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The Kinks「Village Green Preservation Society」(1968)

キンクスの名盤の登場です。キンクスというと「You Realy Got Me」とか「All Of The Night」といったハードロック的なサウンドのイメージが強いんですが、本作はそういった要素は垣間見られず、どちらかというとソフトロックに近いポップスが楽しめます。

1966年の大ヒット曲「Sunny Afternoon」なんかはビートルズ中期の音にそっくりですね。キンクスもそういった意味ではビートルズと同じく、着実に進化を遂げていった訳で、それはひとえにレイ・デイヴィスという類稀なソングライターがいたからなんですね。
そのレイが満を持して1968年に発表したのが彼等の7枚目のオリジナルアルバムだったわけです。

本作はレイの愛読書であるディラン・トマスの「ミルクの森で」という詩劇をモチーフとしたもので、イギリスの町と村落生活をテーマとしたアルバムなんですが、当時はサイケやらハードロックが流行っていた時代。時代とは逆行したようなこのサウンドは、商業的には失敗に終わります。でも本作は当時から玄人筋からは名盤の呼び声が高かったようですね。
私も最初聴いたときはキンクスのイメージからあまりに遠いものでビックリしましたが、適度にレイドバックした感じが私の好みで、すっかり愛聴盤となっております。

1曲目がオープニングに相応しい、アルバムテーマソングです。①「The Village Green Preservation Society」。このスタジオライヴバージョンをアップしておきます。そこには初期キンクスの男臭さはありません。のどかな感じさえ覚える楽曲です。レイの表情も穏やかですよね。

私のお気に入りの③「Picture Book」。なんかヴォーカルは頼りな気だし、コーラスもヘタウマ(笑)。でもとてもポップで愛らしい曲。これがキンクスの曲・・・、違和感あるなあ。

本作においては⑤「Last Of The Steam-Powered Trains」のようなシカゴ・ブルースぽい曲は異色の曲かもしれません。こうしたギターリフを聴くと、どうしてもCCRを思い出してしまいます。2分55秒過ぎくらいからの展開は、いかにもひねくれたレイらしいアレンジですね。

⑩「Starstruck」は当時としては珍しいプロモーションビデオも制作されました。単に公園をメンバーが歌いながら歩いたりするだけの、何のひねりもないもので、笑ってしまいますが、当時としては動くキンクスが見れるだけでも貴重だったのでしょう。ここがVillage Greenだとは思わないですが、そういう意味合いもあったのかもしれません。
ただYouTubeにはこのプロモ、アップされていないようでしたので、音源だけでもどうぞ。ほのぼのとしたキンクス!

⑬「Wicked Annabella」はファズ・ギターが当時のサイケ感覚を連想させます。当時、ドアーズが人気を博していましたが、何となくドアーズのサウンドに似てなくもないです。ドアーズの大ヒット曲「Hello I Love You」はキンクスの「All Of The Night」のリフをパクったものだと言われたらしいですが、今度は逆にキンクスがドアースサウンドをパクったということでしょうか(個人的な勝手な連想です)。エンディングのサイケっぽいところなんか、いいですね。

本作は12曲Verと15曲Verが存在します。当初、1968年9月に12曲Verが発売されることが決定したのですが、直前にレイがミキシングのやり直しと曲の追加を主張し、結局発売が延期されます。そして11月に15曲Verが発表になったという次第。この12曲Verと15曲Ver、双方ともエンディングは⑮「People Take Pictures of Each Other」という軽快な曲。ハーパーズ・ビザールなんかがやりそうな、ちょっとソフトロック的な曲。個人的には大好きな1曲です。

ここでは僅かな曲しかご紹介出来ませんでしたが、全曲個性的で、ユニークな曲ばかりです。やっぱりアルバムとしても完成度が高いですね。


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