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Jackson Browne「Running on Empty」(1977)

渡辺貞夫さんの新作「PEACE」が心地いい。飲み会の帰り、疲れた体に聴くにはピッタリのバラードアルバムですが、驚くべきことに貞夫さん、御年91歳! まだまだ現役…、凄いですね。

さて、今回はあまりにも有名なライヴアルバムです。
以前、ヴァレリー・カーターの「The Way It Is」を採り上げた際に、彼女とジャクソン・ブラウン、ローウェル・ジョージの共作の「Love Needs A Heart」をご紹介しましたが、その曲が収録されたジャクソン・ブラウンのアルバム(つまり本作)がまだご紹介していなかったことに気付き、早速採り上げることにしました。

1976年、ジャクソン・ブラウンはツアーやレコ―ディングで多忙を極めていましたが、そんな中「Pretender」の制作途中、妻フィリスから「私、自殺する…」と連絡が入ります。こうしたことは何度かあったようですが、今度は本当に亡くなってしまいます。寂しさからの自殺なのか…。
そういったことがあった上で、本作ではツアーをテーマとしたライヴアルバムを発表します。もうジャクソンにはツアーが拠り所だったのでしょうか。メンバーとの演奏、ファンの前での演奏、そうすることで悲しみを紛らわしていたのかもしれません。

1977年の全米ツアー中に収録された音源。コンサート会場はもちろん、バックステージ、ツアーバス、ホテル等にて収録された全10曲。通常のライヴアルバムと違うのは、全曲が過去発表されたアルバムには収録されていない音源であること。つまりある意味、通算5枚目のオリジナルアルバムともいえます。ジャクソン・ブラウン単独作が2曲、共作が4曲、カバーが4曲という構成です。

アルバムタイトルトラックの①「Running on Empty」が象徴的ですね。
全身全霊を尽くして、走り続ける…、愛する人を失くしてしまったやり場のない自分に対する怒り。そうすることでしか自分を慰めようがないというジャクソンの気持ちがよく表れており、泣けてきます。
アップした映像でもお分かりの通り、本作参加メンバーはザ・セクション+デヴィッド・リンドレー、ローズマリー・バトラー、ダグ・ヘイワード。デヴィッドのスライドが光ります。カチッとした演奏もカッコいい。

ダニー・オキーフが1972年に発表した②「The Road」。
こちらをジャクソン・ブラウンは自らの歌に昇華してしまってます。アレンジは原曲に忠実ですが、何といっても繊細なジャクソンの声にこの曲はピッタリ。フィドルはデヴィッド・リンドレー。器用な人ですね。最初はアコギとフィドルのみの演奏(しかもホテルの部屋での収録)ですが、終盤からはライブのバンド演奏に展開。こういうアレンジもいいですね。

前述のヴァレリーが共作に加わった⑦「Love Needs A Heart」。
こちらはやっぱりヴァレリーのバージョンの方が好みかな。でも素晴らしい楽曲。
「Love Needs A Heart」…、彼は何を思ってこの曲を歌っていたのだろう。自分への戒めなのか。この時のバンド(ザ・セクション+デヴィッド・リンドレー)、いい演奏ですね。コーラス隊もいいし。最後に歓声が入り、ようやくライヴ演奏であったことに気付かされます。

そして必殺の(笑)⑨「The Road-Out」~⑩「Stay」、ちゃんと映像がありました~。昔はこのアルバム、ポップなオールディーズなカバーソングの「Stay」ばかり聴いてましたが、最近は「The Road-Out」の詞にジャクソン・ブラウンの真面目な性格が表れているなあと感じ、むしろこちらを好んで聴いております。ツアーを支えているロードクルーや観客への感謝の気持ち、そしてツアーへの想いが綴られております。

そして最後には
♪ People, stay just a little bit longer
We wanna play just a little bit longer
Now the promoter don't mind ♪ と歌われます。

やっぱり彼は観客の前で歌うのが大好きなんですよね。この後に色々なことを全部忘れて…とも歌われてます。
ちなみに共作者のブライアン・ガロファロはウエストコーストロック界では有名なセッション・ベーシストで、1968年にラス・カンケルとバンドを結成していた方。後にジャクソン・ブラウンやジョー・ウォルシュのツアーメンバーになったりしてます。

素敵なライヴアルバム、そしてジャクソン・ブラウンが悲しみを振り払うようにツアーに臨んでいた姿勢が表れた渾身の一枚。たまに聴き返したいアルバムです。

最後に素敵な映像を発見しました。二人ともいまだに現役。勇気を貰えます。人生気楽にいこう…。


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