Paul Simon「The Paul Simon Songbook」(1965)
ポール・サイモンが、サイモン&ガーファンクルのデビューアルバムが全く売れずに失意の中、ロンドンへ渡英、制作したソロアルバム。
実に荒削りなポールのヴォーカルとアコギ。そこがまた新鮮でもあり、力強くもあるアルバムです。
1964年、サイモン&ガーファンクルはデビューアルバム「Wednesday Morning,3A.M.」を発表しますが、このアルバム、3000枚しか売れませんでした。そしてポールは英国へ、アートは大学院へ戻ってしまいます。
ポールは1年間、英国フォーク歌手等と交流を深め、本作を発表します。また一方、プロデューサーのトム・ウィルソンはフォークロックが隆盛を極めたタイミングにおいて、デビューアルバムに収録されていたアコギのみの「The Sound of Silence」を勝手にフォークロックのアレンジを施し、1965年8月に新たに発表。なんと翌年、全米1位を記録してしまうのです。
ニューヴァージョン「The Sound of Silence」のヒットを11月に英国で知ったポールは激怒するとともに急遽、米国へ戻り、めでたくS&Gとしてセカンドアルバムの制作に取り掛かります。そういった意味では本作、名ソングライターとなるポールの、前夜祭的な赤裸々な1枚です。
まずは①「I Am A Rock」の荒削りながらもパワーを感じさせるポールの力量に驚かされます。アコギ1本の素朴なレコーディングながらも、イントロのギターのハンマリングから聴かせてくれます。
②「Leaves That Are Green」はポールのスリーフィンガーズ奏法が美しいフォーク。「緑の木の葉は茶色に変わってゆく」と人生の流れを淡々と唄ってます。
私のアコギの練習曲だった④「April Come She Will」。S&Gのアレンジと殆ど変わりません。このアコギのイントロ、比較的簡単ですが、やはりこんな素晴らしいメロディを紡ぎだすポールは天才的ですね。久しぶりにアコギを弾きたくなってきました・・・。
彼等の運命の1曲、⑤「The Sound Of Silence」。
バーズがボブ・ディランの「Mr.Tambourine Man」をロック調にアレンジして大ヒットを記録したのが1965年。二匹目のどじょう(?)を狙ったコロンビアレコードがこの曲に白羽の矢を立てたことがS&Gの運命を大きく変えていきました。私はこのフォークロックヴァージョンが記憶に焼きついてしまっているせいか、やはりフォークロックヴァージョンが好みです(ポール、スミマセン・・・)。
ただしアコギヴァージョンの方が、より歌詞の持つ繊細さが生々しく伝わってきます。
軽快な⑦「He Was My Brother」なんかも歌詞はメッセージ色が強いですね。S&Gとしての演奏をアップしておきます。美しいハーモニーです。
まだまだ青臭い部分が多いアルバムですが、それ以上に歌手、ソングライターとしての自信が漲っているアルバムですね。アートはこのアルバムを聴いたとき、ポールの成長に目を見張ったとのことです。
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