見出し画像

Steely Dan「Can't Buy a Thrill」(1972)

カーラ・ボノフが9月に来日すると思ったら、意外にも達郎さんの9月6日、NHKホール、当選致しました。実は過去に何回か抽選に応募していましたが、今回が初当選&初参戦。ご存じのように達郎さんのご発言が大きな波紋を拡げており、私自身もサンソンを聴いて暫くは複雑な心境でした。ただこの当選の報に接し、やっぱり私は達郎さんの音楽を生で聴いてみたいし、彼の音楽(特に「ARTISAN」まで)が大好きであることに変わりはなく、いつもと変わりなく聴き続けていくと思います。

さて、同じ職人気質の音楽という少し強引な括りですが、今回はスティーリー・ダンです。本作は言わずと知れた彼等のデビューアルバム。

彼等のグループ名の由来も卑猥だし、このジャケットも決して美しいものじゃないですね(苦笑)。後に洒落た音楽に進化していく彼等の真の姿は、このジャケットのように一筋縄ではいかない、ひねくれたもの…なんですよね。このデビューアルバムでも本領発揮。音楽的にもユニークなものとなってます。

イントロから怪しげでありながらも洒落たムードを漂わせている①「Do It Again」。本作からファーストシングルですね。
ラテン・フィーリングたっぷりのグルーヴ感がいいですね~。ジム・ホッダーのドラムとゲスト参加のヴィクター・フェルドマンのパーカッションがいい仕事してます。また間奏のギターソロが効果的に使われてますが、こちらはダニー・ダイアスのエレクトリック・シタールです。それに続くドナルド・フェイゲンのオルガン・ソロも味があっていいんですよね。

ちなみにスティーリー・ダンのデビューシングルは「Do It Again」ではなく、「Dallas」という楽曲。しかもリード・ヴォーカルはドナルド・フェイゲンではなく、ドラムのジム・ホッダー。曲調はジェフ・バクスターが奏でるスティール・ギターが印象的なウエストコースト風ロック。もちろんフェイゲン&ベッカーの作品です。ドナルド・フェイゲンはヴォーカルに自信がなかったようで、一方ジム・ホッダーは既に前のバンドでリード・ヴォーカルとしての実績もあったことから、こうした起用となったものと思われます。本作でも④「Midnight Cruiser」はジムのリード・ヴォーカルです。

ちょっと洒落たジャージーな1曲が⑤「Only a Fool Would Say That」。
こちらはドナルドとデヴィッド・パーマーが歌ってます。デヴィッドは、ドナルドが歌が苦手で、多分ステージでのリードヴォーカル要因として加入したと思われ、本作では②⑧の2曲でリードヴォーカルを務めてます。ここでのジェフのギターは、ウエス・モンゴメリーやデヴィッド・T・ウォーカーを思わせるしなやかなプレイ。オシャレですね~。ちなみにエンディングで「ホント、ホント」と一瞬日本語??と勘違いしてしまうセリフが飛び出してきますが、これはジェフがスペイン語を喋っているようです。

こちらもお馴染みの1曲の⑥「Reelin' In the Years」。本作からのセカンドシングルです。
改めて聴いてみると結構ハードロックしてみますよね。ツインギターが実にカッコいい。そしてドナルドの投げやりな歌い方までがカッコよく聴こえます。この歌い方とかギターのグルーヴ感・疾走感とか、後のシン・リジィに似ているなあと感じました。今更ながらの発見(笑)。
こちらの貴重なライヴ映像がありました。TV番組出演時のもので、このテのものは口パクが多いんですが、この映像、どうも口パクではなさそうです。デヴィッド・パーマーもいますね。あとギターソロはデニー・ダイアスが中心に弾いていたんですね~。この映像を拝見し、初期バンド時代のスティーリーって、かなりコーラスがイケてるバンドだったんだあなと痛感しました(かなりドゥービーに近いイメージ)。

本作はB面、なかでも⑧⑨の2曲が後期スティーリー・ダンのサウンドとは全く違う、かなり興味深いナンバー、かつ私の好みだったりします。⑧「Brooklyn (Owes the Charmer Under Me)」はジェフの奏でるスティール・ギターが心地よいウエストコースト風ロックで非常に味わい深いナンバー。
何も知らずにこの曲を聴いたら、これがスティーリー・ダンだとは分からないかもしれません。ヴォーカルはデヴィッド・パーマー。ドナルドほど癖はなく、曲調に合わせてかなりマイルドなヴォーカルです。この曲はエイミー・マンもカバーしております。

スティーリー・ダンらしからぬポップな⑨「Change of the Guard」はジェフのギター・プレイが光る1曲。
曲自体は彼等にしては珍しく、聴きやすいポップス。親しみやすいコーラスも飛び出してきます。中盤からはジェフ・バクスターの変幻自在の長いギターソロが聞けます。フランジャーを使ったようなジェットサウンドも…。この当時はこんなに好き勝手に弾いていたんですね(笑)。

デビュー当時はまだまだバンドサウンドの色彩が強いですね。但し曲そのもの(そして歌詞も)は既にスティーリー・ダンらしさが存分に発揮されております。本作も改めて聴いて、聴き所満載…と感じました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?