファーストやセカンドはもちろん聴いておりますが、個人的には今回ご紹介するサードに愛着を感じます。

カントリーロックのパイオニアでもあるグラムは、一方でドラッグ等問題行動も多く、1970年にクリスによってグラムはブリトーを解雇されてしまいます。その後釜に加わったのが当時無名だったリック・ロバーツです。
この第二期のメンバー、クリス・ヒルマン、リック・ロバーツ、バーニー・レドン、スニーキー・ピート・クライノウ、マイケル・クラークの5人のブリトー時代が一番自分にはフィットします。後にイーグルスを結成することとなる私の大好きなバーニーが在籍しておりますしね。

ファースト、セカンド共に、クリスとグラム・パーソンズが曲作りにおいても牽引しておりましたが、本作ではリック・ロバーツがその代わりを務めております。本作の最大の聴き所はそのリックが作った名曲②「Colorado」でしょう。
リックは大学進学までコロラドで過ごしてました。そしてこの曲は、夢を追いかけるためにコロラドから都会に出てきたものの、夢破れ、心が折れかかり、故郷コロラドへ帰りたいと歌われているもの。半分はリックの経験談に基づくものかもしれませんね。
グラムほどカントリーに偏っていない、ちょっとポップス寄りなカントリー。それがリックの持ち味で、この「Colorado」は歌詞と相俟って、非常に訴えかけてくるものがあります。歌詞をもうちょっと深く理解しながら曲を聴くと、もっとこの曲が好きになっていくと思います。

ジーン・クラーク作の④「Tried So Hard」。かなりバーズっぽいですよね。それもその筈、この曲はジーン・クラークが1967年に発表したファーストソロに収録されていたもの。
クリスとジーンはバーズで一時期一緒でしたし、カントリー好きなクリスはジーンの楽曲が当時から気に入っていたんでしょうね。ちなみにジーンはこのソロを発表後に、ダグ・ディラードとディラード&クラークを結成。名盤「The Fantastic Expedition of Dillard & Clark」にはバーニー・レドンが参加、そしてクリスも2曲でマンドリンを弾いてます。既にこの辺りからそれぞれのメンバーに深い交流があったんですよね。

ボブ・ディラン作の⑥「To Ramona」。こちらはディラン4枚目のアルバム「Another Side of Bob Dylan」に収録されていたナンバー。ブリトーらしく、というかこちらもどこかカントリー時代のバーズに似ていますね。もちろんバーズもディランの曲をアレンジするのが得意なバンドでした。
ブリトーはこのフォーキーなワルツを見事にカントリーワルツに仕上げてます。ディランの曲っていつも思うのですが、カバーされて「こんないい曲だったんだ」って気付かされるんですよね(笑)。

リック作のカントリーロックの⑦「Four Days of Rain」。
こちらはライヴバージョンをアップしておきます。力強い演奏ですよね。やっぱりこのバンド、ライヴバンドだったし、演奏力は高かったなあと感じます。フィドルが鳴ってますが、これはサポートで加わっていたバイロン・バーラインでしょうか。スニーキーのスティール・ギターとフィドルがマッチしてますね。唸るようなクリスのベースも好きだったりします。

ラストはリック作の⑩「Why Are You Crying」。バーニーのバンジョーが光ります。カントリーの色彩が強いですが、リックらしいメロディアスなナンバー。ドラムレス、そしてベースレス。リックのギターとバーニーのバンジョーだけでしょうか。簡素な演奏ですが、こういう曲もいいですね。

この後、バーニーとスニーキーがバンドを脱退(バーニーはイーグルス結成に至ります)。バンドの創始者であったクリスまで抜けてしまい、後を継ぐ形となったリックが最後はバンドを解散させることになります。カントリーロック界の中心的なバンド、人材が交差しあったバンドだったのですが、バンド自体の寿命は短いものでした。
そして1974年に新たなメンバーで新ブリトーは継続されていくことになります。


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