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Night Ranger「Midnight Madness」(1982)

80年代前半のロックは熱かった。特に産業ロックとも呼ばれていたアメリカン・ロックはジャーニーやTOTOを代表格に、様々なバンドが商業的にも成功を収めておりました。
そんな中でも私にとって思い出深いバンドがナイト・レンジャーです。とにかくメジャーデビューシングルの「Don't Tell Me You Love Me」がカッコよく、当時中学生だった私の多感な心を鷲づかみにしていったのでした。彼らはツインギター、ツインヴォーカルという特異な形態のバンドで、5人のメンバーそれぞれが自分の役割をしっかり担っていたバンドらしいバンドでしたね。それから当時のアイドル/シブがき隊の「ZOKKON 命」のイントロがこの曲のアレンジを拝借しており、それを苦々しく思ったりしていたものです。

今回は彼らのセカンドアルバムをご紹介します。もちろんこのアルバムはリアルタイムでLP(CDではありません)を購入し、ジャケットを部屋に飾ったりして、何回も聴いてました。

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ジャケットの左下がドラム&ヴォーカルのケリー・ケイギー、真ん中がキーボードのアラン・フィッツジェラルド、彼はイケ面メンバーが揃っている中で、かなり存在感がありませんでしたが、元モントローズのメンバーで、サミー・ヘイガーともバンドを組んでいた実力者です。そして右下がギターのジェフ・ワトソン。左上がギターのブラッド・ギルス。彼は一旦バンドを抜けて、ランディ・ローズ亡き後のオジー・オズボーン・バンドのギタリストを務めましたが、ナイト・レンジャーがメジャー・デビューするに際して、再びめでたくバンド復帰した経緯にあります。そして右上がベース&ヴォーカルのジャック・ブレイズ。プロデューサーはパット・グラッサー。普通名盤のプロデューサーって、名前が知られた人が多いんですが、不思議とこのパットという人、ナイト・レンジャー以外の仕事はあまり知られてません。

本作はデビューアルバム発表の翌年、1983年に発表されたアルバム。当時ひょっとしたら本国アメリカよりも、日本での知名度のほうが高かったかもしれません。このアルバムからケリー作、そしてリード・ヴォーカルを務める④「Sister Christian」が全米第5位の大ヒットを記録します。

その「Sister Christian」のライヴ映像。ドラマーが舞台の右側に陣取るというのはロック史上、ナイト・レンジャーだけかもしれません。なぜ右側なのか・・・、おそらくケリーがマイクに向かって歌うとハイハット側の向かって左側を向いて歌うから、自分の歌う顔を皆に見て貰おうということだと思うのですが・・・、実に変則的なステージですね。
この曲、見せ場はもちろんケリーのヴォーカルですが、でもブラッドのアーミングを駆使したギターソロも素敵です。

そして順番は逆になりましたが、名曲①「Rock In America」です。実はファースト・シングルは、彼らの名刺代わり的なツインリードを売りにした①「Rock In America」で、ポップでありながらもハードなロックとタイトルから、彼らが自信を持って世に送り出した筈で、そのファーストシングルが最高位全米51位とかなりガッカリな結果に終わる一方、ロッカバラードの「Sister Christian」が大ヒットを記録してしまったという皮肉な結果・・・。これがある意味ナイト・レンジャーの行く末を狂わしていくことになった要因かもしれません。                            この曲はジャックとブラッドの共作ですが、ブラッドのアーミング奏法と、ジェフのオクトパス奏法の個性的なギターソロがじっくり堪能出来る名作ですね。もちろんギターソロだけでなく、楽曲としてもポップで実によく出来たロック・アンセム・ソングです。でもなぜこの曲が最高位51位に終わってしまったのか、よくわかりませんね。

②「Rumours In The Air」は当時の商業ロックの典型的な楽曲ですが、イントロのアランの幻想的なキーボードが印象的です。この曲を下支えしているのはこのアランのキーボードかもしれません。それにしてもアップした映像のブラッドのギターソロ・・・、弾きまくってますね。

もう1曲、当時を偲ばせる商業ロックを。アップした映像は⑦「When You Close Your Eyes」のPVですが、このPVは全く記憶にありませんね。ジェフも珍しくフライングVを使ってます。この曲はジャックとケリーのツイン・ヴォーカルだったんですね。

最後に美しい1曲を・・・、これが本作のエンディングトラックです。⑨「Let Him Run」、ジェフとブラッド、ケリーの共作ですが、恐らくジェフのアコースティックがメインなので、彼を中心に作った楽曲かと思われます。

こうしていろいろと聴いていると、このバンドっていろいろな楽曲をこなす器用な方々だったんだなあって思います。でも残念ながら商業的なヒットはバラード系ばかりで、そこに不満が募っていったということでしょうね。あ、でも彼等、未だに現役です。当時、オジー・オズボーン・バンド参加というサクセスストーリーを蹴って、ナイト・レンジャーに賭けたブラッド・ギルスは今もナイト・レンジャーを引っ張っております。


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