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The Weeknd「Dawn FM」(2022)

ザ・ウィークエンドもシティポップに魅せられて…

今年最初の新譜ご紹介はザ・ウィークエンドです。
ザ・ウィークエンドってご存じでしょうか? 今、米国ではブルーノ・マーズのような、どこか懐かしい曲をリメイクするようなアーチストがウケてますが、このザ・ウィークエンド(バンドじゃなくてソロアーチストです)もその流れを汲んだ方。米国ではビッグスターですね。

正直、私の苦手なエレクトロ・ポップを得意とする方なので、本来ここでご紹介すべきアーチストでもないのですが、実はご紹介しないといけない曲がここに収録されていたんです
今、シティ・ポップと呼ばれるジャンルが世界的にブレイクしており、松原みき「真夜中のドア」、竹内まりや「プラスティック・ラブ」なんかが再注目されてますね。間違いなくザ・ウィークエンドもその影響を受けていると思いますが、その彼が、ついに日本のシティポップをカバーしてしまいました。その曲が亜蘭知子さんの「Midnight Pretenders」。あのザ・ウィークエンドがカバー(サンプリングって言ってますが)するくらいですから、今年は日本のシティポップが世界的に大きく更に注目されるかもしれません。

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ザ・ウィークエンド、本名、エイベル・マッコネン・テスファイはカナダ出身のシンガーソングライター。2010年にインターネット上に楽曲をアップロードして、ネット上で評判となり、本格的なデビューを飾ってます。今まで4枚のアルバムを発表し、つい先週、5枚目の新作を発表したばかり。ちなみに英語のスペルはThe Weekndとeが抜けてますので。
個人的には彼の楽曲はキャッチーなので結構好きなのですが、80年代前半のUKテクノを思わせるチープなアレンジ(わざとそうしていると思いますが)だけはどうも好きになれません(苦笑)。

そんな中で、ご紹介したい曲、⑦「Out Of Time」は聴きやすいアレンジかなと。それもその筈、この曲が日本のシティポップのカバーなので。本作中、一番メロウな楽曲です。

この原曲が1983年に発表された亜蘭知子の「浮遊空間」というアルバムからの1曲「Midnight Pretenders」。

同じじゃないですか(笑)。作詞:亜蘭知子、作曲:織田哲郎、アレンジはフェンス・オブ・ディフェンスの西村麻聡。TUBEがブレイクする前のビーイングのゴールデンコンビが作ったメロウチューンです。ちなみに私の音楽志向なら、ザ・ウィークエンドよりも亜蘭知子のアルバムをご紹介すべきですが、このアルバム「浮遊空間」、私の好みはこの曲くらいで、他はニュー・ウェーブを意識したデジタルロック中心で、私の好みではないんですよね。

「Midnight Pretenders」は数年前からシティポップとして紹介されており、ザ・ウィークエンドの感性にフィットしたんでしょうね。亜蘭さんも織田さん(表記の間違いがあるようですが)もクレジットも入っているので公認カバーですが、世界的に人気のあるザ・ウィークエンドが日本のシティポップをカバーしたってことは、やはりシティポップのクオリティの高さがグローバルベースに証明されたようで、ちょっと嬉しいですね。

ちなみにこの「Out Of Time」の前には⑥「A Tale By Quincy」という、クィンシー・ジョーンズのキャリアを自身が振り返ったインタールードが収録されてます。これがまたインタールードとして秀逸。ここからの「Out Of Time」の流れが大好きです。

この「Dawn FM」というアルバムは、架空のFM局を想定したコンセプトアルバムです。「Out Of Time」のエンディングでもDJのナレーションが入ってますが、本作の聴き所は⑥「A Tale By Quincy」~⑧「Here We Go...Again」のメロウな流れかと思います。
その⑧「Here We Go...Again」もどうぞ。
フューチャーリング、Tyler, The Creator。テイラー・ザ・クリエイターはラッパーですが、このメロウな流れのラップ…、意外と聴けますね。こちらのエンディングにはDawn FMのジングルが聴けます。

昨年8月にシングルとして発表されていたのが④「Take My Breath」。
どこかで聴いたことのあるようなメロディ。80年代UKテクノなチープなシンセ(笑)。この世界観がザ・ウィークエンドの持ち味です。ファルセットを駆使するような唱法もポップに聴こえる要因かもしれません。彼はマイケル・ジャクソンからも影響を受けていると語ってますが、この歌い方もどこかマイケルっぽい。

めちゃめちゃシンセポップな⑮「Less Than Zero
これもシングルカットされそうな予感。シンセが奏でるメロディがやたらと耳に残ります。時代はメロディ重視の昔に回帰しているのでしょうか。時代に取り残され感のある私としては、こうして理屈抜きに楽しめる昔のような音楽が、今またこうして最新の音楽として聴けることに嬉しさを感じます。前述のシティポップへの回帰もそれと同じ流れとの解釈です。

如何だったでしょうか。ザ・ウィークエンドの80年代テクノ・ポップ風な味付けはあまり好みじゃないんですが、どこか懐かしいサウンドが耳に心地いいんですよね。音楽にも温故知新の風が吹いていますね。

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