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Mike Bloomfield, Al Kooper & Steve Stills 「Super Session」 (1968)

1968年4月30日、BS&Tを脱退したアル・クーパーは、すぐにコロンビア・レコードと専属プロデューサー契約を結び、画期的なレコード制作をすべく、アイデアを煮詰めていました。その内の一つのアイデアが、同年4月に発表されていたモビー・グレープの「ワウ」。このアルバム、初盤にセッションアルバムの「グレープ・ジャム」が同封されていた画期的なアルバムなんですが、そのセッションに呼ばれていたのがアル・クーパーであり、マイク・ブルームフィールドでした。
そのジャムセッションに大いに感化されたアルは、自らそのセッションを手掛けようと試みます。当然、パートナーとなり得るのはマイク。こうして1968年5月28日にそのセッションがスタートします。

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マイク・ブルームフィールドは、シカゴ大学在学中、1963年にポール・バターフィールド・ブルース・バンドに加入。1965年7月、伝説のニューポート・フォーク・フェスティヴァルに同バンドとして参加する一方、ボブ・ディランのバックバンドにもアルと共に参加。このステージ、ディランがギターをアコギからエレキに持ち替えたものとして有名で、ロックの原点とも云われています。ディランの横で、堂々とブルージーなギターを弾いているのがマイク。フォークの神様の横で、よくこれだけ弾けたものです。

マイクはブルースバンドで2枚のアルバムに参加した後、1967年、エレクトリック・フラッグを結成しますが、1枚のアルバムを発表した後、脱退。それからモビーグレープのセッション→本作へと流れていきます。

ちなみに本作のベースはハーヴィー・ブルックス。この人、ディランの「追憶のハイウェイ」やマイルスの「ビッチズ・ブリュー」といった名盤にも参加している凄腕ミュージシャン。ドラムのエディ・ホーはMFQ(モダンフォークカルテット)に一時期加入、その後、スタジオミュージシャンとなり、モンキーズの楽曲等に参加していました。そして二人とも、マイクと共に、ブルースバンドに在籍しておりました。

肝心なことを言い忘れてました(笑)。実はマイク、不眠症で、本作制作中に書き置きを残し消えてしまうというハプニングが起きます(この後発表される「フィルモアの奇蹟」のステージも同様な事象が発生するのですが)。ですから5月29日のセッションは違うギタリストを探さないといけないという緊急事態が発生。ジェリー・ガルシアやランディ・カルフォルニアに声が掛かったと云われていますが、了承を得られたのは当時バッファロー・スプリングフィールドが解散状態で、フリーだったスティーヴン・スティルス。ということで本作は①~⑤がマイクとアル、⑥~⑨がスティーヴとアル…という構成なのです。

強力なブルースは①「Albert's Shuffle」と⑤「Really」でしょうか。私は正直ブルースは苦手。でも1曲目のアルとマイクの共作の「Albert's Shuffle」の白熱した演奏には共感が持てます。ブルージーなギターと、ちょっとサイケがかったオルガンのバトルといいましょうか。この時代の熱い音のようなものを感じます。

③「Man's Temptation」はカーディス・メイフィールドの作品。1963年、ジーン・チャンドラーが発表。カーティスも自身のバンド、インプレッションズで1966年に発表してます。こちらを頼りないアルのヴォーカルでカバー。アルのヴォーカルはソウルフルとは対照的な、か細いもの(笑)。だから違和感あります。

世間では圧倒的にマイクの素晴らしいギタープレイが光るA面にフォーカスが当たり、B面は急遽担ぎ出されたスティーヴンの準備不足を指摘する声が多いですね。確かにB面は深みがないと言われればそれまでなんですが。ただポップス系が好きな私はB面の方がお気に入りです。
⑥「It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train to Cry」はボブ・ディランの作品。名作「追憶のハイウェイ」からのナンバー。ディランはアコースティックな感じで、テンポを遅く、のらりくらりと歌ってます。それをここではアップテンポに、ちょっと60年代風ポップスに仕上げてます。ディランの作品には聞こえません(笑)。間奏のスティーヴンのギターソロもなかなかのもの。

⑦「Season of the Witch」はドノヴァンのサイケ作品。ドノヴァンのバージョンもドラムは今回本作に参加しているエディ・ホー。そしてギターはジミー・ペイジらしい。それをここでは、少しだけ明るくポップに、そしてソウルフルに仕上げているかなと感じます。ドノヴァンのバージョンはやはりサイケ色が強いですが、こちらはもっと聴きやすい。それにしてもアルのヴォーカルは弱い(苦笑)。スティーヴン、俺に変わってくれ!って思ったんじゃないですか。そのスティーヴンのギタープレイ、ここでも聴き応えあります。

⑧「You Don't Love Me」はウィリー・コブズのメンフィス・ソウル的なナンバー。これをジミヘンのような仕上がりにアレンジしてます。そういえばジミヘンとスティーヴンも交流がありましたね。ファンクチューンに仕立てて、結構カッコいいですね。

収録曲が足りなくなったのか、エンディングトラックは、ベースのハーヴェイのインストナンバーの⑨「Harvey's Tune」。ここではスティーヴン、居るの??って感じ。このホーンなんか聴いていると、BS&Tを連想させますね。楽曲自体はイージーリスニング風なバラード。実は結構好きです。

実はスティーヴン・スティルス、結構好きなので、もっと本領発揮してくれ!って思わせるアルバムですね。

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