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Fools Gold 「Mr. Lucky」 (1977)

隠れたAORの名盤

おはようございます!
今回は意外な1枚、期待してなかったのに、想像以上に素晴らしかった1枚、フールズ・ゴールドのセカンドをご紹介します。

イーグルスのフォロワーとして有名だったフールズ・ゴールドですが、その活動は僅か2年。しかも発表された2枚のアルバムは、各々色合いが違います。中心メンバーはトム・ケリーデニー・ヘンソン。トム・ケリーと聞いて、ピンと来られた方はAORフリークですね。

でもデビュー当時は彼らはカントリーロック中心のバンドでした。デビュー前はダン・フォーゲルバーグのバックバンドを務めており、その時一緒だったダグ・リヴィングストンとロン・グライネルの4人でバンドを結成。1976年に発表されたファーストアルバムはイーグルスのプロデューサーとしても著名なグリン・ジョンズ、グレン・フライ等が手掛け、演奏にはジョー・ウォルシュとドン・フェルダーが参加。もう完全にイーグルス・カラーですね。実際、その音も爽やかなカントリー・ロックが中心でした。

そして本作のセカンドなんですが、プロデュースはキース・オルセンが担当。キース・オルセンは1975年にフリードウッドマックの「ファンタスティック・マック」を手掛け、そのアルバムが超特大のヒットとなり、一躍著名なプロデューサーの仲間入りを果たします。後にフォリナーやリック・スプリングフィールド、ホワイトスネイクといったアーチストを手掛けることになるのですが、きっとキースはこの当時、フールズ・ゴールドに可能性を見出したのしょう。実際、バンドメンバーが居たにも関わらず、後にTOTOを結成することになるジェフ・ポーカロデヴィッド・ペイチデヴィッド・フォスタートム・スコット等を起用。このセカンドアルバムを、AOR仕立てにしてしまいます。

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本作の魅力は以下3点。
トムとデニーが書く楽曲の素晴らしさ
爽やかなコーラス(トムのハイトーン・コーラス)
ジェフ・ポーカロのタイトなドラム

アルバムトップの①「Sweet Country Air」からそれらの魅力が溢れ出てます。ギターこそスティーヴ・ルカサーとかジェイ・グレイドンではないので、AOR色は感じさせないのですが、イントロの力強いピアノからAOR感たっぷり。もちろんフォスターの演奏です。そして聴いただけで彼と分かるジェフのドラミング、ハイトーンなコーラス、これらすべてがAORを感じさせます。ベースはマイク・ポーカロ
ちなみにこの曲、ボズの「Lido Shuffle」に似ていると感じるのは私だけでしょうか。もちろん「Lido Shuffle」のドラムもジェフです。ジェフはこうしたシャッフルビートのグルーヴ感を叩き出すのが上手い。

一転、②「I Can Hear the Whistle」は往年のファンを喜ばすような軽快なカントリーロック。カントリーも大好きな私にとっては、こちらも魅力あふれる楽曲に狂喜乱舞(笑)。それにしてもこのカントリー系のドラムはジェフが叩いているのでしょうか。あまりタイトにも聞こえないし、クレジットにはありませんが、ひょっとしたらオリジナルメンバーのロン・グライネルが叩いているのかもしれません。

イントロもなく始まる③「Wouldn't I Love to Love You?」はトム・ケリー単独の作品。トムは後にAOR界では最も売れっ子のコーラスのひとりとして名を馳せていきますが、以降もコンポーザーとしても実力を発揮。マドンナの「Like A Virgin」やバングルスの「Eternal Flame」等、ヒット作を生み出していきます。この曲はそういったトムの才能を如何なく発揮した名バラードです。イントロこそちょっとカントリーっぽい味付けが感じられますが、コーラスなんかが入ってくる辺りから、AORっぽいバラードに。名曲ですね~。

またカッコいいAORチューンが来ました。④「Runnin' and Hidin'」もポーカロ兄弟が紡ぎだす強力なファンクに、キーボードやトムとデニーのヴォーカルも力強いものが感じられます。土臭いスライドギターはワディ・ワクテル

カスタネットの音が印象的な⑥「Gypsy Brew」はカントリーロックを寄りAORに近づけたようなロックナンバー。ここでもジェフのタイトなドラミングと、トムの爽やかなコーラスが実に心地いい。私の大好きなナンバーです。

アルバムのタイトルトラックの⑦「Mr. Lucky」だけは異色のナンバー。ファンク・チューンですね。タワー・オブ・パワーがやりそうなファンクといえば分かり易いでしょうか。意欲的なナンバーですが、個人的には彼らのコーラスが活かしきれておらず、消化不良のナンバーのような気もします。

プロデューサーのキース・オルセンがやり過ぎたばっかりに本作、コストがかかり過ぎてしまいます。もともとフールズ・ゴールドってアリスタからデビューしたんですが、あまりにコストが嵩んだので、アリスタも匙を投げてしまい、結果本作はエピックから発表されます(商業的には本作ヒットには至らず、バンドは解散するのですが)。でもこのキースのお陰で、こんな素晴らしいアルバムが今も聴ける幸せを噛みしております(笑)。


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