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Rod Stewart「A Night on the Town」(1976)

本作発表の前年、ロッド・スチュアートはワーナー移籍第一弾のアルバムとなる不朽の名作「Atlantic Crossing」を発表。プロデューサーにトム・ダウド、レコーディングにはマッスル・ショールズ・サウンドを使い、サザンソウルへ傾倒していきます。
そして本作は引き続きプロデューサーにトム・ダウド、レコーディングにマッスル・ショールズだけでなく、ハリウッドのチェロキー・レコーディング・スタジオも使用。その関係でジョー・ウォルッシュやデイヴィッド・フォスター、アンディ・ニューマーク等が参加してます。
モネの絵を用いたジャケットのデザインもいいですね。

この当時のロッドはブリティッシュ・フォーク、スワンプ、サザンソウル的な味わいがとても魅力で、特に本作の①~④(LPでいうところのA面、本作ではSlow Halfと呼んでいる)の流れが最高です。

①「Tonight's the Night (Gonna Be Alright)」は全米No.1を記録した大ヒット曲。といっても商業的な香りよりも、豊潤な音楽の深みが感じられる1曲。そもそもアルバム1曲目に、こうしたブリティッシュ・フォーク&サザン・ソウル的なスローな楽曲を持ってくるあたり、よほどの自信作だったのでしょう。当時の恋人、ブリット・エクランドの語りも効果的。ちなみにブリットはロッドとのロマンスの後、元ストレイ・キャッツのスリム・ジム・ファントムと結婚しています。

ロッドのオリジナルアルバムにはセンスのいいカバー曲が数曲収録されてますが、本作でもしっかりそういった楽曲が収録されてます。そのうちの1曲、キャット・スティーヴンスの②「The First Cut Is the Deepest」。しかしロッドのハスキーヴォイスに歌われると、完全にロッドのオリジナルと勘違いしてしまいますね。これも味わい深い曲。

本作中、いちばんのお気に入りは④「The Killing of Georgie, Pts. 1 & 2」。これはロッドのオリジナルで、殺されたロッドの友人、ジョージーはゲイなのですが、彼を歌ったものです。
1976年当時にこうした歌を歌っていたロッド、流石ですね。
これもブリティッシュ・フォーク&サザン・ソウル的な名曲。淡々と同じメロディを繰り返すだけですが、パートⅡへ移行するところなど結構アレンジが凝ってます。

⑥「Pretty Flamingo」はマンフレッド・マンのカバー。こうしたフェイシズに通じるダウンビート的なロックンロールはロッドに似合ってますね。

本作では異色のバラード⑨「Trade Winds」。ロバータ・フラックもカバーした名曲で、あのRalph MacDonaldの作品です。
甘いラブソングとは違い、世間の荒波を貿易風に捉えた渋い1曲。①~④のフォーキーさは、ここでは影を潜め、むしろゴスペルタッチのコーラス、渋いサックス等かなりソウル色の強い楽曲に仕上がってます。メロウなキーボードはデヴィッド・フォスターでしょうか?クレジットがないので分かりませんが。

個人的にはこの頃のロッドが一番好きですね。エイティーズ世代にとって、ロッドってゲテモノ的な印象もあるのですが、70年代初期~中期のロックしていた頃のロッド、本当にかっこいい。
本作、渋い1枚ですが、ロッドのセンスが光ってます。


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