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The Rascals「Peaceful World」(1971)

私がはじめて購入した(レコードではなく)CDはギルバート・オサリバンのベスト盤なんですが、次に購入したのラスカルズのベスト盤です。
初めて「Groovin'」を聴いたときの衝撃は忘れられませんね。小鳥のさえずりを含むのどかなイントロを聴いただけで、けだるい夏の午後を連想させる曲調は、今聴いても色褪せない素晴らしい楽曲です。山下達郎先生がカバーし、それがサンソンで流れているので、よく知っている方も多いでしょう。

本作品はそのラスカルズ後期の代表作品。1964年のデビュー以来、ブルー・アイド・ソウル(白人のソウル音楽の総称)の代表格と目されてきた彼らが、ついにそれを極めたような一枚。エディ・ブリガッティとジーン・コーニッシュが脱退し、フェリックス・キャヴァリエとディノ・ダネリの2人となったことで、多彩なセッション・ミュージシャンが参加。それが功を奏した格好です。プロデュースはフェリックス自身。ジャケットのデザインはポール・ゴーギャンの絵画を使用。

当時はアナログレコード2枚組の大作として発表されましたが、全くヒットしませんでした。
それもそのはず。本作品の音、特にハープの調べが美しい⑨「Little Dove」からジャズの色彩が濃くなっていき、表題曲⑫「Peaceful World」にいたっては21分以上に及ぶインプロビゼーションが繰り広げられます。LP2枚組なのに全12曲。「Groovin'」に耳が馴染んでいるリスナーには違和感を覚えるかもしれませんね。基本はニュー・ソウルの音。フェリックス・キャヴァリエの声は相変わらずソウルフルですね。また本作品はあのバジー・フェイトン、ラルフ・マクドナルド、チャック・レイニー、ロバート・ポップウェル等が参加。演奏水準はかなり高いです。

②「In And Out Of Love」では間奏がシュガー・ベイブの「Show」に似ている部分もあります。山下達郎がラスカルズ好きであることは有名ですね。

ちょっとポップなソウルの⑦「Happy Song」。70年代R&Bの香りがするベストトラック。演奏も熱い。細かい動きのベースはチャック・レイニーでしょう。

サックスをフューチャーした⑧「Love Letter」。
音楽自体は60年代R&B的な楽曲。ただバックの演奏が名うてのミュージシャン揃いなので、もうちょっと洗練されたような音ですね。フェリックスのヴォーカルやオルガンは相変わらずジェームス・ブラウン等を彷彿させるようなソウルフルなもの。間奏の演奏なんか、実に熱い!!

冒頭記述の通りSide3(C面)からは音作りがちょっと変わってきます。この⑨からのトラックが、LPでいうと2枚目にあたりますので、発表当時は2枚目はちょっと…という方も多かったと思われます。
⑨「Little Dove」など、ハープが鳴りまくるヒーリングサウンドですよ(でもソウルっぽいところがフェリックスの凄いところ)。ちなみにこの曲のベースはロン・カーターです。

⑩「Visit to Mother Nature Land」はアフリカンなリズムを用いた意欲作。
フルートを効果的に用いた実験的なサウンド、かなりマーヴィン・ゲイに近いサウンドに思えますが、こういうのは好き嫌いが分かれそうですが、私は好みですね~。このリズム隊ディノとラルフ・マクドナルドのパーカッションが実にグルーヴィーでいいです。

2枚目はマーヴィン・ゲイ、ダニー・ハザウェイ、もうちょっというとスティーリーダン等が好きな人は堪らないかもしれません。バジー・フェイトンの弾きまくりの素晴らしいギターも聴けます。
この2枚目があっての本作。また一部ではフェリックス・キャヴァリエはブライアン・ウィルソンと同様、音作りの天才であると言われてますが、私もそう思います。

70年代のニュー・ソウルの音が好きな方は是非一聴してみてください。絶対のお薦め盤です。

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